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●<東京新聞社説>安保政策の論戦 専守防衛が空疎に響く

2023年02月03日 11時38分01秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 安全保障政策の転換を巡り、岸田文雄首相ら政府側が具体的な説明を避ける場面が目立つ。防衛予算倍増の方針を示しながら「中身は秘密」では議論にならない。詳細な説明が国会審議の大前提だ。
 主要論点である敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有は憲法九条に基づく専守防衛を逸脱し、軍拡競争に拍車をかけかねない。台湾を巡り米中が軍事衝突すれば、自衛隊が集団的自衛権を行使し、中国を攻撃する事態も想定される。
 国際法違反の先制攻撃とならぬよう、どのような状況なら長射程ミサイルを相手国に撃つのか。立憲民主党の岡田克也幹事長は集団的自衛権を行使する敵基地攻撃の例示を求めたが、首相は「手の内を明かすことになる」と拒んだ。
 集団的自衛権の行使を巡る安保関連法の審議では当時の安倍晋三内閣が、邦人を乗せた船舶を守る米軍の警護や中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷除去などの例を不十分ながら示した経緯がある。
 それと比べても岸田首相の今国会での説明は具体性を欠く。敵基地攻撃を巡る判断を白紙委任するよう国民に求めるに等しい。
 政府は二〇二三年度予算案に、敵基地攻撃に使える米国製巡航ミサイル「トマホーク」導入関連費三千二百億円余を計上しながら、その購入数は「防衛能力を明らかにすることになる」(浜田靖一防衛相)として明示していない。
 防衛費を五年間で計四十三兆円に増やす方針に関し、首相は「必要な内容を積み上げた」としているが、積算根拠を示さず国民に税負担を求めるというのか。「金額ありき」と指摘されて当然だ。
 共産党の志位和夫委員長は敵基地攻撃能力の保有と、攻撃的兵器を平素から持つことは「憲法の趣旨ではない」とする歴代内閣の憲法解釈との整合性をただした。
 首相は安保環境の変化に対応する必要性を強調しつつも、憲法解釈の変更を否定したが、敵基地攻撃能力の保有が憲法の趣旨に合致するとは到底考えられない。
 不誠実な答弁や不十分な説明を続けても、首相は「国民の前で正々堂々議論」(施政方針演説)していると胸を張れるのか。
 岸田内閣が進める防衛力の抜本的強化は集団的自衛権の行使容認に続く安保政策の大転換だ。首相がいくら「専守防衛を堅持する」と強弁しても空疎に響く。野党には国会での徹底追及を求めたい。

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