*この画像は、2017年プラハでの「この人を見よ」初演時のものをお借りしました。
ホセ・クーラは、2021年9月5日(日)、ルーマニアの首都ブカレストといくつかの都市で開催されているジョルジェ・エネスクフェスティバルに出演します。
今回は、プログラムがすべてクーラが作曲した世界初演を含む3曲で構成され、オケはイギリスのフィルハーモニア管弦楽団、指揮はクーラ自身が務めます。フェスティバルの公式サイトで生放送される予定です。
ジョルジェ・エネスクはルーマニア出身の作曲家で、ヴァイオリニストとしても著名だったそうで、今年は生誕140年(1981~1955年)にあたるそうです。エネスクを冠したこのフェスティバルは、東欧最大の規模を誇り、約4週間にわたり、国際的なオケ、指揮者、ソリストなど大勢が出演した沢山のプログラムが組まれています。
出演者のうち、目についた主な名前をあげただけでも、パーヴォ・ヤルヴィ、サイモン・ラトル、ウラディーミル・ユロフスキ、ジョイス・ディドナート、ユジャ・ワン、ダイアナ・ダムラウ、フィリップ・ジャルスキー、パトリシア・コパチンスカヤ、ソーニャ・ヨンチェヴァ、サイモン・キーンリーサイド等々、各分野で世界的に有名なアーティストがずらりと並んでいます。あまりにプログラムが沢山すぎて全容はよくわかっていませんので、ぜひフェスティバルの公式サイトをご覧ください。
クーラが出演するコンサートは、現地時間9月5日の午後7時半から。日本時間では、2021年9月6日午前1時30分からになります。終了から12時間はオンデマンドで視聴できるようですので(6日の午後2時半頃まで可能か?)、興味のある方はぜひ、下のリンクからどうぞ。
PHILHARMONIA ORCHESTRA, LONDON
George Enescu Festival
Sunday, September 5, 2021 19:30 - 20:40
≪Artists≫
José Cura – conductor
Polina Pasztircsák – soprano
Elisa Balbo – soprano
Roxana Constantinescu – alto
Ramón Vargas – tenor
Marius Vlad Budoiu – tenor
Nicolas Testé – bass
Ciprian Ţuţu – choirmaster
Radio Romania Academic Choir
Răzvan Rădos – choirmaster
Radio Romania Children’s Choir
≪Programme≫
JOSÉ CURA Modus (from Argentinian Requiem)
JOSÉ CURA Te Deum
— Interval —
JOSÉ CURA Ecce Homo
≪出演者≫
フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン
ラジオアカデミック合唱団
ルーマニア放送子ども合唱団
ホセ・クーラ作曲家&指揮者
≪プログラム≫
ホセ・クーラ作 「Modus」(「アルゼンチンのレクイエム」よりキリエ)
ホセ・クーラ作 「テ・デウム」 フェスティバル25周年記念ヴァージョン(世界初演)
POLINA PASTIRCHAK ソプラノ
ホセ・クーラ作 「この人を見よ」 (3曲構成=マニフィカト、ゴルゴダ、スターバト・マーテル)
エリーザ・バルボ (マリア役・ソプラノ)
ラモン・バルガス(キリスト役・テノール)
ロクサナ・コンスタンティネスク(アルト)
MARIUS VLAD BUDOIU (テノール)
二コラ・テステ (バス)
VLAD IVANOV (ナレーター)
→ クーラの「この人を見よ」については、リュブリャナフェスティバルの記事や、初演時とリハーサル編等をご参照いただけると幸いです。
≪ 生放送・オンデマンド(12時間のみ)リンク ≫
*この画像をクリックしてください。フェスティバル公式サイトのストリーミングのページにリンクしています。
●生放送は、日本時間2021年9月6日(月) 深夜 午前1時30分~
オンデマンドは終了後、12時間可能 (6日の昼過ぎまでと思われます)
≪ フィルハーモニア管弦楽団のサイトよりーープログラムとクーラの紹介 ≫
”ルーマニアのエネスクフェスティバル2021での2回目の公演では、音楽的博学者のホセ・クーラが、21年ぶりにオーケストラ(フィルハーモニア管弦楽団)に戻ってきたことを歓迎する。
オペラの最も並外れたテノールのひとりとして世界中で知られているアルゼンチンのアーティスト、ホセ・クーラは、もともと指揮者として訓練を受けていた。彼は今夜、オーケストラ、合唱団、ソロのボーカリストのために書かれた彼自身の3つの作品の演奏で指揮台に上がる。
前半の「Modus」は、フォークランド紛争の犠牲者に捧げるクーラの大規模な作品「Argentinian Requiem」の中からの、非常にパーソナルな1曲。
ソプラノのPOLINA PASTIRCHAKが、25周年を記念してエネスクフェスティバルから特別に委託されたクーラの「テ・デウム」のワールドプレミアに参加する。20分間の演奏では、ルーマニア放送アカデミック合唱団と児童合唱団と力を合わせ、オーケストラ全体と一緒に演奏する。
最後に、クーラの記念碑的な「Ecce Homo(この人を見よ)」は、非常にスピリチュアルな3楽章のオラトリオで、最近ハンガリーで初めて録音された。今夜のパフォーマンスでは、ソリストとしてエリーザ・バルボ、ラモン・バルガス、ロクサナ・コンスタンティネスク、Marius Vlad Budoiu、二コラ・テステが出演する。”
≪ フェスティバルのプロデューサーのFBより ≫
”ホセ・クーラとの強烈なコラボレーション。指揮者であり作曲家でもあるホセ・クーラは、「この人を見よ」のビジュアル(*コンサートの背景に放送される映像のことと思われる)で、聖書の場面を再現することを望まなかった。彼は私に、「今」について話してほしいと言った。
抗議行動、#MeToo、Black Lives Matter、#resist、ランペドゥーサ、シリア-アレッポの「ガス攻撃」、アフガニスタン、気候変動、地球温暖化など...。
ヴラド・イワノフが9月5日の夜、パレス・ホールでのストーリー・テラーとしてチームに加わった。ジョルジェ・エネスク・フェスティバルでお会いしましょう。”
前回の記事で紹介しましたが、先月末のリュブリャナ・フェスティバルでも、後半にクーラの「この人を見よ」が演奏されました。
なぜ今、キリストの磔と死をめぐる宗教曲オラトリオなのか。その点は私もなぜなのか不思議でしたが、エネスクフェスティバルのプロデューサーのFBでのコメントで、とても納得しました。
クーラはプロデューサーに対して、自分の曲を表現する映像作品には、聖書の場面を入れるのではなく、現代のことを語る、様々な現代の世界をめぐる諸問題に対して、沸き起こっている抵抗運動、改革を求める運動の一場面で構成した映像作品となることを求めたということでした。このことから、これまでもクーラはいっかんして芸術や音楽の社会的役割、アーティストの責任ということを問い、訴え続けてきたように、キリストや宗教をテーマにした音楽においても、今の視点でとらえなおし、現代を生きる私たち自身に関わるものとして表現し、訴えているのだということがよくわかりました。
オラトリオ「この人を見よ」は1989年にクーラが書いた作品で、その後長らくテノールとして活動するためにしまい込まれていたそうですが、2017年にプラハで初演されました。「Modus」はプラハ響のレジデントアーティストの時代の書下ろし作品で2017年にプラハで初演されました。その後、クーラが1984年に作曲したフォークランド紛争の犠牲者を追悼するレクイエムを改訂し、その中に組み込んだようです。「テ・デウム」は、昨年来のパンデミックでコンサートやオペラがキャンセルになるもとで、自宅に籠らざるを得ない時間を使って、新たに作曲した曲だそうです。それぞれ、若い頃、作曲家をめざしていたクーラが、長年の歌手としての経験を経て、熟成させ改訂、または新たに作曲した音楽であり、クーラの人生を様々に反映したものということができると思います。
深夜の生放送ですが、月曜日の昼くらいまでオンデマンドが可能です。そのあとは削除されてしまうようですので、条件のある方はお早めにご覧になることをおすすめします。
●フェスティバルのクーラ紹介ページ
*画像はフェスティバルやオケのSNS、HPなどからお借りしました。