飛騨の山猿マーベリック新聞

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◆登録していない派遣会社になぜか名前が スキマバイトで「人の貸し借り」はあった?事務所を訪ねると…

2024年12月12日 08時35分34秒 | ●YAMACHANの雑記帳
〈スキマバイトの隙間  乱立するアプリの陰で〉第6回
スマホ1台あれば、空いた時間にアプリを通じて履歴書も面接もなしに仕事ができる「スキマバイト」。
記者が働いてみると、多くの疑問と謎に直面した。取材を通じて、働き方を問い直します(4~6回は加藤豊大が担当します)。

◆アプリに明示された集合・就業場所で張り込み取材

スキマバイトアプリを眺める。
すると、人材系企業が雇用主となる求人の中には、労働法制をないがしろにしたグレーなものが紛れ込んでいるのではないかと思うようになった。
派遣会社による労働者の日雇い派遣は原則禁止されている。
だから現場の管理をしていないのに業務を請け負ったことにし、1日限りで雇用した人を違法に働かせているのではないか。
それを裏付けるには、多くの現場の実態を調べる必要がある。
人材系企業の求人では「マッチング後に集合場所や就業場所の詳細を伝えます」と詳細が分からないものが多い。
ただ、集合・就業場所がアプリに明示されているものもあった。
それを見つけるたびに、その場所近くで張り込みを始めた。

◆スキマバイトだけで生活をしようとする人も

10月中旬の夕、東京タワーを間近に望む都営地下鉄・赤羽橋駅前の狭い歩道は、20代~40代のワーカーであふれていた。
複数の派遣会社から集められたワーカーらであふれていた、赤羽橋駅地下区の路上。目の前に東京タワーがある

複数の派遣会社から集められたワーカーらであふれていた、赤羽橋駅地下区の路上。目の前に東京タワーがある

その日、シェアフルで人材派遣会社「fosbury」(新宿区)がイベント会場撤収作業のバイトを募集していた。
集合場所に指定されていたのが、赤羽橋駅だ。
集合時間の30分ほど前から駅前で待つと、20代くらいの男性が来た。
長袖長ズボンの動きやすそうな服装で、募集で指定されていた格好に近かった。
声を掛けると、スキマバイトユーザーだった。
男性が契約したのは「OneGenesis」(中央区)という会社だった。
LINEをみせてもらうと、前日から当日にかけてこのOneGenesis社の担当者とやりとりを続けていた。
男性は、以前は食品配達サービスの配達員として働いていたが、「報酬が下がり稼げなくなった」そうだ。
少し前にスキマバイトに登録し、しばらくシェアフルの仕事だけで生活していくつもりだという。
並行して就職活動も進め、間もなく派遣社員として雇用される。
だが、給料は心もとなく、就職後もスキマバイトは続ける予定だと話してくれた。
当初探していた「fosbury」社と契約して来た人もいた。

◆点呼で、登録していない会社になぜか名前が

働く現場は、全員同じで近くのホテル。複数の派遣会社に登録した人たちが同じ場所に集められていた。
外国人も10人ほどいた。
1人に声を掛けると全員バングラデシュからの語学留学生だという。
派遣会社に登録してここに来たと話したが、会社名を聞き取ることができなかった。
「fosburyの人はこちらに集まってください!」
しばらくすると、それぞれの会社の担当者が名簿を手に、集まった人の出欠をとり始める。
不思議なことが起きた。
最初に声をかけた男性が、事前に登録した「OneGenesis」社とは別の派遣会社「ワンダーグループ社」(渋谷区)の名簿に登録されていたのだ。
少し離れたところで様子を見ていた私は、不審に思いこっそり男性に声を掛けた。
「なんでだろう。自分でも分かりません」
困惑していた男性は、そのまま現場に向かった。

◆法人のオフィスは担当者不在の「バーチャルオフィス」

OneGenesis社とワンダーグループ社は別法人。
男性はワンダーグループ社とは雇用契約を結んでおらず、労働者の「貸し借り」は許されないはずだ。
労災が起きたとき、責任の所在はどうなるのか?
両社間で手数料が発生しているのなら、男性に支払われる報酬が不当にピンハネされているのではないか?
契約関係をOneGenesis社に電話かメールで問い合わせたいが、自社ウェブサイトは見つからない。
後日、法人情報を調べると、所在地は東京・銀座の中心部のビルの6階となっている。
ビルに向かうと、フロアに掲げられていたのは「GMOオフィスサポート株式会社」の看板だった。
GMOオフィスサポートのウェブサイトには
「月額660円~」
「バーチャルオフィスがあなたのビジネスを全力サポート」とある。
法人や個人事業主が実際に物件を用意することなく、法人登記や銀行口座開設のために「事業用の住所」が利用できるサービスのようだ。
OneGenesisの本店所在地とされていたビルのフロア。バーチャルオフィスの事業所が単独で入居していた

OneGenesisの本店所在地とされていたビルのフロア。バーチャルオフィスの事業所が単独で入居していた

インターホンでこのフロアの番号を押すと、「GMOオフィスサポート」のスタッフが応答した。
GMOスタッフが常駐するだけで、「オフィス」を借りる事業者らの姿はないという。
事業者に連絡を取りたいと伝えると、
「別途、事業社さまに直接コンタクトをお願いします」との返事が返ってきた。
バーチャルオフィスの法人向けサービスには、郵便物の転送が含まれている。
ビルの郵便受けにOneGenesis社宛ての質問状を置き残したが、現在まで回答はない。
   ◇   ◇    

◆働く男性「どこと雇用契約したか、気にしていない」

10月中旬、新宿にあるイベント会社(X社)がシェアフルを通じて、代々木公園内イベント会場の撤収作業のバイトを募集しているのを見つけた。
X社のウェブサイトによると、厚生労働大臣による労働者派遣事業の許可は受けておらず、各種業務の「請負」を業務内容としている。
派遣業者として、シェアフルを通じて雇用したワーカーを別の事業社が請け負って指揮監督する現場に送り込むことはできないはずだ。
当日、イベント会場に行くと、男女10人ほどがイスやテントの撤去作業をしていた。
超大型トレーラーにそれらの備品を詰め込んでいく。
作業が終わった後、ほかのスタッフに指示を出していた40代くらいの男性に声をかけた。
千葉県の別のイベント会社(Y社)の代表取締役で「この現場を仕切っている」と言った。
現場を指揮監督しているのはX社ではなかった。
Y社がイベント主催者から直接、元請けとして撤収業務を受けたのだという。
「協力会社が何社かいて、入ってもらっています。会社名は言えません」
その代表取締役は言った。
X社について聞くと
「別の下請け会社がスタッフを連れてきたので分からない」という。
シェアフルで申し込んだ男性にも話を聞けた。
どこの会社と雇用契約したのかは「気にしていないから分からない」という。
現場については「元請け、下請け、孫請けとたくさんいるんでしょう。どこのだれが仕切っていたかなんて分かりませんよ」。

◆求人を出した会社「ルールは走りながら勉強中」

この現場は、実質的にはX社を派遣元とし、Y社を派遣先とする労働者派遣契約なのではないか。
そうであるならば、X社は派遣事業に関しては無許可だし、原則禁止の「日雇い派遣」もしていて、二重の不正をしているのではないか。
求人を出したX社はどんな説明をするのか。
違法な日雇い派遣が疑われるスキマバイトの現場となった代々木公園イベント会場

違法な日雇い派遣が疑われるスキマバイトの現場となった代々木公園イベント会場

会社のウェブサイトに掲載されていた番号に電話をかけ、やりとりをした男性社員と約束をした上で、JR新宿駅近くの本社所在地に向かった。
マンションの1室。
30平方メートルほどのワンルームにデスクやソファが整然と配置され、清潔な雰囲気が漂う。
ベッドがないことを除けば、1人暮らしの住居だと言われても疑わない。
電話でアポをとった若い男性社員は、今回の現場について、別の取引先企業から「人を出してほしい」と言われたという。
社員1人とシェアフルで募ったワーカー1人の計2人を送ったと説明。Y社側の話と合致する。
労働者派遣事業と請負との区別に関する厚労省のガイドラインにはこうある。
元請け業者と下請け業者が混在して同じ現場で作業をする場合、下請け業者の労働者が元請け業者から独立して業務を処理しなければ、実質的には派遣労働だとして「偽装請負」と判断される。
つまり、元請け業者が下請け業者に、業務方法に関して直接指示をすれば、違法とされる可能性がある。
しかし、男性社員によると、今回の現場も含め、元請け業者から下請け業者に業務に関する指示が出ることは日常茶飯事だ。
「大元(元請け業者)がいちばん偉い。『これ危ないからどけて』『これ運んどいて』と言われれば、それに従う」
違法の可能性が高い行為に思えるが、なぜ現場では許されるのか。
男性に労働規制との関係を尋ねると
「私もその辺は不勉強で…。正直な話、ルールは走りながら勉強している感じです」と打ち明けた。

◆労働現場で数々のルール違反が横行している可能性

過去に、こうした現場でX社の労働者が負傷する労災が起きたときは、どうしたのか。
元請け会社とX社、同じ現場にいた別の下請け会社が、労働者に出していた指示内容などを踏まえて協議し、どこが責任を負うべきか決めたという。
「一般的に元請けの発言力は大きい」とも言った。
労働現場で違法行為が横行しているとすると、要因の一つには事業者がルールへの理解や認識を欠いていることがあるのかもしれない。
労働の現場では数々のルール違反が横行している可能性が高いことが分かってきた。
それが何を意味するのか。背景には何があるのか。
「国による労働規制は現場の実態に全く合っていない」
その後、人材会社幹部がそう打ち明けてくれた。
 ◇
東京新聞では「スキマバイト」での困り事や経験談、ご意見を募集しています。
メールはogawa.s@chunichi.co.jp、郵便は〒100-8505(住所不要)東京新聞社会部「スキマバイト取材班」へ。
 

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