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映画「地球防衛軍」〜ミステリアン登場!

2019-09-10 | 映画

いつかは取り上げようと思っていた日本の戦後SF作品、
「地球防衛軍」です。

前回そのつもりで鑑賞したところ、パッケージに同梱されていた
「海底軍艦」に本作以上のショックを受け(笑)、どうしても
そちらについてお話しせずにいられなかったため、
先送りになっていたのですが、ようやくその時がやってきました。

色々とツッコミがいのある作品なので、前置き無しでとっとと始めましょう。

ここは富士山麓にある村。
ここでは夏祭りが行われていました。
(提供:森永チョコレート)

祭りの人混みをそぞろ歩く美男美女。
天体物理学者の白石亮一(平田昭彦)、その同僚の渥美譲治(佐原健二)、
女性は白石の妹で渥美の恋人江津子(白石由美)、それから
白石の婚約者だった岩本弘子(河内桃子)。

白石はこの村に住んでおり、妹は東京からわざわざ富士山麓まで
浴衣姿でやってきたようです。

実は、この直前、白石は弘子との婚約を破棄したいと公言していました。
ならなんでダブルデートしてるんだって話ですが。

弘子はまだ諦めておらず、浴衣姿でアピールすればワンチャンあるかも?
と思って張り切っていたのかもしれません。知らんけど。

その時対岸火事が起こりました。

火を消そうと駆けつけた村の衆を引き止める白石。
彼はそれがただの火事でないことを知っているようでした。

その後火は燃え広がり、村は全滅してしまいます。

天文学者白石が研究していたのはミステロイドという星の存在でした。

白石の恩師、科学者の安達博士(志村喬)は今更論文を見て訝ります。

「あの自尊心の強い男が論文を投げ出しているよ」

その時、白石の住む村に大きな山崩れが起こったと知らせが入りました。
少々の地震では倒れないはずの鳥居もいとも簡単に崩れていきます。

この時に崩れていくジオラマがはっきりそうとわかるくらいちゃちい。
特技監督は円谷英二で、当時の最高技術のはずなんですが・・・。

そして、白石はその日を境に行方が知れなくなってしまったのでした。

「現場に強い放射能の反応が見られるんです」

「え・・・ほんとですか」

「何しろあっという間に一全滅し、犬一匹助かっていません」

それでは白石も助からなかったということなのでしょうか。

左にいる人はどう見ても自衛隊員なんですが、ここでお断りしておくと、
この日本に自衛隊なるものは存在しておりません。
じゃあなんなのかというと、名称は「防衛軍」なんですよ。

中丸忠男が演じているこの人、役名は山本二尉となっていますが、
つまり、防衛軍二尉ってことなのです。こりゃ驚いた。

ということは「地球防衛軍」って、つまり自衛隊のことだったんかい。

ところがとここには「富士防衛隊」などと書いてあったりして、
軍なのか隊なのかどっちやねん!と思わず問い質したくなります。

富士山麓からいきなりこんなんでましたー。

この巨大な生物は実はロボットで、「モゲラ」というそうです。
そういえばちょっとモグラ的な風貌をしているかな。

光線を出して車を破壊するという特技あり。

わかりにくいですが、これがこの世界の警察官の制服です。
警察と渥美(なぜこんな若造の一天文学者がここで出張ってくるのかわからず)
は、いよいよ「防衛隊」への派出要請を決めました。
この頃も非常時の出動要請は知事が行うことになっていたはずですが。

その時、モゲラが静岡県の市街地に出現したという知らせが入りました。

タイミングよくお風呂に入っている白石の妹江津子さん。
モゲラが送電線を切りまくったのでお風呂は真っ暗に。

これもサービスシーンってやつでしょうか。
彼女は兄の身を案じて東京からやってきて旅館に宿泊していたのです。

「江津子さん、早く着替えて!」

夜になって暴れ出すモゲラ。
なぜか火事があちらこちらで発生し、消防署が出動してモゲラに放水しますが、
蛙の面に水、いやモゲラの面に水、逆にこちらに迫ってくるので
消防隊員はホースを捨てて逃げ出し、ここで防衛隊の出動となりました。

そのとき伊福部昭先生作曲の名曲「地球防衛軍マーチ」が高らかに始まりました。

【30分耐久】地球防衛軍マーチ【伊福部昭】

おそらく、富士、板妻、滝ヶ原からの防衛隊であろうかと思われます。

本物の銃を撃つシーンを陸上自衛隊、じゃなくて防衛軍は撮らせてくれたんですね。
そのほかにも無反動砲をトラックから下ろすシーンが見られます。

しかし彼らはすぐに、銃ぐらいではこの怪物に太刀打ちできないことを
思い知るのでした。
怪物の出す熱線は、防衛隊の装備をも無残に破壊していきます。

それでもめげず、迫撃砲、M2火炎放射器で対抗する自衛隊、じゃなくて防衛軍。

防衛線である陸橋から全て人々を避難させた後、
防衛軍は陸橋ごと爆破するという方法でようやくモゲラの脚を止めました。

やったね防衛庁。

早速召集された非常国会で、一天文学者である渥美がなぜか
一連の事件について発表しております。
いやそこは師匠である安達博士だろう、と思いますが、
この世界では学者村も超リベラルということのようです。

一連の事件については何もわかっていないことを発表する渥美。
わかったことは、怪物はロボットであり、地球で作られたものではないことだけ。

「それでは宇宙から来た地球外生物の仕業ってことですか」

「それもわかりません」

その頃安達博士は。

「白石報告書のいう通りだ。月の裏側に不思議な現象が起きている」

ソ連が人類初めて月の裏側の撮影に成功したのは1959年。
つまりこの映画発表の2年後なんですが、この頃日本の一科学者が
どうして望遠鏡で月の裏側が見られたのだろう、と思ったらそうではなく、
不思議な現象とはUFOが月の裏側から現れていること。

「とにかく写真を撮ってくれ給え」

月の裏側から出てくるUFOを捕らえることができる写真機って?
この研究所はハッブル望遠鏡でも持っているのか?

しかしいとも簡単に研究所員は暗室で現像したフィルムを持ってきて

「できました!」

うーん、超有能。

安達博士は早速全世界にそれを発表しました。
日本の田舎にくすぶっていた一科学者が世界的にその名を轟かせた瞬間です

全身白のスーツでキメた安達博士が白石報告書の円盤発着現場となったらしい
湖を訪れたその時、

謎の構造物がなぜか地中から盛り上がって出現しました。
これぞミステロイドと白石が名付けた星からきた地球外生物の宇宙船だったのです。

ミステリアンはいきなり放送で要求を始めました。曰く、

安達博士、渥美、野田博士(左)幸田博士(右)川波博士の五人を
宇宙船に招待して話し合いをしたい。

「どうして我々の名を」

それはこちらもぜひ知りたい(笑)
山本二尉が

「五人の安全を保証するか」

と肉声で尋ねると、

「アンシンシテ ドウゾ」

これで相手を信用するというのも日本人のおめでたいところなんですが。

しかし山本二尉、本部に連絡を取るや否や、

「直ちに攻撃体勢に入ります!」

M4A3E8中戦車、通称シャーマンかしら。

その前方に待機する可愛らしいM24軽戦車。
あー、この既視感、まるで総火演を見ているような・・・。
ロケ地は東富士演習場ですかね(棒)

五人に何かあったら、その時には総攻撃をかけるぞ、という威嚇のつもり。

さてこちら科学者五人組。

「中は寒いですからマントを着てください」

といわれて大人しく変なマントを羽織り、お互いを見て吹き出すことも無く
長い廊下を進んでいきます。
わたしはここで「注文の多い料理店」的展開を期待したのですが、
耳にクリームを塗ることもなく、彼らは中にたどり着きました。

途中に立っているミステリアンが、「こちらへどうぞ」という
地球人しぐさをちゃんとマスターしているのに感動です。

おもてなしの精神は今や宇宙ワイドまで。

ドームの住人登場。
ドームが寒いのは彼らが冷涼な気候でないと生きていけないからなのですが、
それならマントとか脱げばいいのにと思うのはわたしだけ?

早速地元民に与えた被害について幸田博士がついつい嫌味を言うと、
ミステリアンの親玉は

「あれは戦争を避けるための小さな犠牲デス」

と言い放ちました。
あーなんだろうこの既視感再び。

「9条を守る為には戦いも辞さない」

って言うサヨクフレーズ?

「我々の科学力を示し戦うことの愚かさを知ってもらいたかったのデス」

抑止力ってことですかい。
すでに行使したものを抑止力とはいわないと思うがどうか。

彼らの要求はシンプルっちゃシンプルで、半径3キロの土地を貸して欲しい、
ということなんですが、問題はもう一つの要求。

「ミステリアンと地球人の女性の結婚を認めていただきタイ」

つきましてはこの女性を・・・とどこで撮ったのか祭りの写真を。

ミステリアンはストロンチウムのせいで生まれてくる子供の80%が
異常児で捨ててしまうので、地球人との間に子供を作りたい、
と無茶苦茶なことを言います。

ツッコミどころ多すぎ。

●異常の原因はミステリアンの男性にもあると思うが、地球人と交われば
まともな子供ができると思うのはなぜか

●ミステリアンに女性はもういないのか

●そこまで科学が発達しているのに、どうして異常児を捨ててしまうのか
染色体を操作するなり、生まれた後にケアする方法をどうして模索しないのか

だいたい、異星人との間に子孫を残さなければ、もう未来はないという
この切羽詰まった状態で、女性の外見を選り好みしてんじゃねーよ。

しかも、この祭りの行われた村って、あんたたちが殲滅させたんじゃなかったっけ。

ここで呆れるのはまだ早い。

ミステリアンのスカウト、しっかり白川由美と河内桃子という
二人の美人にも目をつけてピンポイントで名指し。

優秀な子孫って、つまり外見だけのことだったんですね。

防衛庁長官の会見が行われ、地球人としてはミステリアンの要求は
とても受け入れることはできないので、これを排除すべしとなりました。

緊急ミステリアン防衛対策は決定され、野戦特科部隊は東富士演習場に集結。
当時の105ミリ榴弾砲や迫撃砲がバンバン映ります。

こちら東京の白石の実家。
こんな事態だというのに、テーブルにはお紅茶とケーキが並んでいます。

「驚かないでください。
ミステリアンはあなた方を指名してきました」

その時茶の間のテレビに襟付きマントを着た白石が現れ、
彼らに話しかけてきました。

白石はいつの間にかミステリアンの手先になっておったのです。
その恐ろしさについて警鐘を鳴らすべき人物がなぜ?

これがこの映画のもっとも不可解なツッコミどころなんですが、
どうも白石、ミステリアンの高度な科学力に魅せられ、心酔し、
すっかりシンパになって変なマントを着るまでになってしまったようです。

「どうやっても地球人の科学では勝てっこないんだし、わずか3キロ半径の土地を
彼らに貸すくらいなんでもないじゃないか、攻撃はやめろ」

しかし、今現在進行形で中国がやっている「サラミ戦術」を知っている人は
その「わずか3キロ」の要求がどんどん侵略の度合いを深めていくのを
よくご存知ですよね?

しかし地球防衛軍の攻撃は始まってしまいました。
防衛軍航空隊の偵察機が偵察を行います。

「攻撃開始!」

防衛軍総司令(藤田進)の攻撃開始の命令が降りました。

要塞と化したミステリアンドームに雨あられ砲弾が撃ち込まれます。

シャーマンはこのシーンでは模型に変わっていました。

これは本物。もう今は退役した当時の装備だと思われます。

百里からF8Fセイバーが発進。

迫撃砲の装填は本物です。

その様子を見守るミステリアン(可愛い)
真ん中の赤いのが一番偉くて、黄色がその次、青は下っ端です。

こんなもので我々に勝てるかい、とほくそ笑むミステリアン。

セイバーが爆撃を行うも、逆にやすやすと撃墜されてしまいました。
その中の一機は火を噴く機体ごとドームに特攻を行います。
なるほど、自衛隊といわず防衛軍とした訳はこれか・・・・。

MGR-1オネスト・ジョン地対地ロケット弾まで。

最新鋭機のスターファイターも火を噴きました。

果敢に突き進んでいく一台の戦車も・・・・

地滑りを起こされ地中に消えました。

現在の日本の国力ではこれが限界ということがわかり、(´・ω・`)とする司令部。
この時、ミステリアンの爆弾の威力を「関東大震災の破壊力と同じ」
というのですが、これって少し変な例えじゃありませんかね。

「原子爆弾の」とは当時の世情では言えなかったのかな。

かさず宣撫工作を行うミステリアンの飛行体。

「我々の要求はわずか3キロメートルの土地です。
ミステリアンは地球の平和を願うものです」

散々やらかしておいて今さらどの口が言うのかって話ですが。

さてどうなる日本。

(提供:森永チョコレート)

 

続く。