蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

戦国24時 さいごの刻

2017年04月07日 | 本の感想
戦国24時 さいごの刻(木下昌輝 光文社)

豊臣秀頼、伊達政宗の父、今川義元、山本勘助、足利義輝、徳川家康のそれぞれが死ぬ前24時間を描く短編集。

今川義元を描いた「桶狭間の幽霊」がよかった。
桶狭間に到達した時点では今川方は強行軍で疲れ切っていた(本書によると今川方の行軍スピードは秀吉の中国大返し並だったという)という設定で、桶狭間での敗北を必然のものとするストーリー。筋自体には説得力があるのだが、表題の通り、義元が語りかける相手は幽霊ということになっていて、ケレン味を出そうとしている試みは必ずしもうまくいっていないと思う。

秀頼が主人公の「お拾い様」は、「なぜ、淀君は愚かな戦略ばかりを取ったのか?」という謎解きになっていて、それなりに論理的でかつ意外性はあるのだけど、さすがに突飛すぎるかなあ、という感じだった。
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金色機械

2017年04月07日 | 本の感想
金色機械(恒川光太郎 文藝春秋)

金色機械というのは宇宙のどこかからか日本に降り立った?ロボット(アンドロイド?)で、宇宙から到来した種族の末裔?の守護者?として活躍していたが、その種族の絶滅とともに行き場をなくす・・・という話(だと思う)。

といったトンデモ系、あるいは安上がりのSFっぽい設定で、いくつかのストーリーがからみあう複雑な筋立てなのだが、とても読みやすくて、突飛な設定もさほど不自然に感じさせない。よくできたエンタテイメントだった。
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イノセント・デイズ

2017年04月06日 | 本の感想
イノセント・デイズ(早見和真 新潮社)

主人公は興奮すると失神する持病を持ち、母親を早く亡くし、引き取った祖母にはネグレクトされ、学校ではいじめられ、やっと彼氏ができたと思ったらその男は他の女性と結婚し、ヤケになって放火してその女性と子供を殺したとして死刑判決を受ける・・・という話。

という筋からしてクラ~い話なのですが、よくあるこの手の小説だと、どこかに救いとか読者にカタルシスを感じさせるようなエピソードを挿入したりすることが多いと思います。
本書ではそういうところがほとんどなくて、終始一貫して読み続けるのが辛い話が延々と続く感じでした。
それでもミステリ仕立てなので、長目のエピローグ部分でドンデン返しとかがあるのかと期待していたら、傷口に塩を塗り込むような内容だったのでがっかりでした(いやこのエピローグこそが素晴らしい、という評価もあるようなのですが、私にはそう感じられませんでした)。

人の不幸はナントカの味なんていうように、こういう他人(というか架空の人物)の不仕合わせを読んで「それに比べれば私のほうがマシ」なんて思う、なんていうふうな楽しみ方もあるとは思いますが、どうも私には合いませんでした。
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