握手を交わすウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(左)と
イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相(16日、キーウ)
イギリスのデイヴィッド・キャメロン新外相が16日、初の外遊先としてウクライナを訪問し、首都キーウでウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。
キャメロン外相はウクライナへの支援を強調し、「どれだけ長くなろうと(中略)倫理的、外交的、そして何よりも軍事的支援(中略)」を続けると約束した。
ゼレンスキー大統領は、キャメロン氏の外相就任を祝福し、イギリスの継続的な支援に感謝した。
2010年から2016年までイギリス首相を務めていたキャメロン氏は今月13日、リシ・スーナク首相の内閣改造に伴い、外相として7年ぶりに政界に復帰した。
ゼレンスキー氏は、中東情勢に言及し、「世界中がウクライナの戦場の状況以外にも注目している今、優先事項が分散することは助けにならない」と話した。
そのうえで、「我々はイギリスからウクライナへの惜しみない支援に感謝している。イギリスがウクライナ市民を受け入れてくれていることに感謝している。あなたがウクライナに来てくれてうれしい」と述べた。
ゼレンスキー氏はソーシャルメディアに短い動画を投稿。その中でキャメロン氏は、「(ウクライナを)最初の訪問先にしたかった」と話している。
「この場で申し上げたいのは、我々は今年と来年だけでなく、どれだけ長くなろうと、あなた方が必要とする道徳的、外交的、経済的、そして何よりも軍事的支援を続けるということだ」と、キャメロン氏は発言。
「ボリス・ジョンソン(元英首相)とは40年来の知り合いで、いくつかの相違はあったものの、ウクライナへの支援は彼の政権が行った最善の行いだ」と続けた。
ウクライナ外務省によると、ゼレンスキー氏とキャメロン氏は兵器、武器製造、黒海における安全保障について協議した。
会談後に発表した声明でキャメロン氏は、「冬が迫る中、我々はプーチンの不法な侵略に抵抗するウクライナの人々の味方であり続ける。ウクライナの人々はこの3カ月で、黒海でロシア軍を押し戻し、ウクライナ経済と世界の食料供給にとって重要な海の貿易回廊を開いた」と述べた。
キャメロン氏の訪問直前の15日、ウクライナのアンドリー・イェルマク大統領首席補佐官は、ロシア軍が占領してきた南部ヘルソン州のドニプロ川東岸にウクライナ軍が足場を築いたと、米シンクタンクに説明した。
アメリカの専門家らは、ドニプロ川から2キロメートル、ヘルソン市から30キロメートルの位置にあるクリンキー村で、ウクライナ軍がわずかに前進したと分析していた。
一方、ロシア側も15日、ウクライナ軍の「小グループ」が東岸のクリンキー村に拠点を構えたと認めた。
2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以降、イギリスはウクライナに数十億ポンド相当の軍事支援を行っている。
主力戦車である「チャレンジャー2」や長距離ミサイルを供与しているほか、イギリス国内でイギリス軍によるウクライナ兵の訓練も行っている。
BBC NEWS 2023.11.17 より引用
理化学研究所はスーパーコンピューター「富岳」で開発した創薬・材料開発ソフトを12月から大手クラウドの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で提供する。富岳と同じ環境を再現し、企業が秘匿したい先端研究に使いやすいようにして、利用の裾野を広げる。
富岳は企業が利用を申し出て、使う時間が与えられる仕組みのため、いつでも自由に使えるわけではない。税金を投じた施設のため、研究テーマのほか、場合によっては成果も公開されることから、企業が機密性の高い研究に使いにくかった。
クラウドで富岳と同じソフトを使えるようにして、利便性を高める。
12月からAWSで創薬や材料開発に使う分子動力学のソフトウエア「GENESIS」を提供する。
企業が使う際には、AWSの利用料と定額のサポート費用を払う。研究テーマやデータなどを外に出さずに、富岳を実際に使う場合と同じようにAWSで利用できる。
理研のグループ会社の理研数理(東京・千代田)が利用者への技術支援や富岳の利用にかかる申請や報告といったサポート業務などにあたる。理研数理は理研とJSOLの出資で設立された企業で、研究開発のコンサルティングなどを手掛ける。
理研は富岳で開発したソフトを様々なクラウドサービスやスーパーコンピューターを介して誰でも利用できるようにする「バーチャル富岳」構想を掲げている。
今回はその実質的な第1弾となる。様々なソフトを多様なクラウドサービスで利用できる基盤システムを整備し、2023年度中に初期版の立ち上げを目指す。自動車などの流体力学、気象予測といった様々な計算ソフトの提供を検討している。
企業は研究や事業の状況に合わせて富岳とクラウドサービスを使い分けることができるようになる。
研究で富岳を活用した成果をAWSに移行すれば、実用化に向けた取り組みを進めやすくなる。AWSで富岳のソフトを試し、本格的に計算をする場合には富岳を有償利用するという使い方もできる。富岳自体もクラウドを介して利用できるが、提供できる計算時間に限りがある。
理研とAWSジャパンは23年1月に覚書(MOU)を交わし、クラウド上で富岳のソフトを利用できるように研究開発を進めている。
AWSが富岳の半導体と互換性のある半導体を採用していることから、クラウドでのソフト提供が実現できるという。
【関連記事】
日経記事 2023.11.17より引用
パナソニックHDの楠見社長は「健康スマート住空間事業に期待している」
と述べた(6日、中国・上海市)
中国の景気回復が勢いを欠いている。日本企業の中には投資を縮小したり、競争激化で撤退を決めたりする企業も出てきた。
収益の3割弱を中国が占めるパナソニックホールディングス(HD)の楠見雄規社長に、足元の景況感や中国で事業を続ける意義を聞いた。
――中国の景況感をどのように分析していますか。
「情報通信関連が減速しており、関連する製造機器や電子部品が影響を受けているほか、直近は家電の市況も悪化している。
地方財政が悪化しているのも懸念材料だ。ただ、市況が悪化すれば中国の中央政府や地方政府は産業振興策などの政策を打ち出すだろう。そのため家電などは市況よりも、シェアの変化を注視している」
「電子部品は地場メーカーが力をつけている。中国企業と同じコストでつくれない理由は何なのか、改善の余地があるはずだ。競合に負けているところから学ばなければ、事業を継続する資格はない」
――中国事業の意義をどう捉えますか。
「中国では企業も社会も進化が速い。中国の競合企業は力をつければ当然、世界展開に乗り出すだろう。
つまり中国市場(での競争)から逃げることは、グローバル市場からの撤退を意味することになる。中国で求められるスピード、コストはグローバルで求められるスピード、コストになる」
中国上海市で開催された中国国際輸入博覧会に出展し、環境技術などを展示した(6日)
――中国で特に期待する事業はありますか。
「事業の大きさはまだ小さいが、家電や住宅設備などを組み合わせて住空間をワンストップで提供する『健康スマート住空間事業』に期待している。
不動産デベロッパーと組んで、江蘇省に高齢者向けの居住区(複数のマンション棟)を開発した」
「日本では空調や照明、住設がそれぞれ別々にマーケティングしている。中国では1つの窓口で(不動産デベロッパーなどの需要をくみ取りながら)製品を提案している。ワンストップの組織体制などは、日本でのこれからの事業にも参考になると思う。まだ事業としては小さいが、将来実を結ぶための第一歩を踏み出した」
――創業者の松下幸之助氏が鄧小平氏に近代化の手助けを約束したのが、中国事業の原点です。約45年たち、中国での役割は変化しましたか。
「(現在の)中国は近代化というより近未来化している。そのなかで(消費者の)心を豊かにしたり、もっとインテリジェントな方法で省エネルギーを進めてカーボンニュートラルに貢献したりしていきたい。
急速に変化する中国市場への対応を身につけた上で、我々の知見を盛り込むことに力を注ぎたい」
(聞き手は上海支局 若杉朋子)
日経記事 2023.11.17より引用
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大丈夫か???
パナソニックオートが開発を進める実験車両。乗員の健康状態をモニターに表示する
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズを米ファンドに売却することで合意したと発表した
。売上高が1兆円を超える子会社の売却で成長資金を確保し、電気自動車(EV)向け電池などの成長領域に重点投資する。低収益の事業を切り離し、パナソニックの事業の柱を外部から分かりやすくする狙いもある。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートが長期的な成長を実現するには「新しい資金調達の手段を確保しやすくすることが最善と判断した」とコメントした。
株式の売却後も「パナソニックグループの一員として社名やブランドは残す」としている。
パナソニックオートは自動車向けの電子部品や車載充電器事業などを手掛ける。
2022年度の売上高は1兆2975億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は777億円。パナソニックHDは売却する株式の比率を50〜80%の間で今後詰めるが、売却額は数千億円とみられる。
あるアナリストはパナソニックオートの企業価値について「6000億〜7000億円ではないか」と語る。
パナソニックオートは運転席周りのパネルやハンドル周辺のスイッチ、カーナビなどを手がける
パナソニックHDはEV電池と、欧州向けヒートポンプ暖房などの空質空調、サプライチェーン(供給網)管理システムの計3事業を成長領域に位置づけている。
23年度の設備投資計画は7000億円。08年度の4944億円を上回り過去最高を更新する見通し。約半分にあたる3810億円は電池関連に充てる。
米インフレ抑制法(IRA)の追い風もあり、グループのなかで売上高営業利益率が段違いに高い電池事業(23年度の会社計画は12.8%)に集中投資する姿勢が鮮明だ。
一方で、22年度からの3年間の戦略投資枠(6000億円)は、米カンザス州に建設中の工場の建設費でほぼ使い切る見込み。
EV電池を巡る競争が激化するなか、パナソニックHD傘下の電池事業会社のパナソニックエナジーはカンザスに続く北米で3つめの工場を23年度に決める考えを明らかにしている。
大型投資を継続するには新たな資金調達が必要だが、自前で調達するのは簡単ではない。
パナソニックHDの9月末時点の長期負債は1兆1842億円と半年間で1割超増えた。財務基盤を損なわずに成長資金を手当てするため、主要子会社の売却を決めた面もある。
パナソニックオートは足元は自動車生産の回復で業績が上向いているものの、22年度の売上高営業利益率は1.2%にとどまり、過去には赤字のこともあった。
EV電池を重視しながら車部品を売却する経営判断は一見、矛盾するようにも映るが、パナソニックHDはかつてプラズマテレビを中心に周辺機器も売る総花的な経営戦略をとり、巨額の赤字を出した。
自動車関連では電池に経営資源を一極集中する経営方針は、過去の反省を踏まえたものだ。
岩井コスモ証券の清水範一シニアアナリストは17日の発表について「不採算事業にメスを入れ、投資を特定領域に集中していく姿勢を鮮明にした」と指摘する。
株式市場のなかには「車部品の売却は、構造改革の第1弾に過ぎない」(アナリスト)との見方もある。
別のアナリストは「住宅設備」や「(テレビなどの)黒物家電」は今後、売却あるいは他社との協業に動く可能性があるとみる。
パナソニックHDは、これまでも事業の売却・買収を繰り返してきた。
プラズマテレビ事業からの撤退を発表して屋台骨が揺らいでいた14年には、中核事業ではなかったパナソニックヘルスケアの株式を米投資ファンドのKKRに売却した。
M&A(合併・買収)では、11年に旧・三洋電機と旧・パナソニック電工を約8000億円を投じて完全子会社化した。重複事業をなくすため、三洋電機の洗濯機や家庭用冷蔵庫などの白物家電事業を中国・海爾集団(ハイアール)に売却したことでも話題になった。
17日の東京株式市場でパナソニックHDの株価は、午後2時の売却発表まで1420円台で推移していたが、発表直後には前日比7%高の1522円50銭まで急騰。終値は1497円だった。
パナソニックHDの楠見社長は「(事業)見直しの封印を解く」と語っていた
市場の期待に応え続けられるかどうかは「(23年度は事業)見直しの封印を解く」と語るパナソニックHDの楠見雄規社長が、スピード感をもって次の手を打ち出せるかにかかっている。