映画『仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(2009年8月公開 66分 東映)
映画『仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』は、特撮 TVドラマシリーズ『仮面ライダー』シリーズの第19作『仮面ライダーディケイド』の劇場版作品。
『侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』と同時上映。キャッチコピーは「時空を超えて、集結せよ。究極のヒーロームービー誕生!!」、「オールライダー大決戦!」。
「平成仮面ライダーシリーズ10周年記念」・「平成仮面ライダーシリーズ10作品記念作品」にして、同時に TVシリーズの放送開始と共に始まった「平成仮面ライダー10周年プロジェクト」の第2弾「平成仮面ライダー10th 夏の陣」という位置付けでもある。
本作品は、TVシリーズ『仮面ライダーディケイド』のクロスオーバー要素を更に拡大させ、クウガからキバまでの平成仮面ライダーのみに留まらず、1号から BLACK RXまでの昭和仮面ライダー、Vシネマや映画という形式で活躍したシン・ZO・J、次回作の Wを含めた「オールライダー」が一堂に会する作品である。ただし、主役以外のサブキャラクター扱いとなる仮面ライダーの一部は登場しない。この「仮面ライダー全員集合」というシチュエーションは、TVシリーズ第9作『仮面ライダー BLACK RX 』(1988~89年)以来である。
タイトルは、1972年に公開された仮面ライダーシリーズ初のオリジナル映画『仮面ライダー対ショッカー』を踏襲したもので、タイトルロゴも当時のものを意識している。
平成仮面ライダーシリーズとして、過去にもアトラクションショーなどで「歴代ライダー全員集合」と銘打ったものは存在したが、正式な映像作品としては初となる。また ZX・クウガなど、一部の仮面ライダーは今作が映画初登場となった。
敵側には、歴代シリーズの悪の組織が結集した「大ショッカー」が登場。『仮面ライダー』の死神博士・地獄大使、『 X』のキングダーク、『 BLACK』の大神官ビシュム・シャドームーン、『 BLACK RX』のジャーク将軍を始めとする、歴代仮面ライダーと戦った各シリーズの怪人たちが多数登場している。今作オリジナルの怪人は登場しなかったが、一部のキャラクターは新規デザインとなった。
ゲスト俳優には、大杉漣・大浦龍宇一に加え、本作および TVシリーズの主題歌を担当する GACKTが出演。また、倉田てつを・賀集利樹を始めとするシリーズの過去の出演者も多数出演している。
本作品は TVシリーズ『仮面ライダーディケイド』の内容に直接つながる番外編という位置づけであったが、本作品のエンドロール後に、映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』の公開が発表され、TVシリーズの結末もこちらに続く形となった。
公式ムック『仮面ライダーディケイド RIDE THE DECADE 』(講談社)によれば、本作は「 TVシリーズの第29話(仮面ライダーアマゾンの世界編)と第30話(仮面ライダー大戦の世界編)との間に起こったエピソードと推測される。」と記されているが、実際には矛盾点も存在している。
本作は全国345スクリーンで公開され、2009年8月8・9日の初日2日間で興行収入約4億7千万円・動員約40万人を記録し、映画観客動員ランキングで初登場第1位を獲得した。これは、興行収入15億円を記録した映画『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』を上回るスタートであった。最終興行収入は19億円を記録し、2013年時点で仮面ライダー劇場版シリーズとしての最高記録を樹立した。
あらすじ
仮面ライダーディケイドこと門矢士(かどや・つかさ)が訪れた、「とある世界」。そこでは、なぜか士の撮った写真は像を歪めることがなかった。
そんな士の脳裏に、突然ある洋館が思い浮かぶ。士がわずかな記憶を頼りにその洋館にたどりつくと、そこには士の妹と名乗る少女・門矢小夜(さよ)が住んでおり、士はここが自分自身のかつていた世界だと確信する。
しかし、この世界でも「世界の崩壊」は進行していた。小夜に仕える若い執事・月影ノブヒコは、世界の崩壊の原因が各世界に生まれた仮面ライダーたちにあると語り、それを止めるためには、たった1人の「最強の仮面ライダー」を決めなくてはならないと告げる。それを聞いた士は、失われていた自分の記憶を取り戻し、「ライダートーナメント」の開催を決める。各世界を旅した士が橋渡しとなり、戦うライダーたち。
しかしその戦いの裏には、各世界の悪の組織により構成された巨大組織「大ショッカー」の陰謀が隠れていた。「ライダートーナメント」の決着とともに士と月影の挙動が怪しくなり、会場は崩壊。気絶したユウスケと夏海は、大ショッカー本部へと連行されてしまう。
夏海を追ってやってきた栄次郎は、突如として大ショッカーの大幹部の一人・死神博士に変身し、さらに士が現れて、本当の正体を明らかにする。士は、大ショッカーの大首領であり、各世界の仮面ライダーが引かれ合うことが原因で引き起こされる世界の崩壊を防ぐための、「ライダー討伐」が彼の真の目的だったのだ。
変貌した士たちに追われて、大ショッカー本部を脱出したユウスケと夏海は小夜の元へ向かう。しかし小夜は自身を置いて次元を超える旅に出て行った兄・士を深く恨んでおり、その憎しみから大ショッカー大幹部・大神官ビシュムへと覚醒を遂げていた。そしてユウスケもまた、小夜の持つ「地の石」の力によって「禁断の闇」をもたらす「仮面ライダークウガ・ライジングアルティメット」へと強制覚醒。優しい心を失いビシュムの操り人形と化してしまう。残された夏海は、士を信じた自分の判断は誤りだったのかと自問自答し、彼に憎悪を抱いてしまう。
自らの目的を果たし、居場所をようやく得たはずの士であったが、世界の崩壊は止まらない。実は、世界の崩壊の原因がライダーたちであるというのは偽りであり、士の世界を渡る力を利用して大ショッカーが各世界に侵攻するための「橋」を作るのが、大ショッカーの真の目的であった。そして各世界のライダーが倒された以上、もはや士の利用価値はなくなっていた。月影と小夜に大首領の座を奪われ、大ショッカー基地より追放される士。何とか元の世界に戻ってこれたものの、光写真館もまた、夏海からの罵倒を受けて拒絶されてしまう。すでに大ショッカーでの地位を奪われた士にとって、もはや大切な仲間や居場所、そして目的はなくなっていた。絶望した士は、いずこへとなく姿を消してしまう。
その後、ライダートーナメントにより各世界のライダーはほぼ絶滅。目論見どおりに邪魔者であるライダーたちを消し去った大ショッカーは、各世界へ侵攻を始める。光写真館も大ショッカーの侵略により破壊され、行き場を失った夏海は大ショッカーの攻撃から逃れるため、鳴滝と仮面ライダーディエンドこと海東大樹の助力を得てさまざまな世界を逃亡し続けるが、ついに追い詰められてしまう。
そのころ、仲間も居場所も目的も失い自暴自棄となった士の前に、謎の男・結城丈二が現れる。彼は士を心から信頼し敬愛していたものの、大ショッカーのやり方に反発し、それに激怒した士との戦いに敗れて大ショッカーから追放され、憎悪を抱き、長年に渡り士を抹殺するために何年も各世界を旅をし、ついに彼を見つけたのだった。結城は士の命を奪おうとするが、生きる力を失った士に失望して叱咤し、そして許す。彼は士を絶望から目覚めさせ、その場を去った。
結城との再会をきっかけに、士は大ショッカーとの戦いを決意。大ショッカーに襲われた夏海とディエンドを救う。しかし、いまだに士と打ち解けられない夏海の憎悪は薄れぬままであり、信頼は壊れたままであった。そこへ再び無数の怪人軍団が襲いかかり、ディケイドとディエンドは応戦するが、たった2人だけでは太刀打ちできず、劣勢に追い込まれてしまう。
しかしその時、次元の道が開き、復活した各世界のライダーたちが世界の壁を超えて集結した。
主な登場人物
門矢 士(かどや つかさ) / 仮面ライダーディケイド …… 井上 正大(20歳)
本シリーズの主人公。仮面ライダーディケイドに変身する青年。20歳。一人称は「俺」。写真家を自称し、ピンク色の二眼レフのトイカメラを常に身につけている。クールかつ自信家で、誰に対しても尊大な態度で接し、傲岸不遜な態度を取ることが多い。
光夏海らの住む街にふらりと現れ、夏海の祖父・光栄次郎の経営する光写真館で働きながら居候しているが、それ以前の素性は不明で、本人にも記憶が無い。決めゼリフは、「通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておけ!」。難しい話は「大体わかった。」という口癖ですませる。ナマコが苦手。生身でも敵怪人と対等に渡り合えるほど身体能力が高く、バイオリン演奏やスポーツなどといったあらゆる物事をそつなくこなすが、彼が撮った写真はなぜか被写体が歪んで写ってしまう。記憶を失ってはいるが、9つの異世界に関する知識や変身後の戦い方などを断片的ながらも覚えているため、戦闘の渦中にあっても動揺したり取り乱すことはほとんどない。
物語の序盤で、自分が全ての仮面ライダーを破壊する存在であること、そして世界の消滅を防ぐために旅をしなければならないことを告げられる。旅する世界のどこかで自分の本来いた世界が見つかるかもしれないと考え、旅を続ける。
鳴滝や訪れた世界のライダーからは「破壊者」や「悪魔」などと忌み嫌われ、時折自身も皮肉で自称することもある。また、全ての世界を救おうという意思はあるのだが、意図しなくとも訪れた世界が自分の存在で崩壊することを知り、苦悩する。しかし、旅を続ける内に、そうした自分を受け入れてくれる夏海を大切に思うようになる。
本作では、ついに自分が生まれた世界にたどり着き、妹の小夜と再会して記憶を取り戻す。そして世界の崩壊を止めるため、最強の仮面ライダーを決める「ライダートーナメント」を開催する。
光 夏海(ひかり なつみ)…… 森 カンナ(21歳)
本シリーズのヒロイン。祖父・光栄次郎の経営する光写真館で受付係をしている女性。20歳。一人称は「私」。本来は仮面ライダーのいなかった「夏海の世界」の出身。誰に対しても敬語で話し、他人の首筋にある「笑いのツボ」を押すことで相手を否応無しに大笑いさせる、光家秘伝の特技を持つ。士からは「ナツミカン」とも呼ばれる。
以前から、大勢の仮面ライダーたちがディケイドに倒される夢をよく見ており、士が変身したディケイドに警戒心を抱いていた。士が多くの別次元の世界を旅していることを知り、自分の夢に対する不安からその旅に同行する。たびたび鳴滝から接触を受けてディケイドの危険性を訴えられているが、自身は士の優しさを信じており、あらゆる世界から迫害を受ける士の「帰る場所」になりたいと願うようになる。
本作では、大ショッカーの襲撃を受けて海東大樹とともに逃亡する。
海東 大樹(かいとう だいき) / 仮面ライダーディエンド …… 戸谷 公人(19歳)
仮面ライダーディエンドに変身する青年。一人称は「僕」。本来は他に仮面ライダーのいなかった「仮面ライダーディエンドの世界」の出身。様々な世界を単独で往来し、「僕の旅の行き先は、僕が決める。」という信念のもとに、価値のある「お宝」と判断した物を収集している、孤高のトレジャーハンターである。
感傷に浸ることなく「お宝」にのみ価値を見出すドライな性格。料理の腕前が達者で、よく指鉄砲で他人に狙いを定めるしぐさをする。「~(し)たまえ。」が口癖。
ディエンドライバーを入手して士たちよりも先に異世界を渡り歩いていた様子で、異世界の事象にも詳しい。本人は、士とは古い知り合いだと語る。鳴滝とも面識がある。口の悪さは天下一品で、他人から誤解を招きやすい。
士たちとの馴れ合いや人づきあいが苦手で別行動を取り、目的の相違から彼らの旅を妨害することもしばしばである。当初は興味本位から士と共闘することが多かったが、シリーズ終盤では士に助言したり気にかける行動を見せており、士たちが大切な仲間であることを自覚するようになる。
本作では、ライダーたちの宝を手に入れるために「ライダートーナメント」に参加。劇中では仮面ライダーアマゾンの「ギギの腕輪」を手に入れていた。士とユウスケと共に決勝戦まで勝ち進むも、決勝戦では自ら退場。その後、戦闘員に化けて大ショッカーから夏海を助け、士や他のライダーたちと共に大ショッカーに立ち向かい、ギギの腕輪をアマゾンに返した。また劇中で、ディエンドライバーが大ショッカーから盗んだ物であることを明かしている。
小野寺 ユウスケ / 仮面ライダークウガ …… 村井 良大(21歳)
ディケイドを倒すという目的を抱く鳴滝から変身ベルト・アークルを託され、仮面ライダークウガに変身する能力を得た青年。一人称は「俺」。「仮面ライダークウガの世界」の出身。最初は尊大な態度をとる士に食ってかかったが、共闘を経て友情を築き、強い信頼を寄せるようになる。
「クウガの世界」にてディケイドとの共闘でグロンギ族を壊滅させた後、キバーラによって「仮面ライダーキバの世界」に連れて来られ、士たちと合流して異世界を巡る旅に同行する。主に情報収集などで士をサポートする。
本作では、大ショッカー大幹部の大神官ビシュムに操られてライジングアルティメットに変身し、ディケイドに襲いかかる。
鳴滝(なるたき)…… 奥田 達士(41歳)
「預言者」を自称する壮年の男で、ディケイドが遭遇する事件における黒幕的存在。眼鏡にコート、フェルト帽が特徴。ディケイドと大ショッカーをともに敵視し、特にディケイドに対しては「世界の崩壊を防ぐ」という名目でことあるごとに激しい憎悪を口にするが、その真意は不明である。ディケイドやディエンドのようにドライバーを持ってはいないが、自ら様々な世界を往来することができる。
士たちの行く先々の世界で、ディケイドが世界の破壊者であると他のライダーたちに吹き込んで抹殺を教唆したり、別世界から召喚したライダーや怪人を刺客として差し向けたりするなど、目的のためならば手段を選ばず、混乱を巻き起こし続けている。また、夏海にも接触してディケイドを止めるようにそそのかす。
本作では引き続いてディケイドと敵対しつつも、夏海と大樹の大ショッカーの追っ手からの逃亡を手助けする。
キバーラ …… 沢城 みゆき(24歳 声を担当)
翼長11.5cm ほどの、キバット族の白いコウモリ型モンスター。一人称は「私」。仮面ライダーに変身する者に噛みつくことで、その能力を強化させる。
普段は明るい性格を装っているが、ときおり冷酷な一面を覗かせる。鳴滝に加担しており、彼と同様に次元に干渉して他者を異世界に送る特殊能力を持つ。「仮面ライダーキバの世界編」後は、スパイ活動を行うために士たちに同行している。
門矢 小夜(かどや さよ)…… 荒井 萌(14歳)
士の5歳年下の妹。1年前から異世界を巡る旅に出た士の帰りを待っていた。10年前に両親を亡くしてから屋敷に引きこもるようになるが、内心に秘めていた「外へ出たい」という思いによって、次元の扉を開く特殊能力を身につけていた。兄を思う一方で、置いていかれたことによる恨みの念もあり、その思いを月影に利用される。
大神官ビシュム
門矢小夜が大ショッカーの大幹部として目覚めた姿。原典の『仮面ライダー BLACK 』(1987~88年)同様に白いローブを身につけているが、右顔のメイクがない、翼竜の大怪人に変身できないなど、原典と異なる部分が多い。
月影 ノブヒコ / 創世王シャドームーン …… 大浦 龍宇一(40歳)
「仮面ライダーディケイドの世界」に存在する、門矢家に仕える執事。TVシリーズ『仮面ライダー BLACK 』や『 RX 』でシャドームーンに変身していた秋月信彦とは別人である。
かつてのシャドームーンとは異なり、「世紀王」でなくゴルゴムの支配者である「創世王」を名乗っていることから、おそらく仮面ライダーBLACK に勝利して、創世王の座についた別世界のシャドームーンである可能性が高い。サタンサーベルや「シャドービーム」を武器にする。
大ショッカーの計画を進めるために、異世界を渡る能力を持つ門矢士を大ショッカーの大首領に仕立て上げ、「世界の消滅を止めるために仮面ライダーを討伐する」として、士に仮面ライダーディケイドの能力を与えて旅させた。その後、士が「ディケイドの世界」に戻り、大ショッカー大首領としての記憶を取り戻すと、士の妹である門矢小夜を、自分を置いてきぼりした士への彼女の恨みを利用して大神官ビシュムに覚醒させ、士を退けて、自らの「創世王」としての正体を現し、大ショッカー大首領の座に就く。この際に、大ショッカー大幹部である死神博士やジャーク将軍が大首領だったはずの士を躊躇なく追放していることから、シャドームーンの大首領就任は、最初から計算されていたことだったと推測される。
最終決戦では、ディケイドとクウガ・ライジングアルティメットの2人と同時に戦い、創世王の名に恥じない圧倒的な強さを見せる。だが、突如として参戦した仮面ライダーW の攻撃法に対応できず翻弄され、最後は大ショッカー基地の壁面に打ち付けられたところを、ディケイド率いるライダーたちによる「オールライダーキック」を大ショッカー基地もろともその身に受けて敗れた。
結城 丈二 …… GACKT(36歳)
「仮面ライダーディケイドの世界」の戦士。かつて『仮面ライダーV3』(1973~74年)に登場した結城丈二とは、名前は同じだが別人。元は大ショッカーの科学者だったが、組織を裏切って大首領(門矢士)に右腕を奪われたうえに追放されてしまったことで、大ショッカーと士に対する復讐を誓い、たった一人で戦いを続けている。右腕が義手になっており、鉄柱をたやすく折り曲げるほどの強度を誇る。また、ビーム砲アタッチメント「ブラスターアーム」に換装して戦うことも可能。
当初はブラスターアームのほかに、本作オリジナルのレザースーツとサングラスを身に着けた姿で新たな「ライダーマン」として登場する予定だったが、撮影スケジュールの関係で、映像化されたのはブラスターアームのみとなった。
本作で昭和・平成の仮面ライダーが一同に集結する際には、『 V3』に出演した際と同じデザインのライダーマンも別に登場しており、大ショッカーやデストロンの戦闘員を倒している。金田治監督によると、当初の予定では GACKT演じる結城丈二の存在があるため、昭和版のライダーマンの活躍はなかったが、やはり見せ場を用意する必要があるだろうと後から撮り足したという。
本作の主題歌『 The Next Decade 』のプロモーションビデオは、本作の前日談になっており、結城丈二がある人物を探すという内容で、映画本編では見られなかった戦闘シーンやブラスターアームの発射シーン、バイク搭乗シーンを観ることができる。
光 栄次郎 / 死神博士 …… 石橋 蓮司(68歳)
ショッカー(1971~72年)出身の大幹部。自称「怪人作りの名人」。原典とは異なり、髪が肩まで伸びた白髪になっている。その正体は、『ディケイド』に登場する光夏海の祖父・光栄次郎が、突如現れた黒マントを身に包まれたことで変身した姿。
ただし、死神博士が爆死した後も、エンディングで栄次郎は何事もなかったかのように写真館に戻っていた。
イカデビル
死神博士自身の怪人態にして、博士の最高傑作でもある。武器は伸縮自在のムチ・全身から発射する「イカ爆弾」を武器とする。
最終決戦でディケイド、ディエンド、電王、ファイズ、ブレイド、キバの6人を同時に相手にするも、ファイナルフォームライドによる6人の合体攻撃を受けて爆死した。
地獄大使 …… 大杉 漣(57歳)
ショッカー出身の大幹部。死神博士とともに怪人軍団の指揮を執る。気性は荒いが組織への忠誠心は厚い。全身ゴールドの原典とは違って鎧の色が黒になっており、兜とベルトの紋章が大ショッカーのものになっている。
ガラガランダ
地獄大師が変身した怪人態。右手のムチを自在に伸ばして相手を攻撃する。
最終決戦で1号・2号・BLACK RX・カブトの4人を同時に相手にするも、RX・カブトの合体攻撃で怯んだところに1号・2号の「ライダーダブルキック」を受け、「偉大なる大ショッカー、大万歳!」と絶叫しながら爆死した。
キングダーク
身長42メートル、重量1500トン
大ショッカー基地の地下にある「大首領の間」に眠っていた巨大ロボットで、GOD機関(1974年)出身の大幹部。
本作の最後に登場する大幹部にして、「大ショッカーの秘密兵器」とも呼ばれており、大幹部としてだけでなく巨大兵器としての側面も持つ。原典では体内に操縦者がいたが、本作では自我を持って動いている。
大ショッカー基地の崩壊後にその巨大な姿を現し、オールライダーとディエンドが召喚した仮面ライダーJ を圧倒した。
大ショッカー
各世界の仮面ライダーたちが戦ってきた悪の組織が大同団結して結成された、巨大な秘密結社。TVシリーズで語られた「世界を繋ぐ橋」を利用しての全世界征服と仮面ライダーの抹殺を目的としており、ライダートーナメントによってライダーの同志討ちを図る。各世界を渡り、その世界で活動している悪の組織を傘下に入れることで勢力を拡大させていた。
本作品の公開に先駆けて、TVシリーズでも終盤(7月放送の「仮面ライダー BLACK RX の世界編」)から登場し、アポロガイストを中心に暗躍している。ライダートーナメント終了後、本格的な全世界への侵攻を開始するが、ディケイドをはじめとするオールライダーたちの活躍によって、野望を阻止された。ただし、TVシリーズではアポロガイストとソーンファンガイア(『仮面ライダーキバ』)が「ライダー大戦の世界編」において、アンデッド(『仮面ライダーブレイド』)とファンガイアを中心とした部隊を率いて活動を続けているため、大ショッカー自体は縮小しつつも壊滅はしていないということになる。
組織の紋章は双頭の鷲で、「 DCD(ディケイド)」の文字が刻まれている。なぜか「大ショッカーオリジナル」という銘柄のビールが存在し、死神博士と地獄大使が仲良く飲んでいる。
大首領 / 創世王
大ショッカーの頂点に立つ存在。その正体は仮面ライダーディケイドこと門矢士で、「世界を崩壊から救うため、その原因となっている仮面ライダーを排除し、大ショッカーによる全世界の統治・支配を行う」という名目の元に、ライダー討伐の旅を続けていた。
ディケイドライバーやライドブッカー、ディエンドライバーなども、もともとは大ショッカーが大首領のために開発した物だった。組織の紋章に刻まれた「 DCD 」の文字も、ディケイドが大首領であることを示している。
しかし実際は、士の世界を渡る特殊能力に目をつけた大ショッカーが、それを利用するために士を騙して大首領にまつりあげていただけで、士が用済みになった後は、月影ことシャドームーンが「創世王」の名を帯びて大首領の座に就く。
本作の時点で大ショッカーを構成している大幹部は、死神博士、地獄大使、アポロガイスト、キングダーク、十面鬼ユム・キミル、大神官ビシュム、シャドームーン、ジャーク将軍(声・加藤精三)の8名。
怪人
怪人軍団や戦闘員は大幹部に指揮され、世界征服のための破壊活動を行う。ショッカーからファンガイアまで昭和・平成の様々な怪人たちによって構成されており、原典では首領・幹部クラスだった者もいるが、本作で幹部扱いとなっている怪人以外は戦闘員のような立ち位置であり、複数体で徒党を組んで活動する。本作では、ブラックサタンとデルザー軍団、ネオショッカー、ドグマとジンドグマ、バダンは加入していない。
オリジナルの種族の特異な設定(アンデッドの不死、ワームのクロックアップ、ミラーモンスターの現実世界での活動時間制限、大半の怪人が持つ人化能力など)について触れられておらず、それぞれが武器を手にして戦うのみである。
本編中では特に明言されていないが、公式解説書などによれば、ショッカーおよびゲルショッカー出身の怪人であるジャガーマン、シオマネキング、ガニコウモルが大幹部の下位に位置する「幹部」になっており、この3名が他のネオ生命体ドラス以下の平成シリーズ出身の怪人たちを直接指揮するという形態で活動している。
戦闘員
かつてショッカー骨戦闘員と呼称されていた外見の戦闘員が、「大ショッカー戦闘員」として登場する。大ショッカー戦闘員は、ショッカー戦闘員の生き残りが大ショッカーによって新たな能力を加えられたもので、武器の短剣には大ショッカーの紋章が書かれている。
肉体が爆弾化されており、地上での集団行動の他、足裏からの噴射でミサイルのように特攻する戦法も見せる。この大ショッカー戦闘員の他に、デストロン戦闘員も追加参戦していた。
登場する仮面ライダー
仮面ライダー1号(声・稲田徹)、仮面ライダー2号(声・藤本たかひろ)、仮面ライダーV3(声・田中大文)、ライダーマン(セリフなし)、仮面ライダーX(声・鈴村健一)、仮面ライダーアマゾン(声・関智一)、仮面ライダーストロンガー(セリフなし)、スカイライダー(セリフなし)、仮面ライダースーパー1(声・根本幸多)、仮面ライダーZX(声・吉野正裕)、仮面ライダーBLACK & BLACK RX(演・倉田てつを)、仮面ライダーシン(セリフなし)、仮面ライダーZO(セリフなし)、仮面ライダーJ(声・根本幸多)、仮面ライダークウガ、仮面ライダーアギト(演・賀集利樹)、仮面ライダー龍騎(セリフなし)、仮面ライダー王蛇(声・萩野崇 『仮面ライダー龍騎』より)、仮面ライダーファイズ(セリフなし)、仮面ライダーブレイド(セリフなし)、仮面ライダー響鬼(セリフなし)、仮面ライダーカブト(セリフなし)、仮面ライダーキックホッパー(声・徳山秀典 『仮面ライダーカブト』より)、仮面ライダー電王(声・関俊彦)、仮面ライダーキバ(セリフなし)、仮面ライダーイクサ(声・丹野宜政 『仮面ライダーキバ』より)、仮面ライダーディケイド、仮面ライダーディエンド、仮面ライダーW(声・桐山漣&菅田将暉)
……以上、昭和ライダー15名、平成ライダー11名、平成サブライダー4名、合計30名
主なスタッフ
監督 …… 金田 治(60歳)
脚本 …… 米村 正二(45歳)
音楽 …… 鳴瀬 シュウヘイ、中川 幸太郎(40歳)
特撮監督 …… 佛田 洋(47歳)
アクション監督 …… 宮崎 剛(46歳)
撮影 …… いのくま まさお(69歳)
ライダーマンデザイン …… 雨宮 慶太(50歳)
キングダークデザイン …… 出渕 裕(50歳)
ビシュムデザイン …… 竹田 団吾(47歳)
キャラクター造形 …… レインボー造型企画(昭和ライダー)、ブレンドマスター(平成ライダー)
主題歌
『 The Next Decade 』(歌唱・GACKT )
映画『仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』は、特撮 TVドラマシリーズ『仮面ライダー』シリーズの第19作『仮面ライダーディケイド』の劇場版作品。
『侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』と同時上映。キャッチコピーは「時空を超えて、集結せよ。究極のヒーロームービー誕生!!」、「オールライダー大決戦!」。
「平成仮面ライダーシリーズ10周年記念」・「平成仮面ライダーシリーズ10作品記念作品」にして、同時に TVシリーズの放送開始と共に始まった「平成仮面ライダー10周年プロジェクト」の第2弾「平成仮面ライダー10th 夏の陣」という位置付けでもある。
本作品は、TVシリーズ『仮面ライダーディケイド』のクロスオーバー要素を更に拡大させ、クウガからキバまでの平成仮面ライダーのみに留まらず、1号から BLACK RXまでの昭和仮面ライダー、Vシネマや映画という形式で活躍したシン・ZO・J、次回作の Wを含めた「オールライダー」が一堂に会する作品である。ただし、主役以外のサブキャラクター扱いとなる仮面ライダーの一部は登場しない。この「仮面ライダー全員集合」というシチュエーションは、TVシリーズ第9作『仮面ライダー BLACK RX 』(1988~89年)以来である。
タイトルは、1972年に公開された仮面ライダーシリーズ初のオリジナル映画『仮面ライダー対ショッカー』を踏襲したもので、タイトルロゴも当時のものを意識している。
平成仮面ライダーシリーズとして、過去にもアトラクションショーなどで「歴代ライダー全員集合」と銘打ったものは存在したが、正式な映像作品としては初となる。また ZX・クウガなど、一部の仮面ライダーは今作が映画初登場となった。
敵側には、歴代シリーズの悪の組織が結集した「大ショッカー」が登場。『仮面ライダー』の死神博士・地獄大使、『 X』のキングダーク、『 BLACK』の大神官ビシュム・シャドームーン、『 BLACK RX』のジャーク将軍を始めとする、歴代仮面ライダーと戦った各シリーズの怪人たちが多数登場している。今作オリジナルの怪人は登場しなかったが、一部のキャラクターは新規デザインとなった。
ゲスト俳優には、大杉漣・大浦龍宇一に加え、本作および TVシリーズの主題歌を担当する GACKTが出演。また、倉田てつを・賀集利樹を始めとするシリーズの過去の出演者も多数出演している。
本作品は TVシリーズ『仮面ライダーディケイド』の内容に直接つながる番外編という位置づけであったが、本作品のエンドロール後に、映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』の公開が発表され、TVシリーズの結末もこちらに続く形となった。
公式ムック『仮面ライダーディケイド RIDE THE DECADE 』(講談社)によれば、本作は「 TVシリーズの第29話(仮面ライダーアマゾンの世界編)と第30話(仮面ライダー大戦の世界編)との間に起こったエピソードと推測される。」と記されているが、実際には矛盾点も存在している。
本作は全国345スクリーンで公開され、2009年8月8・9日の初日2日間で興行収入約4億7千万円・動員約40万人を記録し、映画観客動員ランキングで初登場第1位を獲得した。これは、興行収入15億円を記録した映画『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』を上回るスタートであった。最終興行収入は19億円を記録し、2013年時点で仮面ライダー劇場版シリーズとしての最高記録を樹立した。
あらすじ
仮面ライダーディケイドこと門矢士(かどや・つかさ)が訪れた、「とある世界」。そこでは、なぜか士の撮った写真は像を歪めることがなかった。
そんな士の脳裏に、突然ある洋館が思い浮かぶ。士がわずかな記憶を頼りにその洋館にたどりつくと、そこには士の妹と名乗る少女・門矢小夜(さよ)が住んでおり、士はここが自分自身のかつていた世界だと確信する。
しかし、この世界でも「世界の崩壊」は進行していた。小夜に仕える若い執事・月影ノブヒコは、世界の崩壊の原因が各世界に生まれた仮面ライダーたちにあると語り、それを止めるためには、たった1人の「最強の仮面ライダー」を決めなくてはならないと告げる。それを聞いた士は、失われていた自分の記憶を取り戻し、「ライダートーナメント」の開催を決める。各世界を旅した士が橋渡しとなり、戦うライダーたち。
しかしその戦いの裏には、各世界の悪の組織により構成された巨大組織「大ショッカー」の陰謀が隠れていた。「ライダートーナメント」の決着とともに士と月影の挙動が怪しくなり、会場は崩壊。気絶したユウスケと夏海は、大ショッカー本部へと連行されてしまう。
夏海を追ってやってきた栄次郎は、突如として大ショッカーの大幹部の一人・死神博士に変身し、さらに士が現れて、本当の正体を明らかにする。士は、大ショッカーの大首領であり、各世界の仮面ライダーが引かれ合うことが原因で引き起こされる世界の崩壊を防ぐための、「ライダー討伐」が彼の真の目的だったのだ。
変貌した士たちに追われて、大ショッカー本部を脱出したユウスケと夏海は小夜の元へ向かう。しかし小夜は自身を置いて次元を超える旅に出て行った兄・士を深く恨んでおり、その憎しみから大ショッカー大幹部・大神官ビシュムへと覚醒を遂げていた。そしてユウスケもまた、小夜の持つ「地の石」の力によって「禁断の闇」をもたらす「仮面ライダークウガ・ライジングアルティメット」へと強制覚醒。優しい心を失いビシュムの操り人形と化してしまう。残された夏海は、士を信じた自分の判断は誤りだったのかと自問自答し、彼に憎悪を抱いてしまう。
自らの目的を果たし、居場所をようやく得たはずの士であったが、世界の崩壊は止まらない。実は、世界の崩壊の原因がライダーたちであるというのは偽りであり、士の世界を渡る力を利用して大ショッカーが各世界に侵攻するための「橋」を作るのが、大ショッカーの真の目的であった。そして各世界のライダーが倒された以上、もはや士の利用価値はなくなっていた。月影と小夜に大首領の座を奪われ、大ショッカー基地より追放される士。何とか元の世界に戻ってこれたものの、光写真館もまた、夏海からの罵倒を受けて拒絶されてしまう。すでに大ショッカーでの地位を奪われた士にとって、もはや大切な仲間や居場所、そして目的はなくなっていた。絶望した士は、いずこへとなく姿を消してしまう。
その後、ライダートーナメントにより各世界のライダーはほぼ絶滅。目論見どおりに邪魔者であるライダーたちを消し去った大ショッカーは、各世界へ侵攻を始める。光写真館も大ショッカーの侵略により破壊され、行き場を失った夏海は大ショッカーの攻撃から逃れるため、鳴滝と仮面ライダーディエンドこと海東大樹の助力を得てさまざまな世界を逃亡し続けるが、ついに追い詰められてしまう。
そのころ、仲間も居場所も目的も失い自暴自棄となった士の前に、謎の男・結城丈二が現れる。彼は士を心から信頼し敬愛していたものの、大ショッカーのやり方に反発し、それに激怒した士との戦いに敗れて大ショッカーから追放され、憎悪を抱き、長年に渡り士を抹殺するために何年も各世界を旅をし、ついに彼を見つけたのだった。結城は士の命を奪おうとするが、生きる力を失った士に失望して叱咤し、そして許す。彼は士を絶望から目覚めさせ、その場を去った。
結城との再会をきっかけに、士は大ショッカーとの戦いを決意。大ショッカーに襲われた夏海とディエンドを救う。しかし、いまだに士と打ち解けられない夏海の憎悪は薄れぬままであり、信頼は壊れたままであった。そこへ再び無数の怪人軍団が襲いかかり、ディケイドとディエンドは応戦するが、たった2人だけでは太刀打ちできず、劣勢に追い込まれてしまう。
しかしその時、次元の道が開き、復活した各世界のライダーたちが世界の壁を超えて集結した。
主な登場人物
門矢 士(かどや つかさ) / 仮面ライダーディケイド …… 井上 正大(20歳)
本シリーズの主人公。仮面ライダーディケイドに変身する青年。20歳。一人称は「俺」。写真家を自称し、ピンク色の二眼レフのトイカメラを常に身につけている。クールかつ自信家で、誰に対しても尊大な態度で接し、傲岸不遜な態度を取ることが多い。
光夏海らの住む街にふらりと現れ、夏海の祖父・光栄次郎の経営する光写真館で働きながら居候しているが、それ以前の素性は不明で、本人にも記憶が無い。決めゼリフは、「通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておけ!」。難しい話は「大体わかった。」という口癖ですませる。ナマコが苦手。生身でも敵怪人と対等に渡り合えるほど身体能力が高く、バイオリン演奏やスポーツなどといったあらゆる物事をそつなくこなすが、彼が撮った写真はなぜか被写体が歪んで写ってしまう。記憶を失ってはいるが、9つの異世界に関する知識や変身後の戦い方などを断片的ながらも覚えているため、戦闘の渦中にあっても動揺したり取り乱すことはほとんどない。
物語の序盤で、自分が全ての仮面ライダーを破壊する存在であること、そして世界の消滅を防ぐために旅をしなければならないことを告げられる。旅する世界のどこかで自分の本来いた世界が見つかるかもしれないと考え、旅を続ける。
鳴滝や訪れた世界のライダーからは「破壊者」や「悪魔」などと忌み嫌われ、時折自身も皮肉で自称することもある。また、全ての世界を救おうという意思はあるのだが、意図しなくとも訪れた世界が自分の存在で崩壊することを知り、苦悩する。しかし、旅を続ける内に、そうした自分を受け入れてくれる夏海を大切に思うようになる。
本作では、ついに自分が生まれた世界にたどり着き、妹の小夜と再会して記憶を取り戻す。そして世界の崩壊を止めるため、最強の仮面ライダーを決める「ライダートーナメント」を開催する。
光 夏海(ひかり なつみ)…… 森 カンナ(21歳)
本シリーズのヒロイン。祖父・光栄次郎の経営する光写真館で受付係をしている女性。20歳。一人称は「私」。本来は仮面ライダーのいなかった「夏海の世界」の出身。誰に対しても敬語で話し、他人の首筋にある「笑いのツボ」を押すことで相手を否応無しに大笑いさせる、光家秘伝の特技を持つ。士からは「ナツミカン」とも呼ばれる。
以前から、大勢の仮面ライダーたちがディケイドに倒される夢をよく見ており、士が変身したディケイドに警戒心を抱いていた。士が多くの別次元の世界を旅していることを知り、自分の夢に対する不安からその旅に同行する。たびたび鳴滝から接触を受けてディケイドの危険性を訴えられているが、自身は士の優しさを信じており、あらゆる世界から迫害を受ける士の「帰る場所」になりたいと願うようになる。
本作では、大ショッカーの襲撃を受けて海東大樹とともに逃亡する。
海東 大樹(かいとう だいき) / 仮面ライダーディエンド …… 戸谷 公人(19歳)
仮面ライダーディエンドに変身する青年。一人称は「僕」。本来は他に仮面ライダーのいなかった「仮面ライダーディエンドの世界」の出身。様々な世界を単独で往来し、「僕の旅の行き先は、僕が決める。」という信念のもとに、価値のある「お宝」と判断した物を収集している、孤高のトレジャーハンターである。
感傷に浸ることなく「お宝」にのみ価値を見出すドライな性格。料理の腕前が達者で、よく指鉄砲で他人に狙いを定めるしぐさをする。「~(し)たまえ。」が口癖。
ディエンドライバーを入手して士たちよりも先に異世界を渡り歩いていた様子で、異世界の事象にも詳しい。本人は、士とは古い知り合いだと語る。鳴滝とも面識がある。口の悪さは天下一品で、他人から誤解を招きやすい。
士たちとの馴れ合いや人づきあいが苦手で別行動を取り、目的の相違から彼らの旅を妨害することもしばしばである。当初は興味本位から士と共闘することが多かったが、シリーズ終盤では士に助言したり気にかける行動を見せており、士たちが大切な仲間であることを自覚するようになる。
本作では、ライダーたちの宝を手に入れるために「ライダートーナメント」に参加。劇中では仮面ライダーアマゾンの「ギギの腕輪」を手に入れていた。士とユウスケと共に決勝戦まで勝ち進むも、決勝戦では自ら退場。その後、戦闘員に化けて大ショッカーから夏海を助け、士や他のライダーたちと共に大ショッカーに立ち向かい、ギギの腕輪をアマゾンに返した。また劇中で、ディエンドライバーが大ショッカーから盗んだ物であることを明かしている。
小野寺 ユウスケ / 仮面ライダークウガ …… 村井 良大(21歳)
ディケイドを倒すという目的を抱く鳴滝から変身ベルト・アークルを託され、仮面ライダークウガに変身する能力を得た青年。一人称は「俺」。「仮面ライダークウガの世界」の出身。最初は尊大な態度をとる士に食ってかかったが、共闘を経て友情を築き、強い信頼を寄せるようになる。
「クウガの世界」にてディケイドとの共闘でグロンギ族を壊滅させた後、キバーラによって「仮面ライダーキバの世界」に連れて来られ、士たちと合流して異世界を巡る旅に同行する。主に情報収集などで士をサポートする。
本作では、大ショッカー大幹部の大神官ビシュムに操られてライジングアルティメットに変身し、ディケイドに襲いかかる。
鳴滝(なるたき)…… 奥田 達士(41歳)
「預言者」を自称する壮年の男で、ディケイドが遭遇する事件における黒幕的存在。眼鏡にコート、フェルト帽が特徴。ディケイドと大ショッカーをともに敵視し、特にディケイドに対しては「世界の崩壊を防ぐ」という名目でことあるごとに激しい憎悪を口にするが、その真意は不明である。ディケイドやディエンドのようにドライバーを持ってはいないが、自ら様々な世界を往来することができる。
士たちの行く先々の世界で、ディケイドが世界の破壊者であると他のライダーたちに吹き込んで抹殺を教唆したり、別世界から召喚したライダーや怪人を刺客として差し向けたりするなど、目的のためならば手段を選ばず、混乱を巻き起こし続けている。また、夏海にも接触してディケイドを止めるようにそそのかす。
本作では引き続いてディケイドと敵対しつつも、夏海と大樹の大ショッカーの追っ手からの逃亡を手助けする。
キバーラ …… 沢城 みゆき(24歳 声を担当)
翼長11.5cm ほどの、キバット族の白いコウモリ型モンスター。一人称は「私」。仮面ライダーに変身する者に噛みつくことで、その能力を強化させる。
普段は明るい性格を装っているが、ときおり冷酷な一面を覗かせる。鳴滝に加担しており、彼と同様に次元に干渉して他者を異世界に送る特殊能力を持つ。「仮面ライダーキバの世界編」後は、スパイ活動を行うために士たちに同行している。
門矢 小夜(かどや さよ)…… 荒井 萌(14歳)
士の5歳年下の妹。1年前から異世界を巡る旅に出た士の帰りを待っていた。10年前に両親を亡くしてから屋敷に引きこもるようになるが、内心に秘めていた「外へ出たい」という思いによって、次元の扉を開く特殊能力を身につけていた。兄を思う一方で、置いていかれたことによる恨みの念もあり、その思いを月影に利用される。
大神官ビシュム
門矢小夜が大ショッカーの大幹部として目覚めた姿。原典の『仮面ライダー BLACK 』(1987~88年)同様に白いローブを身につけているが、右顔のメイクがない、翼竜の大怪人に変身できないなど、原典と異なる部分が多い。
月影 ノブヒコ / 創世王シャドームーン …… 大浦 龍宇一(40歳)
「仮面ライダーディケイドの世界」に存在する、門矢家に仕える執事。TVシリーズ『仮面ライダー BLACK 』や『 RX 』でシャドームーンに変身していた秋月信彦とは別人である。
かつてのシャドームーンとは異なり、「世紀王」でなくゴルゴムの支配者である「創世王」を名乗っていることから、おそらく仮面ライダーBLACK に勝利して、創世王の座についた別世界のシャドームーンである可能性が高い。サタンサーベルや「シャドービーム」を武器にする。
大ショッカーの計画を進めるために、異世界を渡る能力を持つ門矢士を大ショッカーの大首領に仕立て上げ、「世界の消滅を止めるために仮面ライダーを討伐する」として、士に仮面ライダーディケイドの能力を与えて旅させた。その後、士が「ディケイドの世界」に戻り、大ショッカー大首領としての記憶を取り戻すと、士の妹である門矢小夜を、自分を置いてきぼりした士への彼女の恨みを利用して大神官ビシュムに覚醒させ、士を退けて、自らの「創世王」としての正体を現し、大ショッカー大首領の座に就く。この際に、大ショッカー大幹部である死神博士やジャーク将軍が大首領だったはずの士を躊躇なく追放していることから、シャドームーンの大首領就任は、最初から計算されていたことだったと推測される。
最終決戦では、ディケイドとクウガ・ライジングアルティメットの2人と同時に戦い、創世王の名に恥じない圧倒的な強さを見せる。だが、突如として参戦した仮面ライダーW の攻撃法に対応できず翻弄され、最後は大ショッカー基地の壁面に打ち付けられたところを、ディケイド率いるライダーたちによる「オールライダーキック」を大ショッカー基地もろともその身に受けて敗れた。
結城 丈二 …… GACKT(36歳)
「仮面ライダーディケイドの世界」の戦士。かつて『仮面ライダーV3』(1973~74年)に登場した結城丈二とは、名前は同じだが別人。元は大ショッカーの科学者だったが、組織を裏切って大首領(門矢士)に右腕を奪われたうえに追放されてしまったことで、大ショッカーと士に対する復讐を誓い、たった一人で戦いを続けている。右腕が義手になっており、鉄柱をたやすく折り曲げるほどの強度を誇る。また、ビーム砲アタッチメント「ブラスターアーム」に換装して戦うことも可能。
当初はブラスターアームのほかに、本作オリジナルのレザースーツとサングラスを身に着けた姿で新たな「ライダーマン」として登場する予定だったが、撮影スケジュールの関係で、映像化されたのはブラスターアームのみとなった。
本作で昭和・平成の仮面ライダーが一同に集結する際には、『 V3』に出演した際と同じデザインのライダーマンも別に登場しており、大ショッカーやデストロンの戦闘員を倒している。金田治監督によると、当初の予定では GACKT演じる結城丈二の存在があるため、昭和版のライダーマンの活躍はなかったが、やはり見せ場を用意する必要があるだろうと後から撮り足したという。
本作の主題歌『 The Next Decade 』のプロモーションビデオは、本作の前日談になっており、結城丈二がある人物を探すという内容で、映画本編では見られなかった戦闘シーンやブラスターアームの発射シーン、バイク搭乗シーンを観ることができる。
光 栄次郎 / 死神博士 …… 石橋 蓮司(68歳)
ショッカー(1971~72年)出身の大幹部。自称「怪人作りの名人」。原典とは異なり、髪が肩まで伸びた白髪になっている。その正体は、『ディケイド』に登場する光夏海の祖父・光栄次郎が、突如現れた黒マントを身に包まれたことで変身した姿。
ただし、死神博士が爆死した後も、エンディングで栄次郎は何事もなかったかのように写真館に戻っていた。
イカデビル
死神博士自身の怪人態にして、博士の最高傑作でもある。武器は伸縮自在のムチ・全身から発射する「イカ爆弾」を武器とする。
最終決戦でディケイド、ディエンド、電王、ファイズ、ブレイド、キバの6人を同時に相手にするも、ファイナルフォームライドによる6人の合体攻撃を受けて爆死した。
地獄大使 …… 大杉 漣(57歳)
ショッカー出身の大幹部。死神博士とともに怪人軍団の指揮を執る。気性は荒いが組織への忠誠心は厚い。全身ゴールドの原典とは違って鎧の色が黒になっており、兜とベルトの紋章が大ショッカーのものになっている。
ガラガランダ
地獄大師が変身した怪人態。右手のムチを自在に伸ばして相手を攻撃する。
最終決戦で1号・2号・BLACK RX・カブトの4人を同時に相手にするも、RX・カブトの合体攻撃で怯んだところに1号・2号の「ライダーダブルキック」を受け、「偉大なる大ショッカー、大万歳!」と絶叫しながら爆死した。
キングダーク
身長42メートル、重量1500トン
大ショッカー基地の地下にある「大首領の間」に眠っていた巨大ロボットで、GOD機関(1974年)出身の大幹部。
本作の最後に登場する大幹部にして、「大ショッカーの秘密兵器」とも呼ばれており、大幹部としてだけでなく巨大兵器としての側面も持つ。原典では体内に操縦者がいたが、本作では自我を持って動いている。
大ショッカー基地の崩壊後にその巨大な姿を現し、オールライダーとディエンドが召喚した仮面ライダーJ を圧倒した。
大ショッカー
各世界の仮面ライダーたちが戦ってきた悪の組織が大同団結して結成された、巨大な秘密結社。TVシリーズで語られた「世界を繋ぐ橋」を利用しての全世界征服と仮面ライダーの抹殺を目的としており、ライダートーナメントによってライダーの同志討ちを図る。各世界を渡り、その世界で活動している悪の組織を傘下に入れることで勢力を拡大させていた。
本作品の公開に先駆けて、TVシリーズでも終盤(7月放送の「仮面ライダー BLACK RX の世界編」)から登場し、アポロガイストを中心に暗躍している。ライダートーナメント終了後、本格的な全世界への侵攻を開始するが、ディケイドをはじめとするオールライダーたちの活躍によって、野望を阻止された。ただし、TVシリーズではアポロガイストとソーンファンガイア(『仮面ライダーキバ』)が「ライダー大戦の世界編」において、アンデッド(『仮面ライダーブレイド』)とファンガイアを中心とした部隊を率いて活動を続けているため、大ショッカー自体は縮小しつつも壊滅はしていないということになる。
組織の紋章は双頭の鷲で、「 DCD(ディケイド)」の文字が刻まれている。なぜか「大ショッカーオリジナル」という銘柄のビールが存在し、死神博士と地獄大使が仲良く飲んでいる。
大首領 / 創世王
大ショッカーの頂点に立つ存在。その正体は仮面ライダーディケイドこと門矢士で、「世界を崩壊から救うため、その原因となっている仮面ライダーを排除し、大ショッカーによる全世界の統治・支配を行う」という名目の元に、ライダー討伐の旅を続けていた。
ディケイドライバーやライドブッカー、ディエンドライバーなども、もともとは大ショッカーが大首領のために開発した物だった。組織の紋章に刻まれた「 DCD 」の文字も、ディケイドが大首領であることを示している。
しかし実際は、士の世界を渡る特殊能力に目をつけた大ショッカーが、それを利用するために士を騙して大首領にまつりあげていただけで、士が用済みになった後は、月影ことシャドームーンが「創世王」の名を帯びて大首領の座に就く。
本作の時点で大ショッカーを構成している大幹部は、死神博士、地獄大使、アポロガイスト、キングダーク、十面鬼ユム・キミル、大神官ビシュム、シャドームーン、ジャーク将軍(声・加藤精三)の8名。
怪人
怪人軍団や戦闘員は大幹部に指揮され、世界征服のための破壊活動を行う。ショッカーからファンガイアまで昭和・平成の様々な怪人たちによって構成されており、原典では首領・幹部クラスだった者もいるが、本作で幹部扱いとなっている怪人以外は戦闘員のような立ち位置であり、複数体で徒党を組んで活動する。本作では、ブラックサタンとデルザー軍団、ネオショッカー、ドグマとジンドグマ、バダンは加入していない。
オリジナルの種族の特異な設定(アンデッドの不死、ワームのクロックアップ、ミラーモンスターの現実世界での活動時間制限、大半の怪人が持つ人化能力など)について触れられておらず、それぞれが武器を手にして戦うのみである。
本編中では特に明言されていないが、公式解説書などによれば、ショッカーおよびゲルショッカー出身の怪人であるジャガーマン、シオマネキング、ガニコウモルが大幹部の下位に位置する「幹部」になっており、この3名が他のネオ生命体ドラス以下の平成シリーズ出身の怪人たちを直接指揮するという形態で活動している。
戦闘員
かつてショッカー骨戦闘員と呼称されていた外見の戦闘員が、「大ショッカー戦闘員」として登場する。大ショッカー戦闘員は、ショッカー戦闘員の生き残りが大ショッカーによって新たな能力を加えられたもので、武器の短剣には大ショッカーの紋章が書かれている。
肉体が爆弾化されており、地上での集団行動の他、足裏からの噴射でミサイルのように特攻する戦法も見せる。この大ショッカー戦闘員の他に、デストロン戦闘員も追加参戦していた。
登場する仮面ライダー
仮面ライダー1号(声・稲田徹)、仮面ライダー2号(声・藤本たかひろ)、仮面ライダーV3(声・田中大文)、ライダーマン(セリフなし)、仮面ライダーX(声・鈴村健一)、仮面ライダーアマゾン(声・関智一)、仮面ライダーストロンガー(セリフなし)、スカイライダー(セリフなし)、仮面ライダースーパー1(声・根本幸多)、仮面ライダーZX(声・吉野正裕)、仮面ライダーBLACK & BLACK RX(演・倉田てつを)、仮面ライダーシン(セリフなし)、仮面ライダーZO(セリフなし)、仮面ライダーJ(声・根本幸多)、仮面ライダークウガ、仮面ライダーアギト(演・賀集利樹)、仮面ライダー龍騎(セリフなし)、仮面ライダー王蛇(声・萩野崇 『仮面ライダー龍騎』より)、仮面ライダーファイズ(セリフなし)、仮面ライダーブレイド(セリフなし)、仮面ライダー響鬼(セリフなし)、仮面ライダーカブト(セリフなし)、仮面ライダーキックホッパー(声・徳山秀典 『仮面ライダーカブト』より)、仮面ライダー電王(声・関俊彦)、仮面ライダーキバ(セリフなし)、仮面ライダーイクサ(声・丹野宜政 『仮面ライダーキバ』より)、仮面ライダーディケイド、仮面ライダーディエンド、仮面ライダーW(声・桐山漣&菅田将暉)
……以上、昭和ライダー15名、平成ライダー11名、平成サブライダー4名、合計30名
主なスタッフ
監督 …… 金田 治(60歳)
脚本 …… 米村 正二(45歳)
音楽 …… 鳴瀬 シュウヘイ、中川 幸太郎(40歳)
特撮監督 …… 佛田 洋(47歳)
アクション監督 …… 宮崎 剛(46歳)
撮影 …… いのくま まさお(69歳)
ライダーマンデザイン …… 雨宮 慶太(50歳)
キングダークデザイン …… 出渕 裕(50歳)
ビシュムデザイン …… 竹田 団吾(47歳)
キャラクター造形 …… レインボー造型企画(昭和ライダー)、ブレンドマスター(平成ライダー)
主題歌
『 The Next Decade 』(歌唱・GACKT )