イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を拡大している。国連総会の人道的休戦を求める決議に背を向けた形だ。ガザ住民の犠牲を激増させる本格侵攻をイスラエルは自重すべきだ。
パレスチナのイスラム組織ハマスの急襲によるイスラエル側の犠牲者が1400人を数える一方、報復空爆によるパレスチナ側の犠牲者は8千人を超えた。このうち3千人以上が子どもたちだ。
ガザは封鎖され、支援物資の対象から外れた燃料が枯渇し、医療機関の約半分が閉鎖された。
イスラエル軍はガザ北部の住民に南への移動を命じたが、南部も空爆し、犠牲者が絶えない。
国連は機能不全に陥った安全保障理事会に代わり、総会の緊急特別会合を開き、加盟193カ国中121カ国の賛成(日本は棄権)で人道的休戦の要求を決議した。
即時停戦を求める国際世論を示すものだが、決議に法的拘束力はなく、イスラエルは決議を一蹴。戦闘を激化させている。
国連のグテレス事務総長は、ハマスの襲撃を非難しつつ、国際法違反のイスラエルの占領政策が背景にあると指摘した。しかし、イスラエルの国連大使は「テロの容認」と激高し、グテレス氏に辞任要求を突き付けた。
ハマスの襲撃と人質拉致は非難されて当然だが、ハマスと一線を画すパレスチナ諸派は批判を控えている。イスラエルの占領、入植政策への憤りが上回るからだ。
イスラエルの攻撃を事実上容認し、人道危機の阻止を最優先しない欧米主要国の責任も大きい。
とりわけ欧州はパレスチナ問題の当事者である。一連の紛争は、欧州でのユダヤ人迫害や、欧州列強による中東の植民地支配の歴史と無関係ではあり得ない。
歴史の負の遺産を、最も弱い立場の人びとの犠牲で糊塗(こと)するようなことになれば、西側の人権概念自体が崩れかねない。
暴力停止に一刻の猶予もない。イスラエル、ハマス双方とも休戦に応じるべきだ。国際社会も、座視すれば国連が存在価値を失うことを強く自覚すべきである。
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