『小鉄』が再び姿を消したのは、川沿いで再会して三日後の事だった。
納骨堂の裏を通る度、『小鉄』の名を呼んでみた。
街頭の明かりに照らされたベンチの上には、
おばあちゃんが置いていってくれた、猫用の餌が淋しそうに盛られている。
おばあちゃんも『小鉄』には会えていない様子だ。
休日の明るい内に、近所を捜索していると、
犬の散歩のおばさんに声を掛けられた。
「小鉄にそっくりなのが家の近所でウロウロしとるよ。見においで。」
教えられた場所へ急ぐと、『小鉄』がそのおばさん宅の前でうずくまっていた。
私に気付くと罰の悪い顔をして近付いて来た。一応、安心した所で、帰る事にした。
次の日、再びおばさん宅へ行ってみると、
川沿い散歩の人達の噂を聞いておばあちゃん迄、『小鉄』を探しに来ていた。
腰の曲がったおばあちゃんがここまで来るのは大変だったろう。
でも何より『小鉄』が心配だったのかもしれない。
しかしその日、おばあちゃんも私も『小鉄』には会えなかった。
昨日の様子では、この家の外飼い猫にして貰っている様だったので、
もう捜す必要は無いのかもしれない。
夜遅い帰り道、 「翌檜公園」 (川沿いの納骨堂からかなり離れた場所)に差し掛かると
「ニャ~ッ!」と声がし、何故かここに居る筈の無い『小鉄』が現れた。
可笑しくて泣けてきた。
私の膝に乗り、直ぐに満足気に丸くなる『小鉄』…。
お前は私を捜してここ迄来たのか?
猫に口が利けるのならば一度、訊ねてみたい。
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