20年位前、習い事でご一緒した人がいた。
当時50歳くらいで、いつも笑顔の親切な人だった。
すぐに仲良くなって、習い事の後でお茶をするようになった。
同じ趣味ということで、話題には困らない。
会話は弾んで、楽しかった。
でも、話の途中で、「私、バカだから」とか「私、常識ないから」というフレーズが
頻繁に入ることに気がついた。
「ええ、そんなことないでしょ、〇〇もできるし、××もできるし、スゴイと思うよ」
そのたび、彼女の素晴らしい点を挙げて、励ましていた。
彼女は、その数年前までフルタイムで働いていたそうで、
その時のことを聞くと、上司に信頼され、同僚にも頼りにされていた様子だ。
実務に強い人だというのは、私にもわかった。
それなのに、何故そんな言葉が出るのか、不思議だった。
たまには誰でも言うことかもしれないが、頻繁すぎる。
そのうち、どうやらご主人に、その原因があるらしいということがわかってきた。
お前は無知で、常識を知らない、自分が結婚してやらなかったら、誰にも相手にされなかったetc
そういう言葉を、ことある毎に繰り返していたのだ。
そして、気に入らないことがあれば、人前でも大声で怒鳴る。
そんな日常が、彼女を卑屈にしていた。
そのご主人は、忘年会や新年会を除けば、結婚してただの一度も同僚と飲んで帰るということがなく、
毎日午後6時前には帰宅して、夕飯を作り、家族に食べさせる。
短大へ行っていた娘の部屋の掃除までしていた。
それを聞いて唖然とした私、娘さんは嫌がらないのか聞いてみると、
習慣になってしまっていて、今更嫌だと言えないのだそうだ。
世間的にみれば、ギャンブルも浮気もしない、常に家族第一で真っ直ぐに帰宅、夕食まで作る。
まさに、家庭一筋。
何の文句があろうか、ということになる。
ましてや、モラハラなんていう言葉すらない時代。
彼女は、毎日ご主人に傷つけられるプライドを、外で他人に褒められることで、必死に修復していたのだ。
だから、褒め言葉を誘うフレーズを頻繁に発する。
そして、彼女の褒めて貰いたい欲求には限りがない。
褒めて褒めて症候群と言ってもいいかも知れない。
つづく
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