夕方陽が落ちてから近所の田んぼのそばを通ると、あちこちでカエルの鳴き声がしています。私が通りかかると鳴き声はピタリと止み、しばらくはシンとしているのですが、しばらくじっとしていると、やがてどこかで1匹がクアッ、クアッ、クアッ、と鳴き出すとそれにつられてまた一斉にに鳴き出します。私はカエルもその声も好きです。水に反響するカエルの声を聞くと、涼しい感じがしてほっとします。ただ近頃はそのカエルも減ってきたのか声が少なく寂しく思います。
私が結婚した当初、昭和30年代の初めは兵庫県の伊丹市に住んでいました。そのあたりは一応住宅地でしたが、少し離れると田んぼが広がっていました。ある夜になると急に天にこだまするようなカエルの大合唱が起こり、ああ、田んぼに水が入ったなと思ったものです。家から田んぼのある所まではちょっと離れているのですが、カエルの声はまるで天から降りそそいでいるようでした。今のように開発が進んでいなかったので水田や溝が多く、どこにでもカエルがいました。 実際その頃はカエルの種類も数も多かったのです。実験に必要でよくカエルの採集に行きましたが、勤務校のある西宮市でも水田やきれいな水が流れている溝が多くあり、カエルも多くおりました。私は学生時代に両生類を扱う教室にいましたので、西宮市のカエルにも興味を持って種類を調べてみました.するとずいぶんいろいろなものがいました。
トノサマガエル、ダルマガエル(トノサマガエルと似ている)、ニホンアカガエル、ニホンアマガエル(俗にアオガエル)、モリアオガエル(卵塊を樹上に産む)、
シュレーゲルアオガエル(卵塊を田の畦に産む)、ツチガエル(俗にイボガエル)、ヌマガエル(ツチガエルに似ているが皮膚が滑らか)、カジカ(美しい声だけ聞く)、ウシガエル(俗に食用ガエル)、ニホンヒキガエル(俗にガマ)。
*タゴガエル:近くの山の渓流の岩壁の間に卵を産んでいました。西宮の山にもいるのではないかと思います。日本には38種5亜種のカエルがいます。
タゴガエル
40年ほど前に現在の地に移ってきましたが、その頃はトノサマガエルやダルマガエルは見かけませんでしたが、ツチガエルやヌマガエルがいて、賑やかな鳴き声でした。それらも、田の水の水質の悪化のためか、今ではニホンアマガエルしかいなくなりました。カエル好きとしては寂しい限りです。
ツチガエル
ヌマガエル
カエルは特に目がつぶらで可愛いですね。
アマガエル
私の母はどうしたものかこんな可愛いカエルが大嫌いで、庭を掘っていたらヒキガエルがごろりと出てきたり、取り入れようとした洗濯物に止まっていたアマガエルをつかんだり、そのたびに年甲斐もなく大きな悲鳴を上げていました。そんな母を懐かしく思います。
東京の祖父の家の庭はなかなか立派でしたが、ある夕方、植え込みの奥から一匹の大きなヒキガエルは出てきて蹲りました、それを見た祖父がひどく喜んでしばらく眺めていたことがありました。風情があると思ったのでしょう。もう70年近くも前のことですが、今でもその時の様子を思い出します。ヒキガエルは歩く姿は不恰好ですが、蹲っているとなかなか風格があります。
カエルが減ってきたのは、住宅などの開発が進められたのと、それに伴って水質が悪化したからで、開発と言うのは自然を壊していくものだとつくづく思います。開発され破壊された自然は二度と元に戻りません。
写真はインタネットの「日本のカエル」から拝借しました。http://www.hkr.ne.jp/~rieokun/frog/jpanfrog.htm
モリアオガエルとヒキガエルは弟が撮ったものです。