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路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

光と音

2008-01-16 | 『白・黒・灰』

夏の終わりに翌檜公園で猫と遊ぶ女性と出会った。

その後も何度か会う機会があり、お互いの事を話すうちに

今年の始めに事故で亡くした弟さんと私は同級生で、

小学時代に私の誕生会に来ていた事が分かった。

顔も思い出せない弟さんを何故覚えていたかと言うと…

プレゼントが「博多人形」だったからだ。

彼女のご両親は博多人形師で、誕生会に呼ばれた子供に持たせたのであろう、

数十年経った今でも実家にその人形はある。


ある日、その女性に誘われ、

趣味で姓名判断をしているという人と会う事になった。

誘ってくれたので行く事にしたが、大方の見当は付いていた。

悪い事を散々言った後に、解決の手助けの為と言ってお金を取るシステムだ。

勿論、私はお茶を濁して(断って)帰る事にした。

自らの離婚、両親との不仲、弟の事故死。

これだけの理由があれば何かにすがりたくもなるのだろう。

その姓名判断の教えによると、

「日」は男を、「月」は女を表し、男女が居る家は(明)るく、

「日」が二つ…つまり、男が二人居る家は(暗)くなると言う。

家に男女が居ても暗い家はいくらでもある。

不幸になれと悪く名付ける親はいない。

幸も不幸も、生きている以上、大なり小なり誰にでもある事だ。

何より、明るさに「光」を、暗の中に「音」を感じ取れない「心」は道を見失う。



もう秋になる。公園では、桜の木の燃える様に紅い落葉の山に、

『白』、『黒』、『灰』の猫達が飛び込んで遊ぶ姿が見える。

カサカサと渇いた音を楽しむ猫のダンスが、鮮やかで美しい。


                      (2007年11月 記)

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時 間

2008-01-14 | 『小鉄』

今の家へ越す前は、公団に住んでいた。

引越しの時にはいつも、

私の前と後にはどんな人がここに住むのだろう…と考える。

大抵会う事は出来ないが、不思議な縁で出会う事も希にはある。



『小鉄』に会う為、引越してからも前の家の近くの河原迄毎日通っていた。

『小鉄』と並んで座っていると、

「ここに居ったとね。ご飯持って来たよ。」と、年配の女性が声を掛けて来た。

『小鉄』も慣れた様子で近付いて行く。常連さんの様だ。

その後も何度か会う機会があり、

帰って行く後ろ姿を見送っていると、

私の前に住んでいた団地の部屋へと入って行った。

前原方面から御子息の嫁との折り合いが悪く、

追い出される形で一人ここへ越して来たが、

次は名古屋の御子息の所へと身を寄せる予定だそうだ。

名古屋で幸せに暮らせると良いが、慣れない土地では大変だろう。



映画「イルマーレ」では、時を超えた男女が、海の上に建つ美しい家を舞台に

手紙のやり取りをする。二人を繋ぐのは「不思議な郵便受」で、

私の場合は「猫」だった。

家族がいても孤独な人はいる。

私が出会ったのは、家庭を持つ事を選んだ未来の自分かもしれない。




時間は誰にも「平等」だが、時も猫も孤独な人には「対等」に接してくれる。

「特別な時間」を共に過ごせるからだ。




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プロローグでエピローグ

2008-01-13 | ★フォトログ
生まれて死ぬまでの間、

どれだけの人に出会えるだろう。

きっと、大した数じゃない。



生まれて死ぬまでの間、

どれだけの心を知るだろう。

きっと、ずっと、少ない。



それを見つめる猫がいる。

しなやかで、したたかで、

美しい瞳が路地にある。




その瞳は、優しくたおやかで、

厳しく、確かな命だ。


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生きる

2008-01-12 | 『小鉄』
                (写真は『長老』…イメージです)


『小鉄』の所へ通う様になって八ヶ月が過ぎる。

雨だろうと台風だろうと毎日通った。

犬の散歩の人達ともいつの間にか顔見知りになってしまった。

川沿いの納骨堂の裏にはベンチがあり、散歩の途中に喫煙や休憩出来るスペースがある。

そこへいつも淋しそうなおばあちゃんが一人、煙草を吸いにやって来る。

「猫の名前は、何て言うと?」

「小鉄です。」

「そーね。小鉄ね。」

…こんなやりとりを何度か繰り返した。余り会話をするでもなく、猫と私の姿をずっと見ていた。

どうやら耳が遠いらしく、会話より同じ時間を共有するコミュニケーションを選ぶ事にした。



ある日、私がいつもの時間に行ってみると、

おばあちゃんが先に来ていて『小鉄』に猫缶をあげていた。

すっかりお腹一杯の『小鉄』は、その日を境に私の膝の上で寝るだけになった。

『小鉄』と私に出会ってから、以前より元気になったと、

おばあちゃんの御子息がわざわざ私にお礼を言いに来られた。

ひたむきに食べ、ひたむきに眠り、ひたむきに愛す。

三つの欲しか持たない小さな命だからこそ、

つかの間の触れ合いでも淋しさが癒されるのかもしれない。



「生きる意味」を問う必要はない。

食べ、眠り、愛する事が生きる力を与えてくれる事を、猫は知っている。



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ありがとうございます。

2008-01-11 | ★Comment Thanks!

コメントを下さったお友達、

検索でアクセスして下さった方々、

猫が縁で路地で出会った方々、

本当にありがとうございます。

そして、

写真を撮らせてくれた路地猫達に感謝です。



今後も、個性的な路地猫達との出会いを求めて

ワクワクの気配に気付かれぬよう、

ふたたび、またたび、しのび足で

お近付きになりましょう…



 ←しのび足で、ポチっとお近付きになりましょう。








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独 立

2008-01-10 | 『茜』

仲睦まじい親子『茜』と『尚人』と『直人』にも、独り立ちの季節がやって来た。

『小鉄』が去ってからも公園に居続けた『茜』の事だから、

きっと『尚人』と『直人』がこの公園を去り、それぞれに新しい縄張りを作るのだろうと思っていた。

…が、公園を去ったのは『茜』だった。



猫の独り立ちは、厳しく非常にすら見えるライオンの崖落しにも似ている。

ある日突然やって来るからだ。

住み慣れた公園には、近所に住む猫好きの人達がこっそり置いていってくれる餌もある。

近くには川もあり、車にさえ気を付けて渡れば水場も近い。

猫にとっては安心して住める場所(好条件の縄張り)は財産、誰にも取られたくはない筈だ。

追い出そうとしても出て行かなかったから、自らが出て行っただけかもしれないが

「親心」という人間の主観で見たくもなる。


親を慕う子の心も、子を想う親の心も同じ。

鬼の様に突き放して置きながら、実は一番住み良い場所を子供に残して去る『茜』は、

したたかな優しさと、しなやかな強さを持った本当の母親だ。



「金」の為に親が子を殺し、「嫌いだから」と子が親を殺すこの時代。

私達に欠けているとても重要で、とても必要な何かを、

路地を行く猫が言葉なく教えてくれる。


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猫漫画

2008-01-09 | ★猫漫画

たまには、こんなのもアリでしょうか?

「夜逃げ」に登場した猫達です。

可哀想に、今は閉店したお店は平地になっています。

ドーナツの穴どころではありません。



←猫漫画は検討中…もっと見てみたいと思う方はポチっと応援宜しくお願いします。

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路地猫の本

2008-01-08 | ★アトリエ

表紙は「やり手の親友」の『リー』。

裏表紙は「薬屋の看板猫」の『ミーディ』。

ここまでの14話を収録し、4冊製本。

内1冊を「面影」に登場した獣看護師の学生さんへ進呈。



その後、2話と写真を追加し16話で、8冊製本。

内数冊を旧友へ進呈。残りは保存用と、

友人達(ネットをされていない方々)に回し読みして頂いております。

帯まで作った、手作り製本。

この本が出来るまでのお話は、また後の講釈で…。



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モノクローム

2008-01-07 | 『白・黒・灰』

翌檜の木がある公園には、四匹の猫がいる。

区別できない程そっくりさんの『白』が二匹と『黒』、

…その三匹の体の大きさの絵の具を混ぜて作った様な釜猫の『灰』。

白い猫は薄命と聞く。

飼い猫なら美しいのでちやほやされるが、野良ともなれば目立ち過ぎて生きにくいのかもしれない。

では、黒猫は長生きかと言うとそうでもないらしい。

ここの猫達の中で一番したたかで、常にご馳走にありつけるのは『灰』だ。

餌をくれそうな人の姿を見つけると、何処からともなく近付いて来るのはいつも『灰』で、

丸い目でじいっと見つめながら、鳴き声とも威嚇とも違う、

お腹の辺りから「ウ~ウ~ッ」と唸り声を響かせては念力で「ご飯!」と訴えてくる。

気迫に押されついついバックの中を探して手持ちの餌をあげていると、

『灰』が全て食べ終える頃に『白』と『黒』が匂いに気付いてやって来ても、餌は殆ど無い。

『灰』は、人との距離感が絶妙な猫なのだ。

餌を食べているからといって、触れさせない。

それに比べて『白』と『黒』は、始めから人に近付けないから、いつも餌にありつけないでいる。

この「翌檜公園」には猫の事務所でいじめに遭う、泣き虫の釜猫はいない。

明日は「檜」に成れないからだ。



善か悪か。時と場面で、明日には白にも黒にもどちらにも成り得る「灰」が、

本当は一番強いのかも知れない。



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家族模様

2008-01-06 | 『尚人・直人・チビ』

『茜』が子猫を産んだ。全部で四匹。

生後一週間経たないうちに、団地の子供達が次々と四匹共、バラバラに連れて行った。

公園では『茜』が悲しそうな声で鳴いて子猫を探して歩き回っていた。

『小鉄』は『茜』に振られたのか、子猫が産まれた頃に『ボス猫』に威嚇されて

公園から川沿いに住みかを移した。




久しぶりに公園へ行くと、『茜』に良く似た子猫が二匹いた。

白の入っていないキジトラの兄弟猫、『尚人』と『直人』。

一時拾われた子猫が公園に戻されたのか、『茜』が直ぐに二匹を産んだのかは判らない。

でも、明らかに『茜』の子だ。

ふと、振り向くと『ボス猫』じゃない雄猫がいる。

『茜』の好みは、イケメン青二才よりも、ちょい不良オヤジの様で、かなり年期の入った野良だ。

私が子猫にあげた餌を、独り占めしてもりもり食べている。

つまり、『茜』は若くして「×2・子連れ」で再婚を果たしたのだ。

第二の『ボス猫』が餌を食べ終えると『尚人』と『直人』は奪い合う様に餌に食いついた。

『尚人』の方が人懐こい少し大柄な兄で、『直人』はシャイで小柄な弟と言った所か。

横から、弟が餌に口を付けようとすると、

兄が「俺が先だ」と言わんばかりに弟の額に猫パンチ

……いつでも、兄弟喧嘩は些細な事で始まる。


   人も猫も、家族模様は様々だ。


子供達が巣立って行けば、又公園に違う猫が住むかもしれない。


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夜逃げ

2008-01-05 | 『千代丸・影丸・母君』

ドーナツがどうしても食べたくて、書店横のドーナツ屋へ行った。

ついでに書店にも立ち寄って帰ろうとすると駐車場で休んでいる猫がいた。

時間もあったし挨拶でもと思い近付くと、こっちを振り向きながら逃げる。

後を追うと、曲がった先の袋小路に「猫だまり」があった。一、二…五匹は居る。

ぎょっとした顔でこっちを見ている。間違えて入った会議室で一瞬注目を浴びた感じだ。

二匹逃げたが、暫く遠巻きに撮影していると後ろから声を掛けられた。

袋小路になった飲食店の裏口から出てきた店員さんだ。

「隣のお店が閉店になって夜逃げして、

その猫達はそのお店の方が飼っていたみたいやけど、そのまま置き去りなんよ。」

ここの猫達は皆、顔つきが野良化していて、飼い猫だった面影も既に無い。

白地に茶トラの『千代丸』は食いしん坊で、餌を見ると警戒しながらも近付いて来る。

『影虎』は黒ん坊で、目を開けていないとどこに居るのか判らない。

三毛の『母君』は少しでも他の猫達に近付こうものなら「シャーッ」と言って威嚇する怒りん坊だ。

人間だって、裏切られると敵意をむき出しにするだろう。

この猫達に近付くには相当な時間と根気が必要だ。



暫く「猫だまり」へは顔を出せずにいた。


久しぶりに行ってみると、一匹もいなくなっていた。

猫達のいなくなった袋小路は、ドーナツの穴の様に見えた。


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通  報

2008-01-04 | 『ボス猫』

『茜』の二番目の連れ、『ボス猫』は人間嫌いだ。

人間が少しでも近付こうとすると、「フゥ~ッ」と所構わず威嚇の声を出す。

可愛い名前が貰えなかったのもその愛嬌の無さが一因している。

『影虎』と同じく、夜にしか姿を現さない。



自宅前で『ボス猫』に会った。

モノ欲しそうな顔をするので仕方なく一度家に戻り、

餌を持って出てきたら、団地の階段下の植え込みから顔を出してきた。

餌は欲しいが、近付きたくは無いらしいので、日も暮れて真っ暗な中、

少し餌を置いては二歩下がり……を繰り返していた。

ふと、団地の一階の窓に人影が見えた。

「あ、すいません」と、頭を下げたが返事は無かった。

暫くすると、けたたましいサイレンと共にお巡りさんがやって来た。

何事かと見ていると、お巡りさんは真っ直ぐに私の所へやって来た。

「さっき、窓の外に変な女の人がいると通報がありまして…」

「猫と遊んでいただけですが…何か?」

お巡りさんは植え込みを懐中電灯で照らすと『ボス猫』はびっくりして逃げ、

お巡りさんは安心して帰って行った。

一階の窓からは、私の姿しか見えなかったにしても、変人扱いは勘弁して欲しいものだ。



 先日、狩りが得意な『ボス猫』が『茜』に雀のお土産を銜えて来ていた。

……今度は一階のおばさんの所へ、鼠でも持参しときなよ。


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一匹狼

2008-01-04 | 『影虎』

二級河川の橋の横には都市ガスの太い配管がある。

その上を綱渡りの様に歩いて渡って来る姿は、威厳に満ちた虎の様。

夜にしか姿を見せない雄猫『影虎』は、余り鳴かないが、顔に似合わず声は可愛い。


川沿いで『小鉄』がいつも餌を貰っている所へ、二~三日に一度の頻度でやって来る。

野良暦の長さを物語る体の汚れ具合、その割りに人の言葉が解る様子で、

「食べて良いよ」と言われないと口を付けない。

食べ終えるとくるりと向きを変え、少し歩いた所で一度振り向き一礼し、

再び橋向こうへ帰って行く……礼儀正しさは、まさに武士だ。



橋向こうからやって来るこの先輩猫を怖がってか、

『小鉄』は気付くと道の向こうへ逃げ、こっちの様子をじっと伺っている。

『小鉄』と比べて顔の大きさが全然違う。

体も大きい。

何歳位なんだろう…野良猫の寿命は長くて三~四年、『影虎』は優に十歳は超えていそうだ。


最近は人も猫もユニセックス化が進んでいるのか、性別をぱっと見で判断するのが難しくなった。

その点、昭和の猫というか、

…昔の雄猫はやたら顔がデカイので見間違える事は余りなかった気がする。

『影虎』もきっと人間だったら、鬘の似合う時代劇のトップスターになれたかもしれない。

「座頭市」とか似合いそうだ。



残念ながら、最近では二~三日の逢瀬もままならない。

橋向こうの何処かで、どうか達者でいて欲しい。


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置き引き

2008-01-02 | 『小鉄』

『茜』の連れ、『小鉄』はかなりの甘え上手。

人馴れした飼い猫ですら膝には余り乗らないのに、

公園で出会ってから二週間目に自ら膝に乗って来た時には流石にびっくりした。

ご飯を食べる時に、ニャグニャグ感想を良いながら食べる姿は、

料理番組の「彦麻呂さん」みたいで笑える、憎めない奴だ。



桜が満開のある日、絶好の撮影日和とばかりにくつろぐ二匹の姿を写真に納めていた。

余りに夢中になっていた私は、

財布の入ったバッグを無造作に駐輪場のブロックの上に置いたままにしていた。

そこへ、子供連れの若いお母さんが通り過ぎた後、

そのご主人らしき男性が通り過ぎたが、気にも止めなかった。


「ニャァ~ァ!」

『小鉄』が大きな声で鳴いたので振り向くと、

通り過ぎたはずの男性が私のバックの中から財布を出そうとしていた。

若いお母さんと子供は何処かへ消えて、男性だけが戻って来ていたのだ。

「い、いや。落し物かと思って…」と…変な言い訳を残し男性は逃げて行った。

バックの所有者が近くに居て、注意を逸らしてしる隙に財布を持って行こうとしていたのだから、

明らかに「置き引き」と言う奴だ。

昔から、猫は役に立たないと言うがそんな事は無い。恩返しやお礼位はするのである。



その事件以来、『小鉄』は良く私のバックをベッドに、食後の仮眠を取る様になった。

でも本当は、自分のバックと思っているだけなのかもしれない。


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面  影

2008-01-01 | 『茜』

お花見をする猫を初めて見た。

公園に面した駐輪場の屋根で優雅にも桜を見ている。

羨ましい限りだ…好きな時、好きなだけ特等席でお花見を満喫出来る。

小柄で木登りが得意なのか、駐輪場横の銀杏や桜の木に登り、

屋根に飛び移ってお花見をする雌猫『茜』は、お腹も大きいヤンママのお転婆さんだ。



夕暮れ時に姿を表すので『茜』と呼ぶ様になった。

『茜』には連れがいて、兄弟なのか夫婦なのか…同じキジトラで良く似た雄だ。

二匹仲良く餌を貰いにやって来る姿が可愛くて、公園に毎日のように通い詰めていた。


日もすっかり暮れたある日、いつもの様に駐輪場へ行ってみると…

ボーイッシュな若い女の子が猫缶片手に紙皿と缶切持参でウロウロしていたので、声を掛けた。

話してみると落ち着いた口調で、獣看護士の学校へ通う学生だと応える。

こっちへ引越す前にロシアンブルーの『桜』という雌猫を飼っていて

四歳数ヶ月で亡くしたのを期に、仕事を辞め、獣看護士の学校へ行く決意をしたそうだ。

余程悲しい思いをしたのだろう。

その思いが、彼女の次のステップへと力を貸したのならば『桜』の死は決して無駄ではない。

毎年、桜の季節にはその時の気持ちを胸に頑張れるだろう。


野良猫に遇うとつい足を止めてしまう人は、

無意識にかつての相棒の「面影」を探しているのかもしれない。




気が付くと、屋根上の『茜』が桜の花びらの様に足元に降りて来ていた。



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