翌檜の木がある公園には、四匹の猫がいる。
区別できない程そっくりさんの『白』が二匹と『黒』、
…その三匹の体の大きさの絵の具を混ぜて作った様な釜猫の『灰』。
白い猫は薄命と聞く。
飼い猫なら美しいのでちやほやされるが、野良ともなれば目立ち過ぎて生きにくいのかもしれない。
では、黒猫は長生きかと言うとそうでもないらしい。
ここの猫達の中で一番したたかで、常にご馳走にありつけるのは『灰』だ。
餌をくれそうな人の姿を見つけると、何処からともなく近付いて来るのはいつも『灰』で、
丸い目でじいっと見つめながら、鳴き声とも威嚇とも違う、
お腹の辺りから「ウ~ウ~ッ」と唸り声を響かせては念力で「ご飯!」と訴えてくる。
気迫に押されついついバックの中を探して手持ちの餌をあげていると、
『灰』が全て食べ終える頃に『白』と『黒』が匂いに気付いてやって来ても、餌は殆ど無い。
『灰』は、人との距離感が絶妙な猫なのだ。
餌を食べているからといって、触れさせない。
それに比べて『白』と『黒』は、始めから人に近付けないから、いつも餌にありつけないでいる。
この「翌檜公園」には猫の事務所でいじめに遭う、泣き虫の釜猫はいない。
明日は「檜」に成れないからだ。
善か悪か。時と場面で、明日には白にも黒にもどちらにも成り得る「灰」が、
本当は一番強いのかも知れない。
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