「私、バカだから」「そんなことないよ」という言葉を繰り返す会話に、
だんだんと私は疲れてしまい、
「私、バカだから」を聞かなかったことにして会話を続けるようになった。
すると、彼女は手法を変えてきた。
私を褒めだしたのだ。
人情として、褒められれば仕方なくとも褒め返さざるを得ない。
そのことも、更に私を不愉快にさせた。
うんざりして、褒められても褒め返さなくなった私に、しばらくして彼女は言った。
「珊瑚さんって他人を褒めない人ね」
「あらそう、褒める理由があれば褒めるけど」
そう答えて、私は彼女の顔も見たくなくなった。
ご主人のモラハラに傷つけられていることには同情しつつも、お付き合いは苦痛だ。
今日は用事があるからとお茶を断るようになり、
パートを始めて、習い事も辞めたので、会うこともなくなった。
そういえば、彼女は、働いていた時も、たった二人しかいない女性従業員のもう一人に、
なぜかわからないが、避けられていた、と言っていたっけ。
そりゃ避けられるよと思う。
あの卑屈さにはとても付き合えない。
親切すぎるほど親切で良い人なのだけれど・・・
彼女がもしも違う男性と結婚していたら、どうだったんだろうと思う。
彼女たちの場合、夫のモラハラが彼女を卑屈にしたのか、
彼女の性格が夫のモラハラを誘ったのか、わからない。
でも、どちらにしても、依存していたのは夫のほうだ。
飲み友達の一人もいないなんて、普通じゃない。
友達ではなく、モラハラをする相手が必要なのだと思う。
あのご主人は、彼女がいなくなったら生きていけないだろう。
彼女にしても、そんな夫への愛憎が、心の中で微妙に絡み合っているようだ。
彼女は頭の良い人だったから、今は、夫がモラハラだと気づいていることだろう。
もう二人とも70代、どうしているのだろう。
高橋ジョージさんと三船美佳さんとのことで、思いだした。