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開設1000日記念漫画ギャラリー第四弾

2013-09-11 | つれづれなるままに


陸戦の「神様」中村虎彦




海軍陸戦隊で、陸軍が手をこまねいていた適地を攻略し、
あっぱれ陸戦の神様と称えられた海軍将校がいました。

日中戦争のおり、蒋介石軍に届く物資の流れを阻止するために
日本軍は南シナ海の要所を占領する作戦に出ました。

その陸戦に駆り出されたのが陸軍三個師団と海軍一個師団。
おそらく陸海軍間の、たぶん

陸「今回の作戦はフネ使わないんだから海軍からも陸戦隊出せ」
海「なにおーぅ」

みたいなやり取りののち、(たぶんですよ)
陸戦隊を出すことになった帝国海軍。
こんなときの常としてノーと言えない若い大尉に指揮が任されました。

これは漫画としてストーリーを勝手に弄ったものではなく全くの実話で、
中村大尉が
「(この命令を受ける代わりに)司令部の名刀を貸せ」
と条件を付けて背中にこの大刀を指揮刀代わりに背負っていたのが、
幸いしたと言えば幸いしたのでした。

馬鹿でかい真剣を目の前ですらりと抜かれた日には、
命令をよく聞かずに飛び出してしまっても仕方ないかもしれません。

「人の命令最後まで聞けよ!」

と可愛い部下の身を案じて後を追った中村大尉が振り向くと
残り全員必死の形相でついてきていたので、そのまま突撃し、
めでたく敵基地を攻略してしまったと。

中村大尉はこの大戦果を以て「神様」にまつりあげられたのだそうですが、
これだけなら神様とは少し違うんじゃないか?
部下の勘違いが一番の要因だし、と思ったあなた。
確かにわたしもそう思いました。

しかし、中村少佐(のち)は実はその人格を部下に慕われる名隊長でもあったのです。
なので、これらの人物評価も相まって「神様」といっても誰からも文句が出なかった、
というところではないかと解釈しています。




「海軍望楼vs.都留大佐」




都留大佐は海軍内のいわゆる名物男でした。
日露戦争のときこの人物、陸海軍が合同で当たった作戦中、
陸軍軍人に対してあまりにえらそうなので、陸軍さんたちは
この人物を偉いのかそうでないのか判じかねて「上官待遇」していたら、
式典のときに階級章を見たらなんと中尉。

「あんにゃろー!中尉の分際でエラそうにしよって」

陸軍の中尉以上の軍人さんたちは皆心の中で地団駄踏んだのですが、
実は都留中尉が中尉に昇進したのはその一週間前。

中尉ではなく、少尉だったんですねー。
もしそれを知っていたら陸軍さんたちの怒りは倍増したでしょう。


そんな都留大佐、海軍時代の逸話は数知れず。
今日に残っているだけでも結構ありますから、さぞ現役時代は
何かと言うと酒の肴にその武勇伝が語られたのに違いありません。

勿論ヘル談(ヘル=ヘルプ=助=助平、つまり猥談)にも事欠かないのですが、
そこは海軍、「面白い」のポイントがなかなか上品なものが多い。

この漫画に描いた逸話も、ただの会話なら面白くもおかしくもないのですが、
このやりとりを海軍の公務として通信手にやらせると言うあたりがウケたのでしょう。


ちなみに望楼とは、海峡などに設けられた「見張り所」です。



「オペラ格下指揮者事件」




たまたまこの頃観に行ったオペラの主演歌手が当日キャンセル、
しかも、代理の歌手が一幕で崩壊してしまった事件に立ち会い、
「こんな場合に訴える人っているのかしら」
と調べてみたところ、法律関係者の間では有名な
「オペラ格下指揮者事件」
という案件があることがわかりました。

代理でドタキャンした指揮者の代わりに振ったのが「格下」だったから、
というのがその訴因だった、という案件です。


少し説明すると、わたしが観に行ったこの日、主演が
娘の病気で講演をキャンセル。
ところが代打で登場した歌手は、
おそらくプレッシャーで崩壊ともいえるミスをやらかしてしまいました。

しかし(笑)

その歌手の間違いにほとんどのこの日のNHKホールの客は
気付いていなかったのでございます。

この聴衆の音楽レベルの悲しい現実を見たエリス中尉は、

「こういう場合はコンマスが指揮者の代理をするから、
もしそうと通告されなかったらたとえ前に掃除のおじさんを立たせても、
観客のほとんどはわからなかったのではないか」

と、「訴える人」をちょい皮肉ってみました。
ちなみに「格下識者事件」ですが、この裁判は原告敗訴となりました。

というか、よくこれ不起訴処分にならなかったなあ。




「取り締まられ」





たまたま二回立て続けに「取り締まられ」たので、
うっぷん晴らしに(←嘘)漫画にしてみました。

丁度この頃APECがあって、首都圏を他府県ナンバーの
パトカーが走り回っていました。

皆パトカーを見ると急にスピードを落とし、
追い越さないように左車線にはいったりしてやり過ごすのですが、
そのとき見たパトカーが沖縄県警だったので
安心して追い越しました。

追い越す瞬間、上のような妄想をしてしまったので
それをそのまま描きました。


「善行賞」




まだ海軍の階級にあまり詳しくなかった頃、
善行章について調べたことをそのまま書いております。

軍隊ってのは階級社会ですからね。

しかも、その階級も単純に年功序列だけでもない、
だからといって、「何年海軍の釜の飯食ってるか」
みたいなことが実はモノを言ったりする社会なわけですから、
そのヒエラルキーの中で兵隊さんたちはさぞかし
現実の厳しさみたいなものを思い知ったのではないでしょうか。

まあ、階級社会の厳しさを言うなら
戦前の軍隊に限ったことではありませんが。

この漫画は、特別善行賞(何か表彰の対象になることをした)
一本の下級兵、つまり目下に向かって、
しなくてもいい敬礼をしてしまったいかつい兵隊さんの
悔しさを表現してみました。

何がそんなに悔しいのか、と傍から見ると思いますけど、
軍人さんにとってはとても大事なことだったんですよ。たぶん。