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岡松和夫『無私の感触』2002・講談社-敗戦直後の日本で、文学や政治に真面目に取り組む青年を描く

2024年05月23日 | 小説を読む

 2023年5月のブログです

     *

 岡松和夫さんの『無私の感触』(2002・講談社)をすごく久しぶりに読む。

 おそらく20年ぶりくらいだ。

 本棚の横の本の山の中から発掘をした(?)。

 岡松和夫さんのことはどれくらい知られているのだろう(岡松さん、ごめんなさい)。

 じーじは、たぶん学生時代に、立原正秋さんの随筆に立原さんの近隣に住む友人として登場する岡松さんを知り、岡松さんと立原さんが小説の同人誌で切磋琢磨して以来の付き合いであることを知って、岡松さんの小説を読むようになった記憶がある。

 そして、岡松さんの小説の中で、若者を主人公とした『深く寝ざめよ』や『詩の季節』『魂ふる日』などを読んで、その端正で堅牢な日本語を味わっているが、一方で、きちんと読んでいない小説も多くあり、あまりいい読者とはいえないかもしれない(岡松さん、再びごめんなさい)。

 岡松さんは福岡の出身で、東大の仏文科と国文科を卒業、同期には大江健三郎さんがいて、学生小説コンクールでお二人は同時入選をしたことがあるという。

 その後、岡松さんは短大で日本文学の先生をしながら小説を書き、やはり日本文学に詳しい立原さんと親しい付き合いを続けたらしい。

 立原さんの随筆で読むお二人の付き合いはとても楽しく、読んでいて羨ましいほどだ。

 さて、本書、例によって、あらすじはあえて書かないが、敗戦直後の日本で、学生運動を手伝いながら、組織についていけずに挫折をする大学生の青年が主人公。 

 貧しい学生生活の中で、文学や政治を真面目に考え抜き、生きる力を確認するかのような姿に共感する。

 真面目だが、人間味があるところが魅力だ。

 じーじもこんなすごい青春を送っていればよかったと反省する。

 浮ついた今の世の中で、何が大切かを考えさせてくれるよい小説だと思う。     (2023.5 記)

  


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