図書館で何となく手に取った本でしたが、面白い推理小説でした。作者が東野圭吾さんで、後から分かったのですが第26回柴田錬三郎賞を受賞した作品でした。衝撃的なプロローグが何を意味しているのか分からなかったものの、終盤になってその意味が分かってきます。
主人公は原子力工学を大学院で学ぶ蒼太、在学中に3.11の事故が起きて将来の展望が描けなくなった若者です。彼と一緒に謎解きをするのは梨乃、水泳のオリンピック候補選手だったものの、あることから挫折してしまった女子大生。
現存しない黄色いアサガオの種にからむサスペンスですが、エピローグの蒼太の言葉に救われました。
「実質的にこの国は、もう原発からは逃れられないんだ。そういう選択を、何十年も前に済ませてしまっているんだ」
中略
「世の中には負の遺産というのがある。それが放っておけば消えてなくなるものなら、そのままにしておけばいい。でもそうならないのなら、誰かが引き受けるしかない。それが俺であったって構わないだろ」
40年かかると云われている廃炉、でもそんなスパンでは終わらない可能性が高いと思います。その作業を誰かが引き受けるしかないと言い切った若者に拍手を送りたい気分です。