岸田文雄首相がきのう、年頭記者会見=写真=の冒頭に説明したのは、新型コロナウイルス対策でした。オミクロン株の市中感染が広がりつつある状況に触れ「最悪の事態が生じる可能性に備えるため、水際対策の骨格は維持しつつも対策の重点を国内対策に移す準備を始める」と述べたのです。
二〇二二年も政治の最優先課題はコロナ対策です。岸田首相が高い内閣支持率を保てるか否かは、今後の感染抑制策や医療体制確保の成否によります。
一方、立憲民主党など野党は岸田政権の対策の不備を指摘し、より効果的なコロナ対応を提案できるかどうか力量が試されます。
「政治は結果がすべて」と言われます。コロナ対策では、その傾向がより顕著です。国民は、日々の感染者数や重症者数、ワクチン接種の進行状況を自身の目で確かめることができ、政府による対策の効果を体感できるまでの時間が短いからです。
このため感染状況と内閣支持率は間を置かず連動します。
政策継続を問う選択に
今夏の参院選はそうした特異な政治状況下で行われます。政権選択ではありませんが、岸田政権による政策の継続か修正かを問う選挙となります。結果はコロナ対策にとどまらず、経済、社会保障、外交・安全保障など政策全般の行方に大きな影響を与えます。
「黄金の三年間」。国会周辺で最近よく耳にする言葉です。
衆院議員の任期満了と次々回の参院選がともに二五年ですから、今夏の参院選以降、衆院解散がなければ、補選を除いて三年間は国政選挙がありません。岸田政権が今夏の参院選で過半数を維持すれば、三年間は政策実現に集中できるという意味だそうです。
国民に選択の機会を与えないという意味では失礼な話ですが…。
逆に、野党が躍進し、与党が過半数を割れば「ねじれ国会」となり、与党は野党の協力なく法律を成立させることができなくなります。十七日に召集される予定の通常国会では、参院選をにらんだ与野党の論戦が期待されます。
ただし、岸田政権は世論を二分する「対決法案」提出は予定していないようです。波風立てずに国会を乗り切れば、黄金の三年間が待っているとの計算でしょう。
時計の針を戻します。第二次安倍政権は一二年十二月の発足から翌年七月の参院選で与党過半数を回復するまで目立った成果を上げていません。特定秘密保護法や安全保障関連法の成立強行など「安倍カラー」を発揮し始めたのは、最初の参院選後です。
岸田首相はどうか。政権の本質や「岸田カラー」はまだ見えてきませんが、少しずつですが、分かってきたことはあります。
一つは、世論に批判された政策の修正をためらわない政治姿勢です。十八歳以下の子どもへの五万円分のクーポン券給付や、日本に到着する国際線新規予約の一律停止要請などです。
好意的に言えば柔軟ですが、一貫性がないとも言えます。
重要課題は参院選後か
もう一つは、前政権までの「負の遺産」を清算しようとの姿勢です。大量に残った、いわゆる「アベノマスク」の在庫廃棄や、森友学園を巡る公文書改ざん訴訟で原告の損害賠償請求を認めて裁判を終結させたことがそれに当たります。桜を見る会も「私の内閣では開催しない」と述べました。
安倍・菅政権の悪影響から逃れたいということなのでしょうが、原因を究明し、再発防止につなげようという姿勢には欠けます。
こうした姿勢を国民の声を「聞く力」とはとても言えません。
首相が検討を指示した「敵基地攻撃能力の保有」を巡る議論はどうでしょう。政権内では議論が進みますが、方向性が明確になるのは参院選後になりそうです。
歴代内閣が違憲としてきた政策への転換になりますから、選挙で是非を問うべきですが、参院選での争点化を避け、選挙が終われば強引に進めるというのでは、だまし討ちにほかなりません。重要な政策課題は先送りし、政権の実績にも乏しく、「岸田カラー」も見えてこない状況で参院選を迎えるとしたら、有権者にとっては難しい選択となります。岸田政権に政策の継続を認めるにしても修正を迫るにしても、政権の本質を見抜いて選択することが極めて重要になります。
野党には通常国会で、コロナ対策はもちろん、政権の本質を鋭くえぐり出すような論戦を期待したいと考えます。
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