米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳、水原一平容疑者が米連邦検察に訴追された事件はギャンブル依存症の怖さを見せつけた。日本国内でもギャンブル依存が問題化し、若者を中心に違法なオンライン賭博も広がる。
政府は2023年、大阪府・市によるカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)建設を認定したが、ギャンブル依存の怖さは十分に周知されておらず、カジノを推進することは許されない。
水原容疑者が訴追されたのは、違法なスポーツ賭博の損失を埋めるため、大谷選手の口座から金を引き出した銀行詐欺の疑い。不正送金は約24億円と巨額に上る。
水原容疑者が違法賭博にのめり込み、借金が雪だるま式に膨らんで、他人の口座に手を出した経緯は想像に難くない。
この事件は決して対岸の火事ではない。日本国内でもギャンブル依存は問題となり、厚生労働省が21年に公表した調査では2・2%が「ギャンブル依存が疑われる」という。日本の人口に換算すると約196万人に上る。
日本国内では競馬など公営ギャンブルを除く賭博は禁止だが、インターネット上では違法な賭博がまん延している。
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」によると、23年の相談件数のうちスポーツなどのオンライン賭博は20・3%と19年比で16ポイントも増えている。このうち約8割を20~30代の若い世代が占め、多額の借金を抱えて犯罪に走る若者も少なくないという。
ただ、オンライン賭博は、胴元が海外にいる場合も多く、警察による取り締まりが十分には行われていないのが現状だ。
ギャンブル依存の深刻化にもかかわらず、政府や大阪府・市は大阪万博の隣接地でのIR施設建設に前のめりだ。収益の大半をカジノ事業で得る計画だという。
日本人客にのみ入場料を課して入場人数を制限する案も浮上するが、ギャンブル依存症に国境はない。訪日客は依存症になっても構わないとでもいうのか。
国内では公営ギャンブルなど合法のものでさえ、依存症の問題は深刻だ。にもかかわらず新たな温床となりかねない施設を、自治体が公費を使って建設する姿勢は理解に苦しむ。政府はIR推進を全面的に見直し、カジノ頼みでない観光振興策を探るべきである。
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