路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

四丁目の夕日

2008-01-17 | 『小鉄』

『小鉄』が消えた。

師走に入り、急に寒くなったので、ねぐらから出て来るのがしんどいのかと思っていたら、

おばあちゃんも会っていないと言う。

優しい奴なので、寒くなったし迷惑を掛けまいと姿を消したのか、

可愛い雌猫を見付けて旅に出たのかもしれない。

出会った時から既に成猫、拾われる可能性は少ないが

不思議と愛嬌のある猫なので家猫に転身したのかもしれない。

川沿いで犬の散歩をする人達も皆、心配してくれていた。


一週間と一日目、夜遅くなった帰り道、納骨堂の裏で『小鉄』の名を呼んだ。

何の返事も無い。諦めて歩き出す。公園に差し掛かると後ろで声がした。

「ニャ~~ッニャ~~ッ!」

振り向くと暗がりの中、丸い背中が必死で私に向かって駆けて来る。

『小鉄』だ。

久し振りの再会に嬉しくて、膝に乗せてもみくちゃに撫でていると

『小鉄』の心配をしてくれていた犬の散歩のおじさんが通りかかり、

「やっと戻って来たね、小鉄がここに居らなみんな心配するやろ~」と、

『小鉄』の頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。


おじさんは私の名前も知らない。縁もゆかりも無い。

でも、犬の名前は『ムック』…これが普通で、これが日常。

私が知らない人達迄、何故か『小鉄』の名前は知っている。

ここ(川沿い)の噂は、インターネットよりもきっと、早い。


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コメント (2)
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