東京都の小池百合子知事が12日、3選出馬の意向を表明した。近年、力を入れてきた少子化対策の実績を前面に支持を広げたい考えだが、さまざまな批判に対して正面から向き合っていない場面も目に付く。選挙戦では説明を求められる局面も出てきそうだ。(渡辺真由子)
◆「1期目より職員や議会の声に耳を傾けるようになった」
「一連のチルドレンファーストの子育て施策は、これまでのあり方に一石を投じてきた」。小池知事は12日午後の都議会本会議で自負をにじませた。
都内に住む18歳以下の子どもに月5000円を支給する「018サポート」や高校授業料の実質無償化など、子育て世帯に対し、所得制限を設けない負担軽減策を相次いで実施してきた。今月は、東京の合計特殊出生率が1を切るという結果が公表されたが、小池知事は「対策を打ったからこそ踏みとどまった」と効果を強調した。
「1200日全身全霊で取り組んだ」という新型コロナウイルス対応でも、専門家が感染状況の分析などを担う東京iCDC(東京感染症対策センター)を創設するなどし、累計死者数を低く抑えられたとしている。
少子化対策など、さまざまな施策を比較的円滑に打ち出すことができた一因には都政運営の変化がある。1期目は外部の人間らを重用する場面が目立ったが、2期目は都庁職員やOBらで周辺を固める傾向を強めた。ある都議は「1期目に比べると、知事は職員や議会の声に耳を傾けるようになった」と評価する。
◆朝鮮人虐殺、外苑再開発、学歴問題への姿勢に批判も
一方で、批判にもさらされた。都内で9月1日に開かれる関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者の追悼式典を巡り、小池知事は追悼文の送付を取りやめている。「歴史を繰り返さない」という意思表明として送付する考えはないのかと会見で問われた小池知事は「(都慰霊協会主催の)慰霊大法要において、都知事として、先の関東大震災で犠牲となられた全ての方々への哀悼の意を表している」とかみ合わない答えに終始した。
明治神宮外苑(新宿区など)の再開発についても踏み込んだ見解を示すことはほとんどない。事業者側から樹木保全策の提出が遅れていることについて問われたが、「事業者は(要請を)考慮しながら進めていただけると考えている」と述べるにとどめた。
今春、知事のカイロ大卒業の学歴を認める同大学長名の2020年の声明文を巡り、知事側で作成された可能性があると元側近が告発した。知事側の指示の有無について尋ねた質問に、知事は「(卒業証明書などを)大学の意思のもとで発出された」と直接答えなかった。
都知事選の有力な対抗馬となる蓮舫参院議員は、小池都政の実績ともいえる子育て施策については「評価するところがいっぱいある」と前向きに受け止める。一方で、朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典の追悼文問題や外苑再開発に強い関心を示しており、論点となる可能性は高い。
小池知事はどう臨むのか。周辺の関係者は「知事が進めてきた実績は間違いないもの。だからこそ、批判に対しての説明が問われているのではないか」と語る。
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◆有力候補の出馬表明がいつもギリギリ「有権者に失礼」の声も
小池氏が3選出馬表明した12日は、知事選告示日の8日前。小池氏は前回の2020年も告示の6日前に出馬表明し、主要政党の支援を受けた都知事選の候補予定者としては、最も遅い名乗りだった。これまでも都知事選は有力候補がぎりぎりのタイミングで出馬表明するケースが多い。識者からは、政策論争が深まらないと指摘する声もある。
都政関係者の間では当初、小池氏の出馬表明は5月29日の都議会初日の所信表明ではないかとの臆測があった。しかし、小池氏の出馬の意向が表明に先んじて報道され、27日に蓮舫参院議員が出馬を表明。「報道に振り回された」「情勢調査の状況をみながら見極めている」などの見方が交錯する中、結果的に都議会最終日の6月12日となった。
1999年に初当選した石原慎太郎氏の出馬表明は告示の15日前、12年の猪瀬直樹氏は8日前、14年の舛添要一氏は9日前。長年都政を研究する佐々木信夫・中央大名誉教授(行政学)は「公約を有権者に広く知ってもらった上で選んでもらうのが選挙の原則。告示日直前の出馬表明は政策への議論が深まらず、有権者に失礼だ」と話した。(原田遼)
狸の落選を祈願する(合掌)
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