路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

独 立

2008-01-10 | 『茜』

仲睦まじい親子『茜』と『尚人』と『直人』にも、独り立ちの季節がやって来た。

『小鉄』が去ってからも公園に居続けた『茜』の事だから、

きっと『尚人』と『直人』がこの公園を去り、それぞれに新しい縄張りを作るのだろうと思っていた。

…が、公園を去ったのは『茜』だった。



猫の独り立ちは、厳しく非常にすら見えるライオンの崖落しにも似ている。

ある日突然やって来るからだ。

住み慣れた公園には、近所に住む猫好きの人達がこっそり置いていってくれる餌もある。

近くには川もあり、車にさえ気を付けて渡れば水場も近い。

猫にとっては安心して住める場所(好条件の縄張り)は財産、誰にも取られたくはない筈だ。

追い出そうとしても出て行かなかったから、自らが出て行っただけかもしれないが

「親心」という人間の主観で見たくもなる。


親を慕う子の心も、子を想う親の心も同じ。

鬼の様に突き放して置きながら、実は一番住み良い場所を子供に残して去る『茜』は、

したたかな優しさと、しなやかな強さを持った本当の母親だ。



「金」の為に親が子を殺し、「嫌いだから」と子が親を殺すこの時代。

私達に欠けているとても重要で、とても必要な何かを、

路地を行く猫が言葉なく教えてくれる。


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コメント (2)
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