ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が核の威嚇を一段と強めている。「核ドクトリン(基本原則)」を改定して核兵器の使用基準を引き下げ、「実験」と称して核搭載が可能な新型中距離弾道ミサイル(IRBM)でウクライナを攻撃した。
核兵器をもてあそぶロシアに国連安全保障理事会常任理事国の資格はない。日本政府は唯一の戦争被爆国として、ロシアに強く自制を求める先頭に立つべきだ。
ロシアの核ドクトリンはこれまで、核兵器の使用条件を「国家存亡の危機」に限定していたが、改定後は「主権および領土保全に対する重大な脅威を生み出す通常攻撃」にも広げた。
巡航ミサイルやドローン(無人機)などが大量発射され、ロシアを攻撃する情報を得た場合にも核使用を可能とし、核保有国が支援する非核保有国も核攻撃対象になると明記した。ウクライナが念頭にあることは明らかだ。
北朝鮮のウクライナ参戦を受け米政権がウクライナに長距離地対地ミサイルATACMSのロシア国内への使用を容認した直後、プーチン氏は開発中の極超音速IRBM「オレシニク」でウクライナ東部ドニプロを攻撃したと発表した。プーチン氏はオレシニクが多弾頭で迎撃不可能とする。
欧州では冷戦時代から、米国には届かないものの欧州各都市を短時間で攻撃可能なロシア(ソ連)のIRBMに対する恐怖が強い。オレシニクの実戦使用で核の脅威が一段と高まった形だ。
プーチン氏が核の威嚇を強める背景には、米欧間や欧州内での亀裂を誘い、ウクライナに屈服を迫る内容の和平協定を強要する狙いがあるが、核兵器廃絶を求める国際世論の高まりに逆行する。
ノーベル平和賞を今年受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳(てるみ)さんは授賞式での演説で「『核のタブー』が壊されようとしている。限りない悔しさと憤りを覚える」と訴えた。
ロシアをはじめ核の威嚇を続ける指導者は、核廃絶を求める声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます