2020年5月のブログです
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川上範夫さんの『ウィニコットがひらく豊かな心理臨床-「ほどよい関係性」に基づく実践体験論』(2012・明石書店)を初めて読みました。
川上さんの論文は、これまでにいくつか読ませていただいています。
そのこまやかでていねいな実践を踏まえた論考にはすごく感心させられることが多かったのですが、今回、単行本を古本屋さんで手に入れることができました(こんないい本が品切れなのはもったいないことです)。
すごい本です。
川上さんは、ご自分のケースを紹介しながら、ウィニコットさんをとてもわかりやすく説明してくれていますが、それがすごいです。
ウィニコットさんをこんなに深く理解して、説明されるかたはそういません。
ひょっとすると、ウィニコットさんが表現できなかったことも説明されているような気もします。本当にすごいです。
例によって、特に印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、遊ぶこと、二人でいながら一人、抱えること、などなどのウィニコットさんのアイデアが、ほどよい関係性、という川上さんの考え方とご自身のケースで、こまやかにわかりやすく説明されます。
こんなにわかりやすいウィニコットさんの説明は初めてですし、さらに深い理解に誘われて刺激的です。
二つめは、関係性、という考え方から、精神病や発達障碍などを説明されて、それがまたとてもわかりやすいこと。
それだけでなく、母子関係や親子関係の理解にも広がって、さらには、時代の病いである不登校や非行、虐待などの理解にも進みます。
このあたりは、乳児の関係性からはじまって、それがおとなや時代の関係性にまで広がっていて、視野が広いですし、理解が深いです。
いい本に出会えたなと思います。
今後、さらに、読み込んでいきたいと思います。 (2020.5 記)
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2023年5月の追記です
ウィニコットさんの言葉の中で印象深いものに、治療者の解釈は治療者の限界を示すため、というのがあります。
どんな解釈にも限界があるということとともに、治療者が限界を見せることで、クライエントさんの自立をうながす側面があるのではないかと思います。
治療者の言葉が、もし、いつもあまりに完璧過ぎると、クライエントさんの依存性を助長して、自立を阻害してしまうのだと思います。
ほどよい関係性、ほどよい母親ということの一面を示しているように、じーじには感じられます。 (2023.5 記)