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ヘロキャスティング〜日向灘・掃海隊訓練

2015-12-18 | 自衛隊

機雷掃討のための自走式S-10-1通称「えのしまくん」の機雷掃討訓練が終わりました。
メディアツアーに公開する2つの訓練のうち一つを消化したのです。



左下の二つの旗旒は

私(本船)は演習中である。私(本船)を避けられたい。

という意味なのですが、訓練が終わった今も下げられてはいません。
自衛艦旗の下の司令官旗は、隊司令旗ですが、第41掃海隊の隊司令が
3等海佐であるため、上下に赤の縁取りがあり、切れ込みの入った形の
「隊司令旗 乙」が掲揚されています。

隊司令旗乙は、2等海佐以下の隊司令に対して掲揚されます。



次は「えのしま」から見学するヘロキャスティングです。
・・・・が、まずは訓練が行われる海面に移動。

いずれの航行においても、海面の見張りは途切れることなく行われます。
 


こちらも双眼鏡で見張りを「厳となせ」しています。
訓練が海面で並行して行われ、さらに一般人を乗せているので余計ですかね。



行動海面の水平線にこちらを向いて見えているのは掃海隊の艦船。
参加艦艇は全部で23隻です。



そのとき、海面でホバリングしていたヘリが移動を始めました。



洋上に停泊している掃海母艦「うらが」に高度を落としながら接近中。



飛行甲板への着艦をただいまから行います。



「うらが」の乗員は、甲板にはおらず、皆舷側に避退?しており、
格納庫に黄色と黒の斜めダイヤ柄シャツを着てヘルメットをかぶった
管制員が、両手に赤と緑の旗を持って管制の合図を送っています。



ローターの巻き起こすダウンウォッシュ(垂直方向への推力で発生する下向き気流)
で、空気が歪んで見えます。




上の写真と比べて、「うらが」の甲板が向こう側に傾いているのがお分かりでしょうか。
うねりの大きな波のせいで、甲板はグラグラと波打っているのです。

これはいかなる状況下でも着艦を行うための、ヘリパイロットの訓練でもあるのです。

先日、空自の新米女性救難ヘリパイロットを描いた、「空へー救いの翼」を見ました。
正パイロットが目を怪我をしたので、副操縦士である彼女が、
緊急に護衛艦「はるさめ」のヘリ甲板に初めての着艦を行うのがクライマックスシーン。
揺れる甲板に思わず怯む彼女に向かって、艦長の中村雅俊(!)が、

「どんなに海が荒れていても必ず船が止まる瞬間がある。焦らないことです」

とアドバイスをしていましたが、そうなんですか?



見事着艦成功。



「うらが」全体図。この状態で細部を見てみると・・。



待機していた隊員が両舷の舷側沿いに数人ずつヘリに向かっていきます。



艦首側を仔細に見れば、「うらが」が投錨しているのも分かりますね。



ヘリの車輪に甲板から出てくる降着装置を設置する係がすぐさま作業を行います。



そのとき近くの海面にふと目を転じると・・・・・
水中処分員が4人乗り込んだディンギーがぷかぷかしています。
彼らの脇に機雷のようなものが浮いていますが、これはもちろん
本物ではなく、ダミーかラペリングの「目標」ではないかと思われます。



おおっ!いつの間にかヘリに今から訓練を行うEODが乗り込んでいる。



全員ヘルメット着用、一番後ろ以外はウェットスーツ着用です。


この写真を撮る時、波のせいで足場がグラグラ、被写体の向こうもグラグラ。
望遠レンズで対象を拡大すると、すぐにフレームから外れるので撮影は結構苦労しました。 




水中処分員を乗せたヘリが「うらが」を離艦します。
着艦よりは簡単なのではないかと思いますがどうでしょう。



処分員たちを乗せたヘリは、訓練の行われる海面に移動。



と、 EODを乗せたディンギーが急に移動を始めました。
あれ?さっきまで横に浮いていた機雷みたいなのがなくなっているけど、
どこかに設置をもうすませたのかな?




ヘリは移動して「えのしま」からは右舷前方に占位しています。
ちなみにこのときのシャッタースピードは250分の1。
ローターの動きを出すために、しかし機体がぶれないようにギリギリの妥協点です。
しかもこの日は乗っているフネが上に下にとヨーイングしていたため、
船を撮るよりこちらの方が大変でした。



どうもこの海面に降下する模様。
ヘリの行き脚がとまりました。



そのまま高度を下げていきます。
水中処分員が降下するために最低の高度を保持している模様。



ヘリから降下用のロープが海面まで投下されました。



まず一人目がラペリングしてきます。
(降下をよくリペリングといいますが、rappellingなのでこちらが正しいかと)
 あとで司令に聞いたところによると、本日降下訓練を行うEODで、
今日が初めての海中への降下、という隊員はいないとのことでした。

しかし、海中に潜って行くときには、いかに訓練しているベテランでも
緊張するものではないかと思われます。




ロープを伝って降りたEODが海面に達しました。

陸自の地面への降下よりは海面に降りるほうが物理的ショックはないとおもいますし、
万が一手を離すことがあっても、地面に叩きつけられるのと海面では全く違います。
しかし、黒々とした深い海に生身でそのまま入っていくという恐怖がこちらにはあります。

ヘリのローターの巻き起こすダウンウォッシュのしぶきで、
視界も著しく悪くなりますし。



一人が降下したあと、間をおかずにもう一人が降りていきます。



ここでブリーフィングのヘロキャスティングの図をもう一度。
降下したEODが機雷に爆薬を仕掛けます。



爆薬を仕掛けたあと水中処分員を揚収。



爆破。というわけですが、実に原始的です。
処分用の爆雷はC4爆薬を使います。




そして二人目の水中処分員が海中に入ります。
二人で処分を行う理由は、一人が点火ケーブルをセットし、
もう一人が信管をはずすということだったような気がします。

万が一、一人目に何か事故が起こったときのためでもあるでしょう。




二人のEODを降ろしたあとロープは一旦引き上げられます。



しばらく上空で待機したあと・・、



またしても高度を下げます。
ダウンウォッシュの霧の向こうにEODのディンギーが見えます。



海中から一人目のEODが引き上げられました。



ラペリング降下は自力で行いますが、揚収は体に索を固定して引っ張り上げてもらいます。



EODの装着している足ひれの形がよく分かります。二股なんですね。



水中処分員による爆破処理も、実際の爆破は硫黄島訓練でしか行われません。

EODが手作業で行う処理方法には、機雷本体を爆発させるやり方と、
信管を無効化して機雷を確保するやり方がありますが、

どちらにしても生身の人間が行うため、危険と隣り合わせです。

ヘロキャスの他に、ディンギーから海中に入り爆破処理を行う訓練があります、
この場合、作業が終わっても、 EODがディンギーに乗り込み、
完全に安全距離を確保したあとでないと、処分爆薬の点火は行われません。




足の生えたMHー53E(笑)

このMH-53Eは、三菱重工の製作した掃海専門のヘリコプターで、
国内では最大の大きさを誇るヘリで輸送にも使われるくらいで、
3つあるエンジンのパワーにより複合掃海具などの小艦艇を曳航することが可能です。

近い将来これらは引退してCH-101に置き換わっていくということですが、こちらが実は、
現場からあまり評価されていない(つまり駄目出しされている)という噂もあります。


イタリアとイギリスの会社が共同開発、というだけで、素人考えでも

なんとなく大丈夫かなあとイメージから思ってしまうわけですが、
こういう先入観って、案外どの分野でも当たっていたりするからなあ・・・。

実際のところは知りません。



続く。