7月26日
あちこちの木でクマゼミが盛大に鳴いている。木を震わすような騒がしさだ。そばを通る時持っている杖で幹を叩いても上の方にいるのか、飛び立ちもしないし、鳴き止みもしない。まさに我が世を謳歌している感じだ。1本の木のすぐ上に止まっていたので杖で軽く幹を叩くとシャット小便のようなものを引っ掛けて飛び去っていった。子どものころ見たクマゼミよりはずいぶん小型だ。
セミがまったくいない国の人がこのセミの声を聞くと驚くそうだ。真偽のほどは知らないが、そんなある国の金持ちが、喧しく鳴いているセミの声を聞いて、「あの音を出す木を譲ってほしい」と言ったとか。ミンミンゼミやヒグラシ、ツクツクホウシならいざ知らず。クマゼミの大合唱のような音を出す木では、すぐに辟易してしまうだろう。
7月27日
4時半ごろ私鉄の電車に乗った。今日は猛烈な暑さで駅に行くまでに少し気分が悪くなるくらいだったが、電車に乗ったら冷房で少しは楽になるだろうと期待した。ところが電車の冷房はほとんど効いていないで車内は生温かく、弱冷車よりもずっと温度が高い。乗客の多くは扇子や団扇を使っている。
この私鉄では途中で車内アナウンスが入る。「車内ではエチケットを守り、快適なご乗車にご協力ください」と言う。「何が快適なご乗車だ。『国策』か『電力会社策』かに協力して、『節電』に努めているのだろうが、今日のような猛暑日には少しくらい気を効かしたらどうなんだ」と、いささか八つ当たり気味に思った。高齢者なら熱中症を起こしかねない。
帰りは夜10時を過ぎていた。帰る人も多く、昼間は節電していたから、夜も暑いだろうと思ったが弱冷程度にはしていて、かすかに涼気が感じられた。一日のうちで最も暑い時間が節電時間帯なのだろうが、本当に電力は不足しているのか。近頃は国や電力会社の言うことややることは何か信じられなくなった。
7月28日
夕方街に出ようとしたら、近くに住む知り合いの Iさんに出会った。Iさんはこの近所に畑を借りていて、私は西安の謝俊麗からもらった野菜の種子を時々あげ Iさんは収穫した野菜を分けてくれる。篆刻を趣味にしていて仲間と時々中国へ行っていた。そんなことでいつの間にか親しくなった。
一緒に街へ下りて行く途中で、Iさんが何気ない口調で「家内が死にましてね。四十九日を済ませました」と言ったのでびっくりした 。「それはご愁傷さまです」「いや、人に言うほどのことはありませんから」と、そんな会話を交わしたが、肝臓癌だったそうで、入院して15日で亡くなったとのことだ。「結婚して病気がちでね」と言ったが、奥さんは86歳、Iさんは88歳とのことで、高齢になって伴侶を喪い独りの生活になったのは寂しいことだろう。我が身を思ってしんみりしてしまった。
7月29日
このところの暑さのせいにするわけではないが、近頃は何かにつけ消極的になっているように思う。ブログでもそうだが、何か気が乗らない。本を読もうとしても前のように根気が続かない。別にぼんやりと沈みこんでいるようなウツのような状態ではないのだが、きりっとしない。いつも疲労感がある。
街へ下りていく途中にちょっと急な坂がある。近所の奥さん達もこの坂は嫌いだと言う。若い元気な頃はこの坂を上がるのは自分の体の状態のバロメーターのように思っていた。仕事が終わって夜帰る時、この坂をすたすたと上がって行けたら今日は元気だと思い、少し息切れすると、ちょっと疲れているなと思ったりしたものだ、それが今ではよたよたと絶えず息を継ぎながら登る。
体力的にはこれまで長い間運動不足だったから仕方がないにしても、気分が溌溂としないのはよくない。元気そうなブログ友のブログを見ていると羨ましくなる。