路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

再 会

2008-01-23 | 『影虎』

家路を急いでいた。

ネット接続の為、電話会社から書留郵便が送られて来る予定だったからだ。

明日には接続工事の人が来るので、今日の内にその書類が手元に無いと困る。

いつもならゆっくり猫の居る路地を散策しながら帰る所を、家まで最短距離で行ける道を選んだ。

少し小走りになっていた。

『小鉄』が居る納骨堂エリアから少しずれた川沿いを急ぐと、平屋の空き家が見える。

小さな庭とブロック塀にチェーンが架けてある。

その玄関先に猫の影が見えた。

大きい。 『影虎』だ。

久し振りの再会に嬉しくて、急いでいるのも忘れてしゃがみ込んで『影虎』を呼んだ。

「ニャ~ッ」と可愛い声で短く鳴いて、そっと近付いて来た。

やっぱり『影虎』だ。慌てて何か食べるものを探す。

「憶えていてくれたか?元気だったか?ご飯ちゃんと食べてるか?どうしてここに居る?」

口の利けない猫に、ついつい矢継ぎ早に質問攻めにしてしまのは

『影虎』は言葉を理解しているからだ。

相変わらず、「食べて良いよ」と言われないと口を付けない。

黙々とドンブリ飯をかき込む武士の姿に惚れ惚れしながら、

「拙者は道を急ぐ、又会う日迄、達者で居てくれ。」と、

頭をポンポン撫でて立ち上がった。




『影虎』を背後にしながら、急ぎ足で帰る途中

今日私が急いでここを通る事も、

何の為に急いでいるのかも、

『影虎』は全部知っていてあそこに座っていた様に思えた。


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