与党が20日に決定する2025年度税制改正大綱では、19〜22歳の子を扶養する親の税負担を優遇する特定扶養控除における子の年収要件の緩和が盛り込まれる。現行の要件103万円以下になるよう就業調整している大学生らは推計で61万人とされ、150万円以下への引き上げに歓迎の声が上がる。一方、学生の労働時間増につながる可能性があるため、学業への影響も懸念される。(高田みのり、白山泉)
◆来年は社会人「もっと早ければ…」
「ようやく自分たちにもスポットライトが当たった」。都内私立大4年の男子学生(22)は、特定扶養控除の引き上げ方針を歓迎する。1人暮らしをしながら登録制の派遣アルバイトなどを掛け持ちし、食費や高熱費、被服費などは自ら工面してきたという。
親の税負担増につながる「年収103万円」はもちろん、自身に住民税が生じる「100万円」のボーダーラインにも考慮し、年間収入はいつも99万5000円程度に調整。超えそうな時にはシフトを抑えた。周囲の友人にも「年収の見込みを101万円や102万5000円で止めている人が何人もいる」という。
特定扶養控除における子の年収要件緩和は「うれしい」。ただ、来年4月には社会人になるため「もう数年早く着手してほしかった」との本音もらした。
◆61万人が就労時間を調整か
大和総研の試算によると、年収103万円以下を意識して就労時間を調整する学生は約61万人。年収要件の緩和は、働き控えの解消や消費増にもつながり、一定の経済効果もあると期待される。
だが、メリットばかりとはいえない。給付型などの奨学金情報提供サイトを運営する「ガクシー」(東京都港区)の松原良輔CEO(最高経営責任者)は、学業とのバランスを懸念する。特定扶養控除の要件緩和を「奨学金などで『学びの資金』を賄いきれない学生たちにとって前向きな施策」と評価する一方、「働きすぎを助長し、学業が犠牲になってしまう懸念もある」と指摘。学業しやすい環境を作るため、奨学金寄付への税控除など学生支援に対し、周囲からお金が流れる仕組みづくりを訴えた。
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