本を読むことが日常生活の中で大きなウェイトを占めてくるように
なって、ブログをはじめて投稿数が500近くになった、ということは
まあ500冊読んだことになるわけですが、その中で、まるで美味しい
料理を食べたときのような幸福感が読後におとずれる作品というのが
ありまして、今までに何作あったかなあ・・・
そんな、「ああ、美味しかった」と思える作品に、久しぶりに出会え
ました。
ハードカバーの表紙は、桜と菜の花が咲き誇っていて、その向こうに
無人駅。そして表紙の裏側は、ローカル線の車両が。よく見ると、
千葉のローカル線、小湊鉄道かいすみ鉄道の車両のようです。
読んでわかったのですが、最後の方に「小湊鉄道、飯給駅」とあり、
ああ、やっぱり当たってた、と嬉しくなりました。
といっても、この『小暮写眞館』は、電車がテーマというわけでは
ありません。物語の重要なキーではありますが。
主人公は高校生の花菱英一。この一家(花菱家)はちょっと、というか
だいぶ変わっていて、息子を名前の「英一」とは呼ばず、友達が呼ぶよう
に「花ちゃん」と呼びます(父母も弟も苗字は花菱なんだから皆「花ちゃん」
のはずなんですけど)。
そんな変わった一家が、引っ越します。場所は、客の来なくなって久しい
商店街の中にある写真館。もともと不動産屋では、土地の販売で上ものは
取り壊して新しい家を建ててもらうつもりだったのですが、なにせ”変わって
る”花菱家のお父さんとお母さんは、この写真館が気に入って、取り壊さず
にそのまま住むことに。
表通りに面した入口には「小暮写眞館」という字が。」そう、前の家主は
小暮さんという方。
これがまた住めばなんとやらで、なかなか面白くて(快適かどうかは別)
昔のスタジオだったところをリビングにして、記念写真を撮るときに使う
背景のスクロールもそのままあったりして、たまに出したり。
物語は4部構成になっていまして、第一話では、女の子が花菱家の前を
通ります。どうやら、おじいさんが亡くなって店じまいをした写真屋が
再オープンしたと勘違いし、英一にむかって突然「この写真のおかげで
困ってる」と一枚の写真を置いていきます。
なんでも、先日のフリーマーケットでアルバムを買ったら、その中に
「小暮写眞館」と書かれた封筒があり、中に知らない家族写真が入って
いて、そこには女の人が泣いてるような顔が・・・
うちは写真屋ではないし、下の持ち主つまり写真に写ってる家族に
返そうと不動産屋に聞いてみます。
そして、中学からの知り合いで同じ高校に通ってる友達のテンコ
(本名は店子(たなこ)ですが、あだ名がテンコ)とともに、この
謎の写真の出どころを探します。
商店街に古くから住むお年寄りに聞いて、なにやらこの一家は火事に
あって写真に写ってる何人か亡くなって、さらに新興宗教がどうの
こうの・・・
最終的に持ち主といいますか、心霊写真っぽく写ってる、泣き顔の
女の人に返すことができたのですが、どういうわけか、この一件を
写真を持ってきた女の子に報告したら、「心霊写真の謎を解明して
ほしい」という依頼が来るようになって、さながら心霊写真バスター
になってしまいます。
それが第二話「世界の縁側」、そして第三話「カモメの名前」と続き
ます。
”コゲパン”というあだ名の英一やテンコの同級生で甘味処の娘、
そして不動産屋のつっけんどんな女性社員の垣本も、栄一の”謎解き”
に絡んできて、恋に発展?みたいな展開になったりならなかったり・・・
ただの謎解きに終始せず、青春の悩みや怒り、そして花菱家にまつわる
話などが盛り込まれていて、それらが絶妙なバランスで配分されていて、
先述した「美味しい料理を食べたときの幸福感」とはまさにこのことで、
それぞれの素材がぶつかり合わず邪魔せずに見事にマッチしていますね。
素晴らしい作品を堪能させていただきました。
なって、ブログをはじめて投稿数が500近くになった、ということは
まあ500冊読んだことになるわけですが、その中で、まるで美味しい
料理を食べたときのような幸福感が読後におとずれる作品というのが
ありまして、今までに何作あったかなあ・・・
そんな、「ああ、美味しかった」と思える作品に、久しぶりに出会え
ました。
ハードカバーの表紙は、桜と菜の花が咲き誇っていて、その向こうに
無人駅。そして表紙の裏側は、ローカル線の車両が。よく見ると、
千葉のローカル線、小湊鉄道かいすみ鉄道の車両のようです。
読んでわかったのですが、最後の方に「小湊鉄道、飯給駅」とあり、
ああ、やっぱり当たってた、と嬉しくなりました。
といっても、この『小暮写眞館』は、電車がテーマというわけでは
ありません。物語の重要なキーではありますが。
主人公は高校生の花菱英一。この一家(花菱家)はちょっと、というか
だいぶ変わっていて、息子を名前の「英一」とは呼ばず、友達が呼ぶよう
に「花ちゃん」と呼びます(父母も弟も苗字は花菱なんだから皆「花ちゃん」
のはずなんですけど)。
そんな変わった一家が、引っ越します。場所は、客の来なくなって久しい
商店街の中にある写真館。もともと不動産屋では、土地の販売で上ものは
取り壊して新しい家を建ててもらうつもりだったのですが、なにせ”変わって
る”花菱家のお父さんとお母さんは、この写真館が気に入って、取り壊さず
にそのまま住むことに。
表通りに面した入口には「小暮写眞館」という字が。」そう、前の家主は
小暮さんという方。
これがまた住めばなんとやらで、なかなか面白くて(快適かどうかは別)
昔のスタジオだったところをリビングにして、記念写真を撮るときに使う
背景のスクロールもそのままあったりして、たまに出したり。
物語は4部構成になっていまして、第一話では、女の子が花菱家の前を
通ります。どうやら、おじいさんが亡くなって店じまいをした写真屋が
再オープンしたと勘違いし、英一にむかって突然「この写真のおかげで
困ってる」と一枚の写真を置いていきます。
なんでも、先日のフリーマーケットでアルバムを買ったら、その中に
「小暮写眞館」と書かれた封筒があり、中に知らない家族写真が入って
いて、そこには女の人が泣いてるような顔が・・・
うちは写真屋ではないし、下の持ち主つまり写真に写ってる家族に
返そうと不動産屋に聞いてみます。
そして、中学からの知り合いで同じ高校に通ってる友達のテンコ
(本名は店子(たなこ)ですが、あだ名がテンコ)とともに、この
謎の写真の出どころを探します。
商店街に古くから住むお年寄りに聞いて、なにやらこの一家は火事に
あって写真に写ってる何人か亡くなって、さらに新興宗教がどうの
こうの・・・
最終的に持ち主といいますか、心霊写真っぽく写ってる、泣き顔の
女の人に返すことができたのですが、どういうわけか、この一件を
写真を持ってきた女の子に報告したら、「心霊写真の謎を解明して
ほしい」という依頼が来るようになって、さながら心霊写真バスター
になってしまいます。
それが第二話「世界の縁側」、そして第三話「カモメの名前」と続き
ます。
”コゲパン”というあだ名の英一やテンコの同級生で甘味処の娘、
そして不動産屋のつっけんどんな女性社員の垣本も、栄一の”謎解き”
に絡んできて、恋に発展?みたいな展開になったりならなかったり・・・
ただの謎解きに終始せず、青春の悩みや怒り、そして花菱家にまつわる
話などが盛り込まれていて、それらが絶妙なバランスで配分されていて、
先述した「美味しい料理を食べたときの幸福感」とはまさにこのことで、
それぞれの素材がぶつかり合わず邪魔せずに見事にマッチしていますね。
素晴らしい作品を堪能させていただきました。
結構に厚い本だったけど、俺は読み終わるのが勿体ない気持ちになりました。
コメント&TBありがとうございます!
そうなんですよねー、いつまでも物語の世界観に浸っていたい気持ちにさせてくれる素晴らしい話でしたね☆