消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案が衆院本会議で自民党と公明党などの賛成で可決しました。このことについて全国紙はこぞって社説で「評価」しています。
たとえば『毎日』は、「一連の法案が衆院を通過し、参院でも可決・成立する見通しとなったのは、与野党の足の引っ張り合いから脱却し、『決める政治』への一歩となったと改めて評価したい」と言っていますし、『読売』は、「衆院議員の実に約8割が、賛成票を投じたことを評価したい。『決められない政治』に決別し、参院で法案を確実に成立させなければならない」としています。さらに『朝日』は、論説主幹代理が「ひとまず決められない政治を脱した、18年ぶりに消費税率引き上げの衆院通過を果たし、成果を上げたことは評価できる」と言っています。
『朝日』は、同じ紙面で「中間所得層、重い負担」という見出しで、「収入が少ない人には負担が重くのしかかるばかりか、普通の収入を得ている多くの『中間所得層』の家計にも負担増が直撃する」と解説しています。今度の税制改革で、消費税率が2014年4月に8%、15年10月に10%になることは分かっていましたし、これまで大新聞は歩調を合わせたように増税法案に賛成していましたから、何を今更という感じす。28日の『朝日』には、同社が実施した全国緊急世論調査によると法案に賛成が39%、反対が52%だったそうで、このような国民の声を大新聞はどのように受け止めるのでしょう。
全国紙に比べると地方紙は強く批判しているものがあり、例えば『東京』紙は次のように言っています。
「消費税は増税しないと衆院選で公約した民主党による約束違反は明白だ。苦い教訓は次の選挙にこそ生かしたい。 有権者のやり場のない怒りは、どこにぶつけたらいいのだろう。 二〇〇九年衆院選で、消費税は増税しないと公約して政権交代を実現した民主党議員が、敵対していた自民、公明両党と結託して消費税率引き上げ法案に賛成する。 自民党とは違う脱官僚や政治主導、税金の無駄遣いを徹底的になくすことで「コンクリートから人へ」の政治実現を期待した有権者の民意は完全に踏みにじられた」
また私の地方の『神戸』紙は、
「これで 『改革』といえるのか。衆議院を通過した社会保障と税の一体改革関連法案には、そんな疑念が募る。 消費税率を10%に引き上げるのに合わせ、低所得者に最大で月5千円の『給付金』を配る。 だが民主党がマニフェストに掲げた最低保障年金制度の創設や後期高齢者医療制度廃止は、今後発足する『国民会議』に議論を託す。先送りである。 社会保障の将来像が明確に示されないまま、増税が決まった。一歩踏み出したが、国民にとって納得しにくい形だ」
『北海道』紙は
「消費税増税は民主党の2009年衆院選マニフェスト(政権公約)になかった政策である。野田佳彦首相はこれを実施へとかじを切り、実現のために自民党と手を組んだ。 一方で国民に約束した政策は次々と棚上げした。自民党政治からの変化を求め民主党に政権を託した有権者には想像もつかなかったことだろう。民意を軽視した背信行為だ。政権交代の大義を曲げて増税に突き進む首相の責任は極めて重い」
一部ではあるかも知れませんが、このような地方新聞の論調のほうが私にはよく理解できます。今の大新聞に「社会の木鐸」としての役割を期待するのは無理なことなのでしょうか。
巨大メディアが権力追随・国民を声を伝えなくなるのは危険な時代の始まり。
不買運動などを含む、批判の声を高めることが大事だと思います。
一方民主党内ではマニフェスト違反とし造反勢力が離党し新勢力で新党結成模様。またもや「壊し屋小沢」による少数党同士の政権争いの戦国時代。これでは大震災や経済早期復興計画など遅れるばかりです。