やらねばならないことは山積ながら、そんな時ほど道草してしまいたくなる癖は昔から変わらない。
学生時代、試験前になると急に本が読みたくなったりとかね。
桜がもうすぐ開花する頃になると思い出すのが、重要無形文化財保持者(人間国宝)
志村ふくみさんの「一色一生」という本。
この本を手にしたのは、私がかつて染織を学んでいたのもあるけど、志村ふくみさんという染色家がシュタイナーに造詣が深いと知ったから。
(初版が昭和57年、平成元年に第23刷が出ているのできっとその頃)
ふくみさん、いえ、ふくみ先生の桜から糸を染めるくだりを書いた箇所には感動した。
桜色を染めるのに、花びらから染めるんだろう?と素人は思ってしまうが、実は花が咲く寸前の樹皮でしか薄桃色は抽出出来ないというのだ。
ふくみ先生は、桜(の精霊)が全身の力(生命力)を振り絞ってあの艶やかな桜の花を開かせようとするのだということ、桜に限らず自然の植物から命をいただいて糸を染めるのだということに気づかれる。
さて、その頃はあくまでも神秘学や人智学に興味がシフトしていたし、自分も染織の真似事をしていたので、そういう角度からしか当然読んでいなかったわけだし、私もまだまだ母親として人間としてひよっ子の時分だし、今読み返すとかなり違う恩恵がある。
夕べ遅くまでざっと目を通していたのだけれど、織物工芸を生業として生きていく決心をされた経緯やいろんな先人の言葉を受け取って書いておられる文章に、ほんとに引き込まれてしまった。
ほんとにほんとにおこがましいけれど、自分と重ね合わせて読んでいる。
今の私は、手仕事を一生やっていこうという立場でこの本はバイブルだと思う。
「物を作る人間は、その物にすべてを注ぎ込んで、多くを語るものではない」とあとがきに書いてある。
ほんとにほんとに生意気だけど、これ判ります。
私は自然の石でアクセサリーを作り始めて3年が過ぎたけど、最初はセラピーの補助としてアクセサリーを作っていたのだけど、次第にそれが逆転していくのがわかった。
それが完全に逆転した時、仕事でも転換期を迎えた。
私が気を込めて作ったものがすべて。
私が手にした地球の欠片を、なんとか美しく愛されるものとして活かしたい。
そういう思いを以前から持っていた。
私がもってる本は求龍堂の版で文字が小さいのだけど、文庫にもなっているのでまた買い直して常に傍らに置いておけるようにしたい。
とにかく、志村ふくみさんの作品は画像でみるだけでも涙が出てくるほど心揺さぶられる美しさがある。