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稼働中の8インチ砲〜重巡洋艦「セーラム」

2017-07-23 | 軍艦

アメリカ東海岸はマサチューセッツのクィンシーに繋留展示されている
戦艦「マサチューセッツ」についてお話ししています。

艦内見学を終わって出て来ました。
連装砲としてマウントされているMk.12 38口径127mm砲です。

別の連装砲正面から。
38口径の砲は、スペックによると12門あるということなので、
マウントは6基あることになります。

展示している軍艦をチェックするには、グーグルマップが便利。
上空からの写真でどこに何があるか、甲板の上は全てわかります。

それによると、艦橋を守るように前後、右舷左舷に1基ずつ4基。
そして、艦橋の前後にある主砲を守るようにどちらも主砲塔の真後ろに1基ずつです。

「セーラム」設計の時にはまだ日本との戦争が終わっておらず、
その時のアメリカ海軍艦船の脅威というのは実は日本の特効だったので、
対空砲としてこのような設置を行なったということが、空から見るとわかります。

キャプスタンには直径10センチはありそうな舫が巻き取られています。

見学客は数える程いませんでしたが、ここには「昔海軍だったぜ!」
みたいなおじいちゃん(左)とその友人、みたいな二人とすれ違いました。

今年で第二次世界大戦が終わって72年。

アメリカでも日本との戦争を戦った人たちは時の流れとともにいなくなり、
まだ生きているとしても、終戦時には若い水兵だったり、士官でもせいぜい少尉。

司令官として戦争体験をした人たちは全てこの世を去りました。

彼らがベテランだとしても、それは朝鮮戦争かベトナム戦争のことでしょう。

後甲板にある三連装手法も、砲塔の中に入ることができます。
前甲板の主砲は、甲板より何段か階段を上がったところにありましたが、
こちらは甲板に直付けしてあります。

そのせいか、前甲板のように見学用のデッキではなく、直接登って行って入る
階段が設置されていました。

砲員たちは砲塔にかけられたラッタルを登っていました。

ハッチ状のドアは砲塔稼働中はぴったりと閉ざされました。

中に入ってみます。
二つのドアからしか光が入らないのに、明るいのが不思議です。

砲塔の中は二階構造になっていて、入ったらそこは1階の「トレイン」を上からみる
デッキかバルコニーのようになっています。

8インチ砲の最初の型式、Mk9が導入されたのは1925年のことです。
「ルイビル」 CA-28には、当初型の30キロはあろうかというものが積まれました。
「ルイビル」はリンガエン沖で2機、沖縄でなんと4機(陸軍の飛燕)の特攻を受け、
ズタズタになりながらも生き残った船です。
さぞかしその対空砲はその度に激しく火を吹いたのでしょう。

その後開発されたMK12、14、15まで全て手動式で、このMk16になって
初めて完全自動式の装填設備を備えることとなりました。

完全自動、ということは、砲員はローディングしなくてもいいので、
この上のデッキから操作をしていたのかもしれません。

 

三連装なので、「デモイン」「ボルチモア」「オレゴンシティ」クラスの砲は

「スリー・ガン・タレット」あるいは「トリプル・タレット」

と呼ばれていました。

 トレインには、まさに砲弾が一つ装填されようとしているところです。
砲弾を支えているようにアームが置かれ、後ろから押して装填するための、
ところてんの「突き棒」みたいなのが見えています。

今まで同じ大きさの砲弾を人間が実際に抱えて装填していたことを考えると、
自動的に装填し、砲撃に集中できるこのシステムは、神の恵みに思われたでしょう。

8インチ砲は1分間に10発、6秒に一回射撃することができました。
「スリーガンズ」ですので、砲塔単位でいうと1分間に30発撃てるということになります。

 三つあるトレインの一番左側。
砲弾を装填するアームのスリットからは砲弾が見えています。

後に挙げた「セーラム」の動画では、砲塔に入るところから、
入るなり全員がヘッドフォンをつけて準備するところ、
ローディングのために、一つづつスイッチをつけていくところなどがみられます。

それによると、この写真では砲塔下部から送られてきた砲弾が、筒状のこのアームに
送り込まれた後、アームは右から左に逆振り子のように振れて、
トレインに弾薬を置くと、元に戻り、次の弾薬を受け取る仕組みです。

とにかく、このビデオの5:00〜からみていただければよくわかります。
ピタゴラスイッチみたいで思わず食いついちゃったよ。

USS Salem Rapid Fire Guns Video

なお、動画によると、最初になんだろうと思っていたこれ、

この物体は『砲塔の中からでも外の様子がわかるオートマチックディレクター』と動画中で説明してますね。

最初の日にこれがなんであるかコメントですぐに教えていただけました。
持つべきものは博識の読者だと改めて感謝している次第です。

これはサイレンかなんかでしょうか。

砲塔に入る人は全員ヘッドフォンをつけていて、

司令室からや下の弾薬庫からの連絡はそれで聞き取っていたようです。

 ドアの上にターレット・スプリンクリング(散布)システムのガイドがあります。
始動のさせ方と止め方、「空気供給のボタンを押すこと」などとあります。

テーブルの四隅にはストッパー付き。
カウベルみたいなのが乗っていましたが、何かわかりませんでした。
理科の実験に使った「分銅」という感じの形です。 

 

さっき見たのとは別のところに時鐘があります。
赤いパイプということは消火設備でしょうか。

赤いパイプの先はドアの上まで来ていました。

外に降りるラッタルの横に、「セーラム」維持のための寄付をするポストがありました。

左のポストは、消防設備関係の点検や見回りで訪れる署員の連絡用だと思われます。

ラッタルを渡りきったところにある機雷も、その気になれば手でさわれます。
「セーラム」が積んでいたというわけではないので、なぜここにあるのかわかりませんが。

ラッタルを降りたところに小屋がありました。
入るときには誰もいなかったので、そのまま通り過ぎましたが、
このときに見ると、夫婦のような男女が二人、中にいました。

「入るときに誰もいなかったので・・・」

と声をかけてみると、そのときに初めて入館料を徴収する始末。
払わずに見るだけ見てそのまま帰ってしまった人も結構いたと思うがどうか。

鷹揚なのかいい加減なのかわかりませんが、決して資金が潤沢でもないのは
艦体のそこここが荒れて劣化しているのを見ても明らかなのに、
もう少しせっせと
お金を取ることを考えたほうがいいんじゃないかなと思いました。

上に挙げたユーチューブでは、火を噴く砲塔や艦体など、
できたばかりで最新式の自動装填を誇る「セーラム」はピカピカの新品です。

その68年後の姿をしみじみと眺め、艦に入ったときにふと浮かんだ、

「つは者共が 夢の跡」

という言葉をいま改めて噛みしめるのでした。

 


あと少し、館内展示のお話を続けます。