上州の「寅」(16)
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「不純異性交遊?。まったく身に覚えがありません」
「忘れたとは言わせないぞ。
雑魚寝したとき。未成年のチャコとユキの尻とおっぱいに触っただろう。
どうだ。身に覚えがあるだろう」
「たしかにすこしは触ったかもしれません。
しかしそれはあくまでも雑魚寝という非常事態の中での出来事です。
濡れ衣です。責任はありません」
「黙れ。理由はともあれ、未成年の尻と胸に触ればりっぱな犯罪だ。
警察へ訴えて出れば、おまえさんは前科一般の性犯罪者になる」
「警察は勘弁してください。おまわりさんは嫌いです」
「免許証のコピーがある。実家の住所もわかっている。
では両親へ電話してこれこれこういうわけですと、俺から説明しょうか」
「あっ・・・両親も勘弁してください。
わかりました。羽田空港へ行けばいいんですね」
「おう。3時間以内に来いよ。制限時間は午後の5時だ。
2~3日分の着替えだけ持ち、飛んで来い」
あわててラーメンをたいらげた寅が、店を出る。
アパートへ戻りタンスをあける。衣類をてきとうにボストンバッグへつめこむ。
腕時計を見る。
電話からもう30分ちかく経っている。
八王子から羽田まで1時間以上かかる。
JR中央線の快速に乗り、神田まで出る。
神田から山手線外回りに乗り、浜松町の駅で降りる。
ここから東京モノレールに乗り羽田へ向かう。
2度目の電話はモノレールに乗っているとき、かかってきた。
「いまどこだ?」
「東京モノレールに乗っています。
あとすこしで羽田へつきます」
「ここまで2時間か。ぎりぎりだな」
「約束の時間まで、あと1時間ちかくのこっています。
かんぜんにセーフだと思いますが・・・」
「甘いな。出発の20分前までに保安検査場を通過する必要がある」
「保安検査場?」
「荷物とボディチェックする場所のことだ。
20分を切るとキャンセル扱いになる。急げ。遅れるな」
「ということは飛行機に乗るということですか!」
「あたりまえだ。それ以外に羽田へ来る目的があるか」
「ぼく。じつは高所恐怖症なんですが・・・」
「ばかやろう。寝言は寝ているときに言え。
事故率は200万回に1回。この世でいちばん安全な乗り物が飛行機だ。
終点の第二ターミナル駅で降りろ。
俺は出口でまっている」
プツリと大前田氏の電話が切れた。
(17)へつづく
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「不純異性交遊?。まったく身に覚えがありません」
「忘れたとは言わせないぞ。
雑魚寝したとき。未成年のチャコとユキの尻とおっぱいに触っただろう。
どうだ。身に覚えがあるだろう」
「たしかにすこしは触ったかもしれません。
しかしそれはあくまでも雑魚寝という非常事態の中での出来事です。
濡れ衣です。責任はありません」
「黙れ。理由はともあれ、未成年の尻と胸に触ればりっぱな犯罪だ。
警察へ訴えて出れば、おまえさんは前科一般の性犯罪者になる」
「警察は勘弁してください。おまわりさんは嫌いです」
「免許証のコピーがある。実家の住所もわかっている。
では両親へ電話してこれこれこういうわけですと、俺から説明しょうか」
「あっ・・・両親も勘弁してください。
わかりました。羽田空港へ行けばいいんですね」
「おう。3時間以内に来いよ。制限時間は午後の5時だ。
2~3日分の着替えだけ持ち、飛んで来い」
あわててラーメンをたいらげた寅が、店を出る。
アパートへ戻りタンスをあける。衣類をてきとうにボストンバッグへつめこむ。
腕時計を見る。
電話からもう30分ちかく経っている。
八王子から羽田まで1時間以上かかる。
JR中央線の快速に乗り、神田まで出る。
神田から山手線外回りに乗り、浜松町の駅で降りる。
ここから東京モノレールに乗り羽田へ向かう。
2度目の電話はモノレールに乗っているとき、かかってきた。
「いまどこだ?」
「東京モノレールに乗っています。
あとすこしで羽田へつきます」
「ここまで2時間か。ぎりぎりだな」
「約束の時間まで、あと1時間ちかくのこっています。
かんぜんにセーフだと思いますが・・・」
「甘いな。出発の20分前までに保安検査場を通過する必要がある」
「保安検査場?」
「荷物とボディチェックする場所のことだ。
20分を切るとキャンセル扱いになる。急げ。遅れるな」
「ということは飛行機に乗るということですか!」
「あたりまえだ。それ以外に羽田へ来る目的があるか」
「ぼく。じつは高所恐怖症なんですが・・・」
「ばかやろう。寝言は寝ているときに言え。
事故率は200万回に1回。この世でいちばん安全な乗り物が飛行機だ。
終点の第二ターミナル駅で降りろ。
俺は出口でまっている」
プツリと大前田氏の電話が切れた。
(17)へつづく