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映画「機動部隊」~沖縄攻撃

2015-05-08 | 映画

映画「機動部隊」、4日目です。
ミッドウェー海戦で戦没した「ヨークタウン」に乗り組んでいた主人公スコット大佐のことを、
日本公開時のパンフレットでは「アメリカ空母発達史において最大の恩人とまで言われる」
と実在していたかのようにもっともらしく書いてあるわけですが、大嘘です。

たかが映画のパンフと思って甘く見たんだろうが、後世はこれを許してくれないのである。
「重爆の隅をつつく」が信条である当ブログも、当然この嘘を見逃さないのであった。

しかし、これを真に受ける人もいて、「米空母の最大の恩人」で検索をかけたところ、
このパンフの文句が、
ある戦争映画専門サイトで一字一句違えず継承されていました。orz



さて、ミッドウェー海戦後生きて帰ってきて、大佐に昇進したスコット。
ワシントン勤務を命ぜられ、またしても妻とのお別れです。

「大佐の妻という立場に慣れるまで一緒に居てよ」

やっぱり旦那の昇進というのは、妻にとって自分のことのように嬉しいものなのです。
というかそれは実質”自分のこと”なんですね。ええ。
飛行機事故で亡くなっていた前夫では、こうはいかなかったかも・・・おっと。

 

こちら「エンタープライズ」でしばらく生存不明となっていたマック。
嫁とよく分からない諍い(翻訳も下手だけど英語でもよくわからなかった)を起こしております。
まあ、それもこれも生きて帰ってきたからこそ。よかったですね。(適当)



大佐になったスコットがワシントンに行くのは、今回の海戦を踏まえて
さらに空母の数を増やしてくれるように上にお願いするためでした。
若い頃はその「イケ面」が評価されて折衝役に選ばれたスコットですが、
ミッドウェーを経験した今は現場を知る軍人として、貴重な存在です。



またまた出たよこのおっさんが。
戦争など起こらない!だから空母など買えない、と力説していた新聞王兼上院議員。

「レキシントン、沈没。ワスプ、沈没。ヨークタウン、沈没、ホーネット、沈没。
サラトガも大打撃を受け、エンタープライズは浮いているのもやっとの状態」

と我が日本海軍の戦果を褒めてくださっています。
空母は脆く非効率的でお金がかかるから作るだけ無駄だ、といいたいわけですが、



それを逆手にとってリーブ提督が反撃。

「我が軍の空母を壊滅させたのは日本軍の空母なんですが」

しかしおっさん負けずにリーブ提督と論戦を始めます。

「それは空母の扱い方も日本軍がスマートだったってことですな」

「我々は敵空母を4隻沈め、打撃を与えています。我々の損害は1隻」

「日本軍も同じ教訓を得たでしょうよ。空母は無用の長物だと」

いやいやいやいや(笑)
日本はお金さえあれば空母をもっと作りたかったと思いますよ?
民間船を空母に転用したり、涙ぐましいリサイクルをしていたし。

尤もその日本軍も、空母よりは「大和」「武蔵」など戦艦のほうに国力を傾けすぎ、
しかも「割に合わない」使い方(とくに大和)で失った・・というのは結果論ですが。




ここは字幕が「日本人の方が頭が柔らかいですね」なのですが翻訳の大間違いで(笑)
英語をちゃんと聞けば、

「もしあなたの言う通りにしていたら、今頃西海岸の新聞は日本語になっていたでしょうよ」

と言っています。
聞き取れなかったのかよ~翻訳の人(´・ω・`)



「空母では勝てない」というおっさんの持論を二人が覆そうと奮闘しているのを
黙って聞いている海軍作戦部長。
アメリカのウィキでは「エイムズ提督」となっていて架空の人物ですが、

エイムズというと、確かスプルーアンス提督のミドルネームじゃなかったっけ。

いずれにせよ容貌が立派すぎて、スプルーアンスにもニミッツにも見えません。
この人はエドワード・ウォルター・エバリー提督がモデルであるということですが、
それが、この映画の英語版wikiも間違っていて、誰と勘違いしたのか

「映画のエバリー提督には髭がないが実際のエバリーには髭がある」

なんて書いてあるんですよ(呆)
映画のエバリーも、名は体を表して偉そうな髭生やしてるっつの。

とにかくこのおひげのCNOが、 

「日本との戦いを有利に進めるには空母が必要だ」

と海軍軍人側から鶴の一声、駄目押しの意見を出して会議終了。



大統領の認可により海軍の要求は通り、スコット大佐は

「戦艦と空母の機能を併せ持つ美しい空母」

の艦長となりました。

米海軍でも空母を中心とした艦隊が主流となっていたということで、
「ラングレー」以来頑張ってきた甲斐があった!俺もとうとうここまで来たか?
としみじみモードのスコット。
ということで、これは見ればその通り

あの「フランクリン」 (USS Franklin, CV/CVA/CVS-13, AVT-8)です。

ですが、モノローグでは「クリッパー」だと言っています。
実在の艦名を使わなかった理由は、実在の「フランクリン」艦長への配慮でしょうか。

 


ところで皆さん、ここで大変重要なことに気づきませんか。
そう、いきなり映像がカラーになったのです。
白黒で始まった映画が急にカラーになるのは、ワーナーブラザーズが海軍から借り受けた
戦闘シーンのアーカイブがここからはカラーになるからなのです。



というわけでいきなり人物のシーンもカラー。
初期のテクニカラーなので、白黒映像より画質が悪い気がします。
さて、場面は「フランクリン」艦上で行われている作戦会議。

「沖縄を手中に収めよう」

そしてイギリス軍の協力のもと空母16隻を現地に集結させ、
600機の飛行機でそこから本土を攻撃する、というのですが、

「敵は7000機を所有している。劣勢を挽回するには奇跡を祈るしかない」

まあ敵本土に侵攻しようというのですから、これくらいの覚悟だったとは思いますが、
なんか必要以上にアメリカが不利だったと強調しすぎているような・・・。

これも「しかしそれにもかかわらず勝った」という物語のための
スイカに塩的な?加味というものだったのか、それとも本当にアメリカ軍は
これくらいの悲壮さをもって戦っていたのか・・・。

いずれにしてもこのときリーブス提督は、

「最も恐ろしいのは敵の捨て身の攻撃、”カマカゼ”だ」

とつぶやくのでした。なにがカマカゼだ。

この時点で、米側が特攻を「カミカゼ」という名称で認識していたという史実はありません。
この名称がアメリカ側に認知されたのは戦後ではないかという気もします。



という会議の途中にも轟音が響き、デッキに出てみると
警戒網をくぐってやってきた日本機の爆弾で炎上する僚艦の姿が!

「グレイト。東京はこのニュースで喜ぶだろうな」

 

沖縄上陸作戦は4月1日、エイプリルフールの日に決まりました。

 

沖縄攻撃のフィルム。
二本柱を描いて対地砲が打ち上げられる瞬間が映っています。

 

星条旗の揚がったマストの後ろに飛び交う砲弾の雨。(見えませんが)

 

戦艦と護衛の駆逐艦で埋め尽くされた海面には、隙間もないほどです。
沖縄の海岸がそのときどんな状態になっていたかが、右の映像でも伺えます。
海兵隊を乗せたボートが、頻繁に岸に漕ぎ付いている様子が残されています。

これ以降沖縄は「死の島」と化したのでした。




続く。