路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

生きる

2008-01-12 | 『小鉄』
                (写真は『長老』…イメージです)


『小鉄』の所へ通う様になって八ヶ月が過ぎる。

雨だろうと台風だろうと毎日通った。

犬の散歩の人達ともいつの間にか顔見知りになってしまった。

川沿いの納骨堂の裏にはベンチがあり、散歩の途中に喫煙や休憩出来るスペースがある。

そこへいつも淋しそうなおばあちゃんが一人、煙草を吸いにやって来る。

「猫の名前は、何て言うと?」

「小鉄です。」

「そーね。小鉄ね。」

…こんなやりとりを何度か繰り返した。余り会話をするでもなく、猫と私の姿をずっと見ていた。

どうやら耳が遠いらしく、会話より同じ時間を共有するコミュニケーションを選ぶ事にした。



ある日、私がいつもの時間に行ってみると、

おばあちゃんが先に来ていて『小鉄』に猫缶をあげていた。

すっかりお腹一杯の『小鉄』は、その日を境に私の膝の上で寝るだけになった。

『小鉄』と私に出会ってから、以前より元気になったと、

おばあちゃんの御子息がわざわざ私にお礼を言いに来られた。

ひたむきに食べ、ひたむきに眠り、ひたむきに愛す。

三つの欲しか持たない小さな命だからこそ、

つかの間の触れ合いでも淋しさが癒されるのかもしれない。



「生きる意味」を問う必要はない。

食べ、眠り、愛する事が生きる力を与えてくれる事を、猫は知っている。



 ←出会いの不思議に、ポチっと応援お願いします。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする