アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

ダライ・ラマの託宣僧ネーチュン―3

2024-10-11 03:53:25 | 浅い霊感から神人合一まで

◎ネーチュンという未来予知システムの功罪と限界

 

『やがて彼は助手に助けられ、わたしの前に設けられた小さなスツールに坐り、トランス状態に入ってゆく。一回目の祈りが終り、二回目が始まるにつれ彼の恍惚は深まる。この時点で巨大な冠が乗せられる。冠の重さは約一四キロだが、かつては三六キロ以上もあったのだ。

 

さて、“クテン"の顔が変ってくる。荒々しい顔付きになり、やがて目が飛び出し頬が膨らみ、ぷーっ、ぷーっと荒い息を吐きはじめるとまったく違った形相を帯びてくる。息が短くなり、しゅっ、しゅっと激しい音を発しだす。と、一瞬彼の呼吸が止まる。この時点でもし本当に真実何かが起こらなければそのまま窒息してしまうにちがいないと思われるほど、冠が物凄くきつく締め直される。憑依は今まさに完成し、彼の肉体的限界が明らかに乗り超えられてゆくのがわかる。

 

彼は突如〝跳ね上がり、助手が差し出す儀式用佩刀をがっしりと握り、ゆっくりと威厳をもって、だがどこか威嚇的足取りで踊りはじめる。そしてわたしの前に来、全身伏拝し、巨大な冠が床に着くまで深々とお辞儀したかと思うや、一四キロを越す冠、三〇キロ以上の全装身具の重量もものかは、ぱっと飛び退る。あたかも体がゴムでできており、強力なぜんまいバネで動いているかのような柔らかで軽々とした動作をする。”クテン“の、あのひ弱な体内のどこにこんな爆発的神霊エネルギーが潜んでいるのだろうか。

 

それからネチュンとわたしの交感が始まり、ネチュンは儀礼的供物をわたしに捧げる。ついでわたしの質問があり、彼が答え、それが終るとスツールに戻り、閣僚たちの質問に耳を傾ける。それに答える前、彼は剣を頭上に振りかざし、ふたたび踊りはじめる。その姿は堂々とし、古の恐るべきティベット武将を彷彿させる。

ドルジェ・ダクデンが語り終えるやいなやクテンは最後の供物を捧げ、みるみる崩れ落ち硬直した生命なき姿を象り、憑依の去ったことを告げる。と同時に助手が大急ぎで駆け寄り、固く結びつけられている冠のひもを解き、儀式が続行しているかたわら、彼を蘇生させるため別室に運び去る。

 

そういうと驚くだろうが、お告げ師の答えが曖昧なことはめったにない。ラサ脱出の場合でもそうだが、彼は非常に明快であった。』

(ダライ・ラマ自伝/ダライ・ラマ/文芸春秋p262-263から引用)

 

この段は、トランスに入ると重い装束・冠をつけていても踊れるということに眼目があるわけではない。

 

天下国家について神託を受ける場合は、よりましの身魂が極めて清浄であることを要する。出口王仁三郎に言わせれば、ほとんど神様のような水晶身魂のような霊魂を有する人に大神(主神)が憑依してきて、天下国家の一大事を警告するものであるという。

※『大神の憑依さるる場合は天下国家の一大事を人界に警告さるる場合に、有徳の人、殆んど神様のやうな水晶の如うな霊魂を有する神人に依りて、神憑の手続を採らるるのである。』(大本史料集成2第1部明治・大正期の運動-第1章 出口王仁三郎関係文書 随筆『神霊界』大正8年8月1日号掲載から引用)

 

チベットへの中国侵攻とチベット密教の伽藍、信者、信仰の破壊は、ネーチュンに予告されていたが、結局避けることはできなかった。

平和、平和と言っているうちに亡国となったチベット。日本は他山の石とすべきだが、国家全体が弛緩しきっているといわれても仕方のないところがある。

日本は、まともなネガティブ予言は秘してあまり広めないところがある。なぜなら、当たるネガティブ予言が公表されれば、国民はやる気を失ったり、パニックになったり、一儲けしようと思ったり、外国に逃げようと思ったり、あまりためにならない結果が見えているからである。

 

また気がついてからは遅いということもある。

 

チベットはネーチュンという立派な未来予知システムを持っていたが、結局チベット高原を追われることになったという現実は重い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする