海上自衛隊の潜水艦修理を巡る川崎重工業の物品提供問題で、川重が少なくとも40年前から架空取引で裏金を捻出し、物品購入に充てていたことが、同社が設けた特別調査委員会と防衛省の特別防衛監察の中間報告で分かった。自衛隊と防衛産業との構造的癒着は言語道断で、断ち切るべきは当然だ。膨張する防衛予算の背景に、こうした癒着があるのなら、国民の理解は到底得られまい。中間報告によると、海自側は潜水艦の修理点検の際、川重側に部品や工具だけでなく、家電や娯楽品の要望リストも渡していた。川重は下請け業者との養生材などの架空取引により、2023年度までの6年間だけで約17億円の裏金を捻出、要望品購入や乗組員との飲食代などに充てていた。過大に請求された裏金相当分も税金である防衛予算の一部。防衛省が川重に過大分を返納させるのは当然だが、私物まで求める乗組員の倫理観の欠如には驚くほかない。関係者の処分は不可欠だ。川重側の報告では、同社社員らは乗組員の「おねだり」を断ることで現場の空気が悪化することを恐れたのだという。ただ、架空取引による過大請求には、契約金額を削られないように積算額をかさ増しする川重側のもくろみもあった。官民癒着にほかならず、断じて許されない。再発防止にはコンプライアンス(法令順守)教育などの徹底が必要だが、その場しのぎの対応では効果は期待できない。12年には陸自の次世代型ヘリコプター開発の業者選定を巡り、川重に自衛隊側が有利な情報を漏らした問題が発覚。2等陸佐2人が官製談合防止法違反の罪で罰金の略式命令を受けている。今回の物品提供問題は、自衛隊が防衛産業との癒着を断ちきれないことをうかがわせる。抜本的な対応が必要ではないか。特別防衛監察では、現場で必要な備品などと防衛省の予算措置の不一致も指摘された。構造的な問題が不正の一因になった可能性もあり、早急に是正すべきだ。防衛省は中間報告を仕事納めの12月27日に公表。特定秘密のずさんな取り扱いや幹部のパワハラ、潜水手当の不正受給などの不祥事も併せて発表したが、それぞれ精査が必要な内容だ。政府は今月下旬に召集予定の通常国会で詳しく報告し、審議に付すべきである。
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