ほんこんTwitterより
新型コロナ第6波が猛威を振るっている。10日の全国のコロナ死亡者数は過去最多の164人と、第5波で最多だった昨年9月8日の89人を大幅に上回った。また、重症者数も1270人(10日時点)と増加の一途をたどっている。さらに警察庁は1月の変死事案などのうち、151人が新型コロナに感染していたと発表した。
だが、これは最初からわかりきっていた展開だ。感染者数が増加すれば重症者数や死亡者数も増加することは自明だからだ。ところが、この間、ワイドショーなどでは、オミクロン株は重症化のリスクが低くなっているという報告をもとに「オミクロンはたいしたことない」論が振り撒かれ、橋下徹氏や三浦瑠麗氏といった維新寄りの論客、ホリエモンこと堀江貴文氏や高橋洋一氏ら新自由主義者、木村盛世氏や宮沢孝幸氏といった感染リスク軽視派の専門家、ブラックマヨネーズ小杉&吉田やほんこんといったネトウヨ芸人らが鬼の首をとったように「オミクロンのリスクは風邪と同じ」「感染者数が増えても重症者が少ないから問題ない」「検査は必要ない」「感染症法上の分類を2類から5類に引き下げるべき」などと叫んできたのである。
しかし、「オミクロンはたいしたことない」と口角泡を飛ばしてきた論客たちは、過去最悪の事態となりつつあるこの状況下でも、信じられない主張を繰り返している。
その筆頭が、ネトウヨ芸人のほんこんだ。
ほんこんは9日の8時45分ごろに、〈いつまで同じ報道? 再放送か? 意味のない解説 専門家? コメンテーター? 感染者増えたら あなた方の収入が増える〉〈山がもっと上なら 致死率低くない? ヨーロッパと比べるか 日本は、ヨーロッパから 褒められてたけど〉とツイート。同時間帯にコロナ死亡者数が増加していることを取り上げていた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)を視聴していたのだと思われるが、このあと、ほんこんはつづけてこう投稿したのだ。
〈死者 何歳? 言って欲しい〉
こんなことはあらためて指摘するまでもないが、乳幼児であろうと高齢者であろうと、年齢に関係なく人の命に軽重はない。しかし、ほんこんは、死亡者の年齢を重視すべきであるかのように投稿したのだ。
しかも、現在コロナで死亡している人の多くが高齢者だ。そのことを踏まえると、「高齢者なら死んでも仕方がない」と主張しているとしか受け止めようがないだろう。
無論、このほんこんのツイートには批判が殺到。〈何歳か聞いて、これだけ生きたから仕方ないとか判断でもするつもり?〉〈何歳ならいいんだよ〉〈ほんこんさんにはご高齢の両親はいませんか?ご高齢の親戚やお世話になってる先輩は?その方に向かって同じセリフを言ってみてください〉〈西川きよしさんも高齢ですが、死んだらいいと思いますか?〉といった声が寄せられているが、批判が起こるのはあまりにも当然だろう。
感染者数が急増したら「死者数言え」、死者数が増えたら「年齢言え」…ほんこんはコロナを矮小化したいだけ
そもそも、ほんこんといえば、菅義偉・前首相が内閣官房参与として重用した高橋洋一氏と昵懇の仲で、高橋氏が昨年5月にコロナによる死者が1万人を超えていたにもかかわらず〈日本はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑〉とツイートして問題になった際も高橋氏を擁護。さらに、高橋氏と同様に番組共演者であり、「ワクチンも治療薬もできたなかでは感染を無理に止めない(でいい)」「(オミクロン株は)あきらかに風邪のウイルスに近づいている」などとコロナを矮小化する発言を連発している木村盛世氏に絶大な信頼を置き、ほんこんもコロナを軽視する発言を繰り返してきた。
しかも、ほんこんは、第6波で感染者数が急増していた1月13日には〈従来のインフルエンザと見分けがつかない 5類でええやん 騒ぐワイドショー 何を目指しているのか 何年繰り返すねん〉〈もうええでこの専門家 死者数は言わない 重症化にならんから死者は出ないのでは〉などと投稿。つまり、死亡者が出ていないことを根拠にワイドショーは騒ぎすぎだと批判していた。ところが、死亡者が増え始めると、今度は “高齢者だから仕方がない”と言わんばかりの主張をはじめたのである。
だが、これが「オミクロンはたいしたことない」論者の本音なのだろう。実際、大阪府がクラスターが起きた高齢者施設などを往診し、抗体治療薬などの治療を提供した医療機関に協力金を出すという方針を伝えた夕刊フジの記事のなかで、木村氏は「日本の平均寿命が80代ということもあり、80代の重症者や死者を減少させることは不可能に近い。協力金を出しても医療機関の逼迫を招くだけではないか。高齢者施設や家族らの間で、感染したときにどう対応するかをしっかり話し合っておくことの方が重要だろう」などとコメントしているのだ。
言わずもがな、いまコロナに感染して亡くなっている多くの高齢者は、たまたま寿命がきて死亡したのではなく、コロナに感染したことによって持病が悪化したり、発熱や食欲不振などで衰弱するなど、コロナが引き金になっているのだ。にもかかわらず、「80代の重症者や死者を減少させることは不可能に近い」「協力金を出しても医療機関の逼迫を招くだけ」とコロナ治療の実施を否定し、挙げ句、「感染したときにどう対応するかをしっかり話し合っておくことの方が重要」などと暗に死を受け入れる覚悟を迫っているのだ。
これは2020年に大阪府の吉村洋文知事が「命の選別」発言をおこなったこととも通じる。ようするに、ほんこんや木村氏なども含めて、「オミクロンはたいしたことない」論者の思想的バックボーンになっているのは、“生産性の低い高齢者は早く死んだほうがいい”という、新自由主義=維新的な優生思想だということなのだろう。
三浦瑠麗は「2月1日〜9日にピークアウトする」と楽観論を先導、死者急増を無視
しかも、グロテスクな言動をさらけ出している「オミクロンはたいしたことない」論者は、ほんこんだけではない。もうひとりが、国際政治学者の三浦瑠麗氏だ。
三浦氏といえば、1月29日深夜放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)で「医者がワイドショーを観てコロナを怖がりすぎてる」「医者は自分ごとだと思ってない」などと嘲笑した挙げ句、医師である上昌広・NPO医療ガバナンス研究所理事長に「(医療現場に)立ってみられたらいい」と反論されると、「私、医者じゃないんで(笑)」と言い放ったことに非難の声があがったことも記憶に新しいが、最近はすっかり「ピークアウト芸人」と化している。
というのも、三浦氏は「チームCATs」なる有志グループでビッグデータ分析などに基づいた感染状況の予測モデルを開発。1月27日には〈東京都は来週ピークアウトする可能性が高く、緊急事態宣言の要請は踏み留まるべきです〉とツイートし、緊急事態宣言の要請に待ったをかけた。
このツイートには〈この人、いつから感染症の専門家になったの?〉〈感染症の専門家でも何でもないのに、無責任にも程がある〉〈えっと感染症の専門家でしたっけ?〉といった声が続出したが、一方、三浦氏は予測モデル研究チームの一員としてメディアにも積極的に露出。「第5波の予測もシークレットにやってて、ほぼ完璧に当たってるんですよ」(TBS『サンデー・ジャポン』2月6日放送)と後出しアピールし、「2月1日〜9日にピークアウトする」という予測を発信してきた。
たしかに、東京都の新規感染者数は前週比で減少しつつあるが、検査がまったく追いついていない状態では何の判断もできない。だが、それ以前に、死亡者数が過去最多を更新し、大阪などが医療崩壊状態に陥っている現状のなかで、いまピークアウトしているのかどうかを論じることは、現状の矮小化にほかならない。むしろ、「コロナ怖がりすぎ」「もうすぐピークアウトする」などと喧伝し、感染拡大を食い止める策を講じることをせせら笑って経済優先を主張してきたことが、現在の検査不足や医療崩壊、死亡者急増という最悪の事態を招いたのではないか。だが、三浦氏はピークアウト予測を声高に叫ぶことによって、本来なら守れたかもしれない人命が失われている現実を無視し、いまだにコロナを軽視しつづけているのだ。
しかも、ほんこんや三浦氏といった「オミクロンはたいしたことない」論者は、すぐに「ワイドショーが煽りすぎだ」と批判するが、実際にはワイドショーをはじめとするテレビの報道は死亡者数が過去最多を更新しても北京冬季五輪の話題ばかりで、むしろ伝えられるべき情報が伝えられていない状態だ。さらに、ほんこんや木村盛世氏、高橋洋一氏らが出演する『教えて!NEWSライブ 正義のミカタ』(朝日放送)では、2月5日放送回でも“コロナは普通の風邪”などという主張がおこなわれているような状況なのだ。
この放送のなかで、ほんこんは「専門家以外がテレビで煽ってる」「専門家以外はいらんこと言わんほうがええわ」と口にしていたが、それこそ、ほんこんや三浦氏といった専門外の人間がメディアでコロナを矮小化することこそが害悪だと言っておきたい。(編集部)
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