ドーナツがどうしても食べたくて、書店横のドーナツ屋へ行った。
ついでに書店にも立ち寄って帰ろうとすると駐車場で休んでいる猫がいた。
時間もあったし挨拶でもと思い近付くと、こっちを振り向きながら逃げる。
後を追うと、曲がった先の袋小路に「猫だまり」があった。一、二…五匹は居る。
ぎょっとした顔でこっちを見ている。間違えて入った会議室で一瞬注目を浴びた感じだ。
二匹逃げたが、暫く遠巻きに撮影していると後ろから声を掛けられた。
袋小路になった飲食店の裏口から出てきた店員さんだ。
「隣のお店が閉店になって夜逃げして、
その猫達はそのお店の方が飼っていたみたいやけど、そのまま置き去りなんよ。」
ここの猫達は皆、顔つきが野良化していて、飼い猫だった面影も既に無い。
白地に茶トラの『千代丸』は食いしん坊で、餌を見ると警戒しながらも近付いて来る。
『影虎』は黒ん坊で、目を開けていないとどこに居るのか判らない。
三毛の『母君』は少しでも他の猫達に近付こうものなら「シャーッ」と言って威嚇する怒りん坊だ。
人間だって、裏切られると敵意をむき出しにするだろう。
この猫達に近付くには相当な時間と根気が必要だ。
暫く「猫だまり」へは顔を出せずにいた。
久しぶりに行ってみると、一匹もいなくなっていた。
猫達のいなくなった袋小路は、ドーナツの穴の様に見えた。
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