主張
辺野古・サンゴ移植
国は違法な指示を取り下げよ
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐるサンゴの移植問題で、玉城デニー知事が野村哲郎農林水産相を相手取り福岡高裁那覇支部に提訴しました。防衛省が埋め立て工事のため申請したサンゴの移植を知事が不許可にしたのに対し、農水相が許可するよう是正の指示をしたのは違法だと訴えたものです。移植対象のサンゴは軟弱地盤のある埋め立て予定海域に生息します。知事は同海域での埋め立て工事を認めておらず、サンゴを移す必要はもともとありません。工事への既成事実を積み上げることが狙いであり、農水相の指示は取り消されるべきです。
知事の提訴は当然
防衛省沖縄防衛局は昨年7月、辺野古北側の大浦湾の埋め立て予定海域に生息している小型サンゴ類約8万4千群体、ショウガサンゴ8群体、大型サンゴ類21群体を移植するため特別に採捕する許可を知事に申請しました。
大浦湾の埋め立て予定海域には、「マヨネーズ並み」の軟弱地盤が広がっています。埋め立て工事には、地盤の改良が必要です。沖縄防衛局は地盤改良のため埋め立ての設計変更の承認を知事に申請しましたが、知事は不承認にしました。大浦湾側の埋め立てはできない状態にあります。
そのため知事は昨年9月、サンゴ移植の必要性は認められないとして沖縄防衛局の申請を不許可にしました。
これに対し沖縄防衛局は、農水相に行政不服審査請求を行いました。農水相は昨年12月に知事の不許可を取り消し、さらに今年3月には知事に許可を出すよう是正の指示を行いました。知事は総務省の国地方係争処理委員会に対し農水相による是正の指示の取り消し勧告を求める審査を申し出たものの、同委は今年7月に知事の訴えを不当にも退けました。このため今回の提訴に至りました。
大浦湾にある軟弱地盤を改良するための埋め立て設計変更を知事が不承認にしたことをめぐっては、国土交通相が昨年4月、沖縄防衛局の行政不服審査請求を受け、知事の不承認を取り消す裁決と、承認するよう求める是正の指示を行っています。
サンゴの移植をめぐる農水相の是正の指示は、この国交相による裁決と是正の指示を根拠にしています。しかし、知事は国交相の裁決と是正の指示はいずれも違法だとして提訴し、現在、最高裁で審理中です。埋め立て設計変更は承認されておらず、沖縄防衛局は大浦湾での埋め立てを行うことを許されていません。
国交相の裁決はそもそも、私人の利益救済を目的とする行政不服審査法を乱用した沖縄防衛局の違法な審査請求に基づいています。国交相も、岸田文雄内閣の一員として辺野古新基地建設推進の立場で一致しています。同相が審査庁たり得ず、裁決が無効なのは明らかです。
新基地建設阻止を
サンゴは環境の影響を受けやすい生物です。移植すれば多くのサンゴが死滅することが分かっています。大浦湾の地盤改良は難工事が必至で、完成が疑問視されています。政府が新基地建設の目的にする「普天間基地の危険性の早期除去」にはなりません。大浦湾の貴重なサンゴを守るには、新基地建設を阻止することが必要です。
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