蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

転落の歴史に何を見るか

2021年10月02日 | 本の感想
転落の歴史に何を見るか(齋藤健 ちくま新書)

1905年の日露戦争中の奉天会戦から1939年のノモンハンまで、約30年で歴史上の頂点から奈落まで転がり落ちた原因をさぐる。

日経の読書欄で薦められていたので読んでみた。

出版されたのは2002年。冒頭で、当時の日本の危機的状況を3点あげている。
高齢化、中国の台頭、財政赤字。
結局20年近く経っても、この国はいずれの課題にもなすすべなく過ごしてきたのだなあ、と、慨嘆せざるをえない。
例えば当時の公的債務残高は600兆円あり、本書ではこのままでは早晩1000兆円にも達して取り返しがつかなくなる、としているが、現在(地方も含めて)債務残高は1200兆円。国が破綻していない方が不思議なくらいだ。

転落の原因は、明治の元勲のようなジェネラリスト的能力が高い指導者を欠いたことと、軍隊などの組織が内向きになって自己改革力を失ったことだとしている。

ところで、本書に限らず、日露戦争の時代を日本という国の頂点だったと捉える見方がけっこうあるのだが、本当にそうだろうか。むしろ戦争に(こっぴどくではなくて)うまくちょとだけ負けるくらいの方がよかったのではなかろうか。日本海海戦があまりにもパーフェクトゲームになったことが、国として後に退けなくなった大きな要因のような気がする。

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