きっと明日は雨のち晴れ

六甲道診療所での仕事は忙しいけど、それなりに楽しい。ちょっとくじけそうなことがあっても、雨のち晴れです

フレイルと転倒防止

2018-03-13 22:06:55 | 診療
先月に続き、「フレイル」についてとの要請で思案中の先日(三月一〇日)、職員組合員さん合同の「フレイル」の取組み「ときめき交流会」が開催されました。
 しっかり噛んで栄養つけ、筋肉量をへらさぬように運動、人と会いお喋りが大事で、各々の発表には聴き応えがありました。これからあちこちでフレイル予防の取り組みが広がっていくことでしょう。
 でも、これもちょっと大事ではないかというお題にしました。それは「転倒予防」です。
●シャキシャキしてるのに
 近頃どこにもスポーツジムがあります。高齢者向けや、女性限定などもあり、毎日、半分お風呂がわりに通っておられる一人ぐらしの高齢者の方もいます。昨年末の午後の診察の最終に九十二歳の一人暮らしの女性にインフルエンザの予防接種を済ませて「今からセントラルでお風呂にはいってもいいですか」と聞かれました。予防接種後に副反応があってはと、しばし診療所に留まっていただくのですが、家にすぐ帰るよりは、人目のある施設でお風呂に入ってもらう方がいいか?という妙な判断でいっていただきました。真冬の寒い夜でしたが。
 通院中の方で、突然、病院から「骨折で入院加療中」というファックスが届くことは珍しくなく、早々に手術しリハビリして自宅に戻りはしても機能は低下します。骨粗しょう症で濃密に治療していても、シャキシャキとジムに通って水中歩行している方でも、転倒骨折は予期せぬもので、案外、自宅の中でのことが多いものです。

●夜間の転倒がくせ者
高齢者の転倒の三分の一は夜間、夜九時過ぎから翌朝六時頃までの就寝時間帯に。その時間帯の大半は寝床で横になっているため転びようがない。夜中に目覚めて尿意を感じ、寝床とトイレを往復する、そのわずかの間に転倒が集中。起きている時間に限れば、転倒率は昼よりも夜の方がずっと高い。
夜中で薄暗いために段差が見えにくいなどの原因が頭に浮かびますが、むしろ他の要因に注目。その一つが起立性低血圧。横になっていてトイレに行きたくなって起き上がり、立ちくらみでふらつき、さらに排尿後に血圧が下がり、戻るときも要注意。高血圧の薬で転倒しやすくなる場合も(といって、今の薬を止めないでくださいね)糖尿病薬が効きすぎ夜間低血糖だとか、アレルギー薬で眠気ふらつきが出たなど。飲み薬の数と転倒リスクが比例するという報告もあります。
●睡眠薬が悪い?
 とりわけ睡眠薬は、転倒高齢者が服用していた薬剤として常に上位です。眠気が強く、もうろうとして転ぶ様子を思い浮かべますが、最近の睡眠薬は眠気が続く時間の短いものが多く、トイレに行く頃には眠気がかなりさめて、むしろ眠気が切れた頃トイレに行く途中で転ぶことが多い。筋肉弛緩作用や平衡機能を抑制する作用は残っていることによると。では睡眠薬が悪いのか?不眠が治りきらず夜間のトイレ歩行が残っている場合も多く含まれ、睡眠薬が悪いようにみえているだけかも。眠れるようになればトイレ回数も減り、転倒も少なくなるとも考えられます。
 などなど、フレイル予防で延ばせる「健康寿命」が一瞬の転倒でとぎれないように、家の中の危険個所の点検、飲んでいる薬や病状の相談など、みんなで「転倒用心」しましょう
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