日米などが参加する「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)が発足した。米国主導の枠組みで対中包囲網の一環との性格が目立つ。ブロック経済の温床とならぬよう注意を払う必要がある。
IPEFは先の日米首脳会談に合わせバイデン大統領が立ち上げを発表した。参加メンバーはインドや韓国、オーストラリア、東南アジア諸国なども含め十三カ国となる。参加国だけで世界の国内総生産(GDP)の約40%を占める巨大貿易圏といえる。
ただ規模の大きさとは裏腹に経済効果は見えにくい。半導体を軸とした供給網の構築や脱炭素問題などでの協力をうたってはいるが、具体案は煮詰まっていない。
さらに経済枠組みでは必須といえる関税引き下げは議題としない。このため、関税交渉が軸の環太平洋連携協定(TPP)や、地域的な包括的経済連携(RCEP)とは異なる「緩い経済連携」に当面、とどまるだろう。
トランプ政権時代にTPPを離脱した米国は、中国が影響力を持つRCEPに対抗しうる経済枠組みに入っていなかった。今回、IPEFの立ち上げを主導した背景に中国への対抗意識があったことは間違いない。
だがIPEF参加国の中国との距離感はそれぞれ大きく違う。日本はさまざまな摩擦を抱えながらも二〇〇七年以降、最大の貿易相手国だ。東南アジアの多くの国は依然経済的な依存を強める一方、インドやオーストラリアは緊張関係にある。
米国が自己都合で中国排除の姿勢を鮮明にすれば参加各国の警戒心を招き、枠組みは機能しなくなるのではないか。
特定の国を意図的に外した貿易体制は経済のブロック化に直結する。ブロック経済が過度な外交的緊張を生み、戦争さえ誘発しかねないことを世界は学んでいる。
IPEFを経済協力の場として有効に活用するなら、中国参加も視野に入れた包摂型の枠組みとすべきだ。米中と深い関わりを持つ日本が外交的な橋渡し役を担うことも強く期待したい。
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「桜を見る会」夕食会にサントリーが3年間、酒を無償提供 識者「違法な寄付の可能性」
安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会で、サントリーホールディングスが2017〜19年、計400本近い酒類を無償で提供していたことが分かった。政治資金規正法は企業の政治家個人への寄付を禁じており、「違法な企業献金に当たる可能性がある」との指摘が出ている。
本紙に開示された配川博之元公設第一秘書=同法違反罪で略式命令=の刑事確定記録で、会場のホテル側が作成した資料に「持ち込み」として酒類の記載があり、同社の電話番号も書かれていた。同社広報担当者は無償提供を認めた上で「安倍議員事務所から多くの方が集まると聞き、製品を知ってもらう機会と考え、夕食会に協賛した」と説明。17〜19年だけでなく16年を加えた4年間に毎年約15万円分を提供したという。
夕食会は毎年参加者から1人5000円を徴収し、不足分を安倍氏側が補填していた。酒を持ち込んだ理由について、東京の秘書は供述調書で、補填が有権者への違法な寄付に当たる恐れから「ホテルでの飲食代金を抑えるため」としている。
安倍氏関連の政治資金収支報告書に同社からの寄付の記載はない。岩井奉信日大名誉教授(政治学)は「政治的集会の認識もあったはずで、純粋な宣伝目的とは言えず、主催した後援会への違法な寄付に当たる可能性が高い」と指摘。一方、元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「夕食会への協賛との説明では寄付を受ける主体が明確ではない。参加者に振る舞うためなら実質的な寄付先は参加者で、違法とは言えない」と述べた。安倍氏の事務所は「担当者がおらず、答えられない」とした。(小沢慧一)
◆安倍政権に近いサントリー社長
サントリーホールディングスの新浪剛史社長は安倍政権下の2014年9月以降、政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めている。同社は自民党の政治資金団体「国民政治協会」に対し、毎年500万円前後を献金している。
一方、同業のキリンホールディングスは「たとえ要請があっても政治家に無償で製品を提供することはない」と説明。アサヒグループジャパンも「お客さまにお金を支払って購入していただくものなので、政治家のパーティーなどに提供することはない」と話した。(奥村圭吾)
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