今いる町は、ボストンを国道90(マサチューセッツ・ターンパイク、略称マス・パイク)
で30分ほど西に向かって行った、フラミンガムというところです。
例年ボストンは6月がベストシーズンと言われ、あまり雨も降らず、
暑くも寒くもない日が続きますが、何年に一回かは日本の梅雨のように雨の日が続きます。
今年は朝の間蒸し暑い曇天で、ときどきシャワーを降らせて夕方には晴れる
気まぐれなお天気が続きました。
しかし、例年独立記念日の日は今まで一度も不思議なくらい雨が降ったことがありません。
TOは東部の大学に留学していたのですが、卒業式の日、開校以来一度も卒業式に
降ったことがなかった雨が朝から降り続き、卒業生が集まると「あれは酷い卒業式だった」
と話のタネになるくらいの大雨の荒天となってしまいました。
卒業生のかぶる四角い学帽は雨を吸って四方が垂れ下がり、ガウンは鉛のように重くなり、
おかげで卒業式の後写真を撮りに行く計画も中止です。
学生の家族は、この日のために全米どころか世界中から集結してきているのに、
雨を避けて学内の校舎に避難し、何が起こっているかわからないまま無為な時間を潰しました。
何百年も降らなかったのになぜその一回が我々の年なのか、
と当事者たちは案外あとから笑い話にしていますが。
さて、今年、日本は記録的な暑い夏に突入しているようですね。
皆さまお元気にお過ごしでしょうか。
ここボストンもヒートウェイブで、7月になるなり日中は陽射しが照り付け、
昼間外を歩くのは自殺行為というくらいの暑さです。
ただ、蒸し暑くなると必ず雨が降り、多少は湿度が下がるので、
特に夜などは涼しく、その点マシと言えばマシです。
ボストンに着いて二週間が経過。
すでに予定の半分が過ぎました。
今日はこのあたりの街とここで見たものをご紹介します。
息子の学校の向かいにある図書館。
なんだかやたらと風格があります。
と思ったら、なんと1852年(息子の学校は1866年創立)設立でした。
もちろん、この建物も、です。
1852年ったらあなた、ペリーの黒船来航の年ですからね。
嘉永5年に作られた建物を展示以外で利用している例が、日本にあります?
この裏手に、去年写真を挙げた独立戦争戦士の碑と、墓所があります。
広い道に広い空。
買い物によく行くウェルズリーという町の商店街です。
町の中心にある立派な教会。
この前には古い墓石だけがあるグレイブヤードがあり、
独立戦争の戦死者の墓石には7月4日になると国旗が立てられます。
全米でも有名な超難関女子大学、ウェルズリー大学の正門。
ラドクリフ、ヴァッサー、スミス、バーナード、ブリン・モア、マウント・ホリヨーク。
これらと並ぶ「セブン・シスターズ」の一員です。
気のせいか、このあたりを歩いているお嬢さん方はタンクトップにショートパンツという
女子大生定番のラフなスタイルにもかかわらず、知的な雰囲気を持っています。
ヒラリークリントン、マデレーン・オルブライト(元国務長官)、ついでにあの宋美齢という、
錚々たる卒業生を輩出しており、学生のほとんどが5位以内の成績で高校を卒業しているとか。
成績と言えば、公文(笑)。
公文式学習が日本発祥であることを知らない人は多いです。
KUMONというロゴの下には、
Math. Reading. Success.
と書かれています。
公文学習をするのはアメリカでも東洋系、特に中国系の子供が多いとか。
しかしこのあたりはボストンのシリコンバレーというべき地域なので、
一度こことは別の公文教室を覗いてみたら、インド人も多数でした。
ここにはこのような企業本社もあります。
エリス中尉のメインお買いものスポット、ニューベリーストリート。
大昔はすべて民家だったのだろうと思うのですが、今では通りに面した一階、
そして正面から上がっていける二階まではすべて店舗が入っています。
ただし、一階といってもすべてのお店が「半地下」にあるのが特徴。
二階は階段を数段上がったところにある「半一階」です。
前面は所有者のセンスでこのように緑をアレンジして往く人の目を楽しませてくれます。
ここは「ヘンプ」(麻の原材料)というオーガニック系のクロスの店なので、
特にこのような自然っぽい演出をしていると思われます。
眼鏡屋さん。
三階から上は正面から入ることはできず、裏にある居住区入口から入ります。
この辺に住むのはボストニアンのちょっとしたステイタスで、たとえビルが
100年前のもので排水管はしょっちゅう詰まり、猫の大きさのネズミが大きな顔をしていても
この街並みを壊すことになる改築は絶対にしようとしません。
ボストン弁護士事務所で働く若い女性が主人公だった「アリー・マクビール」(アリー・マイラブ)
では、最後にアリーがこのニューベリーストリートのアパートメントを購入し、
同僚弁護士が皆で手伝ってペンキを塗るシーンがありました。
というわけで、週末ならずともいつも人でにぎわっているこの周辺、
車で来ると駐車スペースを見つけるのが大変です。
スペースを見つけ空いている!と思って止め、チケットを買ったのに、
そこが「商業車用スペース」「この辺の居住者専用スペース」だったりすると
あっという間に警察が来てチケットを貼っていきます。
このスバルは、どうもパーキングチケットすら貼っていなかったので切符を切られたようでした。
わたしはこのあたりに来るときは最初から民間のパーキングに入れてしまいます。
昔、商業車スペースと知らず停めて、やられたことがあるからです。
歩いていると、すずめがいたので「すずめ食堂ボストン支店」。
餌やってませんが。
こうして見ると、比較的きれいだと言われるこの通りも、吸い殻のポイ捨てが酷い。
銀座などに行くと、世界の人が清潔なのに驚愕すると言いますが、
アメリカでこれなのだからそれも当然かもしれませんね。
で、ボストンのすずめさんなのですが、
びっくり。頭が・・・・・・・・・グレーです。
すずめには違いないんですが、見慣れた日本のすずめとはずいぶん違いますね。
彼らは動きが素早いので、わたしも写真を撮ってみて初めて
こちらのすずめがこんな羽色をしていることを知りました。
調べたところ、もともとアメリカ大陸にスズメはいなかったのですが、
ニューヨークにイギリスから害虫駆除の目的で持ち込まれたスズメの子孫で、
「イエスズメ」(House Sparrow)という種類なのだそうです。
喉に黒い模様があり、色がはっきりしているのでこれはオス。
このスズメさん、いまは全米展開しているのですが、どうやって広がったかというと、
穀物を運ぶ汽車に便乗していったのだそうですよ。
自力で飛ぶより、そちらの方が楽ですよね。
都会では人間の出したごみで生きているため、feathered mouse(羽ねずみ)とか
Hamburger sparrow(ハンバーガースズメ)などと不名誉な名前も持っているそうです。
アメリカでは大抵の鳥を法律で保護していますが、このイエスズメだけが保護されていない
唯一の鳥なのだということです。
なんだか勝手に連れてきてそれはないんじゃないか?という気もしますが、それだけ
繁殖力が強く、ほっといても増えるっていうことなんでしょうね。
鳥が出ついでに、公園の水際でカニを取ろうとしていた鳥。
カラスみたいですが、大きさはせいぜいツグミくらいです。
くちばしも脚もこれだけ真っ黒なのだから、ブラックバードというのではないかと
検索してみたら、出てくるのはSR-71戦闘機の写真ばかり・・・・。
確かに似てますが、この愛嬌のある顔の鳥さん、なんだろう。
大きさはスズメと鳩の間くらいです。
そして、おなじみホプキントン州立公園のガチョウ艦隊。
立ち止まって写真を撮っていると、一羽が振り向き・・・
皆でガン見。
写真に撮るまでこんなに見られているとは気づきませんでした。
ついでに、公園の松林で見つけたキノコ。
松林にこうやって生えているんだから、これ、マツタケっていうのかしら。
ニューベリーストリートに戻ります。
古い建物が延々とつ続くこの通りの端が奥に見える建物。
昔バークリー音楽院の何かの部門が入っていたと思うのですが、
今は知りません。
息子の学校の近くの家。
いかにも「アメリカ!」って感じの家。
国旗掲揚台まであって、ポーチにはこれでもかと国旗風の飾りがありますが、
長年の観察によるとここの主人は単に「熱烈なパトリオット」らしい。
夕方になるとポーチのロッキングチェアで新聞を読んでいるおじさんが見えます。
日本の感覚で言うと豪邸ですが、このあたりでは「普通」です。
もっとも、ダウンタウン近くの街に行くともっと家が小さいですし。低所得層のアパートもあり、
ボストン郊外のこの地域は中流層以上が多く住んでいるのかとも思われます。
それにしても、このあたり(しかも広大な地域が)みんなこのレベルの家なので嫌になってしまいます。
アメリカはもうだめだとか経済がとかひとくくりにいうことがいかに馬鹿馬鹿しいか。
庶民の暮らしは豊かで、その中間層は決して貧弱ではないことを、ここにしばらくいるといやでも理解します。
やはり世界一の大国だと、こういう部分で納得せざるを得ません。
完全に入り口を木の枝が塞いでしまうほど放置された廃墟。
ドアは一番左の木のところにあるはずなんですが・・。
ボストンという町は、1852年の建物が現役であることからわかるように保守的で、
とくにここ郊外は変化が少なく、何年来ても廃墟や閉店した店舗が放置されていたりします。
10年間ずっと閉店したっきりのレストランが9号線沿いにあるのですが、今年もやはりそのままでした。
独立記念日と言えば、先日(というか一年前の記事ですが)、独立記念日と
序曲1812年の記事の最後に、「独立記念ケーキ」の写真を出しましたが、
「ここアメリカではこんなケーキが売られています」画像。
素材にこだわっています、
ということで「ケージフリー」すなわち放し飼いの鶏の卵を使っていますよ、と。
ただなあ・・・・いくら放し飼いの鶏の卵でもなんでも、
ケーキそのものにこれだけ色を使うのもどうなのよ、と。
しかもスイカ。
なぜケーキなのにスイカ。
夏だから?
まあ・・・・ほとんどがチョコレートの色だし、
てんとう「虫」がモチーフ、ということを除けば、不思議はないかな。
こちらには「ケーキ・ボス」という、連続ドキュメンタリーものがあって、
主人公はニューヨークかどこかのイタリア系のケーキ職人の家。
ピアノや自動車、ボーリングのピンとボール、草木は勿論銅像ならぬ「ケーキ像」。
「美味しいかどうかより、いかに受けるかだぜ!」
みたいなケーキを作っている職人一家の周辺を描くシリーズなのですが、
この番組、いつ見ても作っている肝心のケーキが全く美味しそうに見えないのが問題です。
こういう普通のお店のケーキを見てもわかるように、こちらの人は基本的に
味というものは「甘いか甘くないか」という判断しか無いようなので、
特にパーティなどでもこういう変わった形のケーキを択ぶ傾向にあります。
「ケーキ・ボス」も、味に全く言及はせず、ひたすらケーキという素材で森羅万象を
再現する、ということにのみ心血を注いでおります。
アメリカ人にとって、ケーキとはなんなのか。
こういったケーキを見ると、そんな疑問が湧いてくるのを抑えることができません。
比較的まともなケーキも少しはありますが、
まっ黄色のピースマークケーキなど、どこをどう見たら「美味しそう」に結びつくのか。
この写真を撮ったのは独立記念日の次の日だったので、まだケーキが残っていて、
赤と青のクリームというのは皆そのためにつくられたものです。
色もさることながら、どれもこれも日本人のセンスからはとても
プロの仕事とは言い難いものばかり。
しかし、ここはホールフーズ。
全米展開している「オーガニックスーパーマーケット」なのです。
そのホールフーズでこれなのですから、普通の、たとえばスターマーケットなんていう
ところのケーキになると、ショッキングピンクやグリーン、スカイブルーに写真の転写、
一層歯止めが利かなくなって、もうカオスといった状態になります。
そんな味音痴のアメリカ人に大人気のスシについて、
今年も突撃レポートをそのうちご報告しますので、お楽しみに。