国の府省庁が設置する計190基金の2022年度末残高の総額が、新型コロナ禍前の約7倍に膨れ上がっていることが本紙の集計で分かった。2兆円台で推移していた残高は、コロナ対策などの名目で20年度末から急増し、今年3月末時点で約16兆6000億円に達した。近く編成する23年度補正予算案で一層の膨張が懸念されるが、原資は国民が納める税金や国債だ。白鷗大の藤井亮二教授(財政学)は「使途が曖昧なまま必要以上の予算を計上した結果。財政資金が有効活用されず、国民負担を増やしている」と批判する。(山口哲人)
国の基金 複数年度にわたる中長期的な課題に対応する事業を行うため、主に府省庁の予算を原資とし、独立行政法人などに設立される。事業者や生産者らに補助金などを交付する形のものが多い。柔軟な運用が可能な一方、国会や所管府省庁の監視が行き届きにくいという問題も。ため込まれて使われないことから、しばしば「埋蔵金」と批判される。
◆補正予算のたびに水膨れする「埋蔵金」
残高が膨らんだのは、補正予算編成のたびに大幅に積み増してきたためだ。各府省庁は一定の歯止めがかかる当初予算を避け、規模優先で査定が甘くなりがちな補正予算で基金に資金を注ぎ込んでいる。
基金向けの補正予算額は19年度以前は数千億円だったが、20年度以降は毎年5兆〜10兆円を計上。巨額の補正予算で手当てしながら未執行の事業も少なくないため、残高が積み上がる結果につながった。
◆「将来の需要分からぬ」使い残しの返納は進まず
一方で各府省庁は、不要な分の国庫返納には後ろ向きだ。返納額は20年度に746億円、21年度に5488億円、22年度は251億円にとどまる。
この結果、19年度末に約2兆4000億円だった残高は、コロナ禍を理由に大幅な資金投入が始まった20年度末は約8兆3000億円に。21年度末には約12兆9000億円、22年度末には約16兆6000億円と、異例のペースでため込まれていった。
国は今年6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で「コロナ関係予算で積み上がった基金は、余剰金の国庫返納の徹底を進める」と明記するが、多くの基金は「将来の資金需要の把握は困難」と、国庫返納に応じていない。
◆1000億円のうち147億円しか使われなかった例も
府省庁別の残高は、経済産業省所管の61基金が計約11兆5000億円で最多。コロナ対策として中小企業などの借入金利を実質補填する「特別利子補給事業」は、22年度に需要を見込んだ1000億円のうち147億円しか使われず、年度末に2000億円超の残高があった。
基金を総括する内閣官房の担当者は、取材に「各基金の金額が妥当か議論を重ねた結果が16兆6000億円で、総額だけで良しあしは判断できない」と答えた。
藤井氏は「基金に積む財政資金は赤字国債の発行などで調達している。利払い費も発生するため、さらに国民負担を助長している」と指摘する。
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