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★<東京新聞◆社説>阪神大震災から30年 「神話」再び生まぬために

2025年01月17日 10時31分24秒 | ●YAMACHANの雑記帳
阪神大震災から30年
 夜が明けると街は一変していました。土手から転げ落ちた住宅、途中の階がつぶれて傾いたマンション。商店街は丸ごと道路に向かって倒れ、新幹線の高架は桁が落ち、レールが電線のように空中に浮かんでいました。昨日の風景はどこにもありません。
 30年前の1月17日未明、震度7に見舞われた兵庫県西宮市周辺の様子です。激しい揺れの衝撃は今も体の芯に染み付いています。
 「安全神話の崩壊」。阪神・淡路大震災を災害史に位置付けるときしばしば使われる言葉です。災害全体を表すにはあまりにも短いのですが、本質を鋭く突いているようにも思われます。
 関西には大地震が来ない-。被災した多くの人がそう考えていました。高度成長期にたまたま強い地震に襲われなかった印象が残っていたのでしょう。
 1970~80年代は地震予知に希望を抱いていた時期。科学に守られているという錯覚もあった、と振り返る研究者もいます。

◆「安全」と誤解招く恐れ

 関西にも活断層は多く、強い揺れに襲われる可能性があると地震学者は考えていましたが、広く伝える仕組みがありませんでした。
 その反省から始まったのが全国の活断層が起こす地震の規模と確率を数十年の期間で見積もって公表する国の「長期評価」です。例えば「30年以内にマグニチュード7・6程度の地震が発生する確率が2~4%」というものです。
 その評価の集大成が全国地震動予測地図です。30年以内に強い揺れに遭う確率の高さを色分けしたもので、比較的低い地域は色が薄く、高い地域ほど濃くなります。
 地震防災に広く役立ててもらうため、2005年から公開されていますが、その地図が新たな安全神話を生むのではないかと懸念する声も上がり始めています。
 鷺谷威(さぎやたけし)名古屋大減災連携研究センター長は、地図が危険な誤解を招くことを懸念しています。
 「もともと日本は世界の中でも地震リスクの非常に高い場所。そのハイリスクな場所をさらに細かく色分けしている。これでは色の薄い地域が安全であるかのように受け取られかねない」
 予測地図は、テストで90点以上を取った人だけを抜き出した順位表のようだというのです。そこで最下位でも、成績が悪いとは言えません。同様に色の薄い地域も決して安全とは言えないのです。
 しかし、色の薄い地域の自治体が地震の安全をうたって企業を誘致する例がいくつもありました。能登半島地震に襲われた石川県もその一つ。地図の意味が十分に説明されていなかったのです。
 さらに、南海トラフ地震の確率だけが特別な手法で計算されるなど分かりにくく、計算の基となるデータには信頼度の低いものも使われています。そうしたこともほとんど説明されていません。

◆備えて命と暮らし守る

 なぜこんな状況に陥ったのか。地震災害が専門の大木聖子(さとこ)慶応大准教授は「地震学全体は、自らの研究を語るサイエンスコミュニケーションには熱心だが、社会の要求に向き合い、どうすれば人は備えてくれるのかを考えるリスクコミュニケーションにあまりに無関心だった」と指摘します。
 地図づくりを進めてきた国側もその点を十分に補うことができなかった、と言えるでしょう。
 予測地図はもともと、国全体の防災対策に生かすことが目的でした。事情がそれぞれ違う自治体や個人の防災に当てはめるには、より慎重に表現を工夫したり説明することが必要だったのです。
 阪神大震災の衝撃は大きく、その後、地震防災対策は猛スピードで進みました。地震研究の推進や長期評価を担う地震調査研究推進本部が発足したのも、震災発生からわずか半年後です。
 一方、予測地図は作ることがまず決まり、活用方法は走りながら考えるという状況でした。昨年1月の能登半島地震を機に、地図を分かりやすくするための検討が始まり、南海トラフ地震の長期評価の見直しが始まったことも分かりました。阪神大震災から30年近くを経てようやくです。
 災害から命や暮らしを守るには再び安全神話を生んではなりません。科学の最新の知見や英知を生かして地震の長期評価や全国地震動予測地図の在り方が根本から見直されるよう望まれます。

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