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★中東諸国も安倍元首相国葬にソッポ…軍事協力強化に踏み切ったイスラエルからの要人はゼロ

2022年09月24日 10時52分27秒 | ●YAMACHANの雑記帳
宮田律
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宮田律現代イスラム研究センター理事長

1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン~世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。近著に「黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル: 「反イラン枢軸」の暗部」(平凡社新書)。

中東諸国も安倍元首相国葬にソッポ…軍事協力強化に踏み切ったイスラエルからの要人はゼロ

岸田首相は、27日に行われる安倍晋三元首相の国葬に弔問外交で各国との関係を強化すると述べてきたが、これについてはジュネーブ軍縮会議代表部大使、日朝国交正常化交渉政府代表などを歴任した元外交官の美根慶樹氏は朝日新聞(9月19日)で具体的な外交成果はほとんど期待できないと述べている。外交的成果を上げるには緻密な準備が必要であるし、葬儀の席上では各国代表同士の具体的な意見交換も難しいからだそうだ。

 美根氏の言葉を筆者の専門である中東諸国に当てはめれば、緻密な準備もなく、具体的な意見交換の前提になるほどの要人が来ないから外交的成果を期待するのは難しいということになる。

■親イスラエルに舵を切ったことで邦人犠牲者が2人も出た

 イスラエルはギラッド・コーヘン大使の参加だけでイスラエル本国から要人はまったく来ない。昭和天皇の大喪の礼にはハイム・ヘルツォーグ大統領が参列し、エリザベス女王の国葬にはハイム氏の息子のイツハク・ヘルツォーグ大統領が出席した。イスラエル政治では実務は首相が担当し、大統領は儀礼的存在だが、外国元首などの葬儀には大統領が出席するのが外交上の礼儀となっている。閣僚クラスの参列もないことは安倍氏の国葬が重視されていないということだろう。

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安倍氏は首相在任時代、イスラエルとの関係強化に熱心であった。イスラエルとの安全保障協力を推進し、日本の国家安全保障局とイスラエルの国家安全保障会議との会合を行うことで合意したり、日本で生産された部品がイスラエルも使用するF35戦闘機に使用されたりすることになった。自衛隊幹部のイスラエルへの派遣、サイバー・セキュリティや無人機に関する協力も確認されている。

 こうしたイスラエルとの防衛協力は安倍政権が初めてで、安倍政権のイスラエルに傾斜する姿勢はアラブ世界の日本への良好な感情を損なう危険性を孕んでいた。2015年1月、シリアで日本人2人が「イスラム国(IS)」に拉致された時、安倍元首相はイスラエルのネタニヤフ首相との間で、イスラエル国旗の前で両国の連携強化を確認した。ISはそれに反発するように日本人の人質たち2人の首を斬った。安倍氏が親イスラエルとも言える外交に舵を切ったのは彼が重視した対米外交への配慮もあったのだろう。米国はよく知られているようにイスラエル最大の後ろ盾だ。

■昭和天皇の大喪の礼やエリザベス女王の国葬と比較すると…

湾岸諸国に目を向けても要人らしい人はやって来ない。イランは大喪の礼ではモスタファ・ミールサリーム副大統領が来日したが、安倍国葬にはジャヴァード・オウジー石油相の参加が予定されている。オウジー石油相はイラン東部のアフワーズ石油工科大学の出身で、国営イラン・ガス会社のトップを務めるなど、ずっと石油関連のポストに就いてきた。イランが石油相を派遣する背景には日本に石油を購入してほしいという狙いがあるのかもしれないが、米国などとの核合意が再建しない中で、イランからの石油・ガスの輸入の再開は難しく、外交的進展は望めない。

 サウジアラビアは、大喪の礼では後に国王となる(在位2005~2010年)アブドラ皇太子が出席した。また、エリザベス女王の国葬には、ワシントンポスト紙のコラムニストだったジャマル・カショギ氏の殺害を指示したとされるムハンマド皇太子が招待されると、イギリス国内では反発の声が上がり、代わって王族のトゥルキ・ビン・モハメド国務大臣が出席した。安倍国葬に参列するのはファイサル外相で、イギリスが当初招待したムハンマド皇太子の権力にはほど遠い。ファイサル外相が今年7月に来日した際に岸田首相は原油市場の安定に協力を要請していて、国葬の機会で何か目新しい進展があるとは思えない。UAE(アラブ首長国連邦)は日本の石油輸入の割合では30%前後とサウジアラビアと並んで重要な国だが、大喪の礼では現ムハンマド国王(当時は参謀副総長)が参列したが、安倍国葬ではハーリド・アブダビ執行評議会委員兼執行事務長とジャーベル産業・先端技術大臣兼日本担当特使が参加する。エリザベス女王の国葬にはムハンマド副大統領が出席したのに比べると、やはり見劣りは否めない。

 中東諸国の出席者を見ただけでも大喪の礼という国葬と、あるいはエリザベス女王の国葬と安倍氏の葬儀を「国葬」という同列に置いて、16億円を超す高額の税金を費やす価値があるのだろうかとあらためて思わざるを得ない。中東諸国の側も派遣する人々を見ると、安倍国葬で何らかの外交的成果を期待するという意気込みや姿勢が伝わってこない。

 ペルシャ語司法通訳・翻訳に携わっている川嶋啓子さんによれば、イランの言葉「パシマニー」という「後悔している」という言葉は「どうしてこんなこと、しちゃったんだろう」というニュアンスだそうだ。引き返す勇気があれば、「どうしてこんなことをしちゃったんだろう」にはもちろんならないが、岸田首相には国葬についても引き返す勇気がなかったのだろう。


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