4〜6月期はプラス成長の持続が確実視されるが、長引く物価高で個人消費は伸び悩む
この記事のポイント】
・4〜6月期のGDP速報値は日本経済の節目のひとつになる
・プラス成長の持続は確実な半面、個人消費は伸び悩む
・世界経済が後退局面に入れば、外需頼みの成長は崩れる
内閣府が15日に発表する2023年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は日本経済の強さをどうみるかの大きな節目のひとつとなる。プラス成長の持続が確実視されるものの、長引く物価高で個人消費は伸び悩む。輸入の減少が全体を押し上げる効果も大きく、安定成長には不安を残す。
日本経済研究センターが9日まとめた民間エコノミスト36人の経済見通し「ESPフォーキャスト調査」によると、4〜6月期の平均予測は物価変動の影響を除いた実質で前期比年率2.4%増となった。遡及改定をしても前の2四半期がプラス成長のままなら、3四半期連続のプラスとなる。
米国は4〜6月期に2.4%増、ユーロ圏は1.1%増で、予測通りであれば日本はそれなりに強い数字になる。ポイントはその強さが本物なのかという点だ。
23年1〜3月期は前期比年率2.7%増だった。個人消費が前期比0.5%増と4四半期連続のプラス、設備投資が1.4%増と2四半期ぶりのプラスとなった。輸出は半導体市場の悪化などを受けて4.2%減だった。
内需の寄与度がプラス1.0ポイントとなり、四半期の実質成長率(0.7%増)をけん引した。輸出から輸入を差し引いた外需の寄与度はマイナス0.3ポイントだった。
4〜6月期は前期とは主役が交代し、外需主導のプラス成長となる見込みだ。半導体の供給制約の緩和が進んだ自動車がけん引し、インバウンド(訪日外国人)消費の回復もあり、輸出の予測平均は前期比2.3%増の見通しとなった。
モノやサービスを海外に売る力は一定の伸びを示すが、買う力は弱い。輸入の予測平均は前期比0.7%減となった。輸入の減少はGDPの押し上げ要因となる。
前期は堅調だった内需も勢いを欠く。GDPの過半を占める個人消費の予測平均は前期比0.1%増で小幅増加にとどまる。新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要の一巡で洗濯機など家電は弱含み、堅調な新車販売による押し上げは限定的だ。
設備投資の予測平均は0.4%増の見通し。企業の設備投資意欲は引き続き高いものの、1〜3月期の反動で伸びは縮まる。
第一生命経済研究所の新家義貴氏は「成長率は高いとはいえ、喜べる内容ではない」と説明する。物価高の影響で食品などモノの消費が弱い。サービス消費もコロナ禍からの正常化で期待されていたほど強くない。輸入の減少も「内需の弱さの裏返しだろう」と指摘する。
他の統計からも同様の動きがうかがえる。
総務省が8日発表した6月の家計調査では2人以上の世帯の消費支出が実質で前年同月比4.2%減り、4カ月連続のマイナスだった。食料は3.9%減で9カ月連続のマイナスとなっている。外食は5月の6.7%増から1.8%増に伸び幅が縮んだ。
物価高による賃金の目減りが消費を押し下げた。6月の実質賃金は前年同月比1.6%減った。5月の0.9%減から減少率が拡大し、15カ月連続のマイナスだった。
米国では景気後退を回避しながらインフレを沈静化させる「ソフトランディング(軟着陸)」のシナリオが強まる一方で、複数の地銀の信用格付けが下がり、金融不安が再燃するリスクもある。インフレが収まらない欧州や、需要不足によるデフレ懸念が台頭する中国にもリスクの芽がみえる。
世界経済が後退局面に入れば、外需頼みの成長は崩れる。政府がかかげる物価と賃金の好循環を実現し、内需を拡大できるかが成長の持続力を左右する。
(広瀬洋平)
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