以前長男の嫁と話していたとき、何かの話題で私が「桃色」と言うと、彼女は笑い出して「桃色?」と問い返し「ピンクでしょう」と言った。そのときは私には桃色とピンクの違いが分からず、桃色はオジイ語のようにとられたのかと思ったが、それ以来何となく気になっていた
改めてインタネットで『和色大辞典(日本の伝統色465色の色名と16進数)』を見ると「桃色」は確かにあり、私が頭の中で描いていたような色だった。それでは「ピンク」はどうかと、GoogleでWikipediaを見ると、「ピンク(英語: pink)は赤と白を混ぜて出来る色の一つ。しばしば明るい赤と表現されるが、(中略)濃淡によってさまざまなバリエーションが存在する」とあり、さらに「英語の pinkは、元来ナデシコの意であり、シェークスピアの時代にはまだ色名としての用法はなかったとされる。後に、ナデシコの花の色を指して pink、すなわち『なでしこ色』と呼ぶようになった」とある。また日本語の色との関係については、「日本語では英語を借りて『ピンク』『ピンク色』と呼ぶのが一般的だが、モモの花に見立てた『桃色』の名もある。ほかに『撫子色』(なでしこいろ)、『石竹色』(せきちくいろ)などナデシコに由来する和色名もあるが、これらが英語 pink の同義語として扱われてきた実績がとくにあるわけではない」とあり、もう一度『和色大辞典』を見ると日本の伝統色として「撫子色」も「石竹色」もある。そのようなことで嫁が言う「ピンク』も、私が言った「桃色」もまあまあ同じようなものだったことになる。他愛もないことも、これで一段落したが、多分私はこれからも習慣で「桃色」と口にするだろう。
これを機会に『和色大辞典』を見直すと、日本の伝統色は実にさまざまある。世界でこれほど多くの色名がある国は他にはないのではないかと思うくらいだ。四季折々の自然豊かな日本だけあって、動植物に因む名が多いが、鼠色や茶色などの種類も多い。
江戸時代の幕府は、たびたび奢侈禁止令を出し、衣類については絹物を禁止する他にも、使用する色についても紅や紫などを禁じた。しかし、徐々に財力を蓄え、自信を持つようになり、反骨精神も旺盛になった町人達は、禁じられた色こそ使わなかったが、鼠や茶などにさまざまな微妙な変化を考案し、「四十八茶百鼠」(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)と称される多様な鼠色や茶色を生み出し、それらに風月山水や有名人の名(利休茶)、歌舞伎役者の名(団十郎茶、路考茶、梅幸茶など)をつけ、それを粋なもの、通なものとしてもてはやした。その反骨精神と創造力には感心するばかりだ。江戸時代の町人階級のありように思いを馳せながら『和色大辞典』にあるさまざまな色を見ていくのも楽しい。
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