上州の「寅」(21)
それから1時間後。チャコが軽トラックに乗ってやってきた。
軽トラック?。
「軽トラ?。いままで乗っていたワンボックスはどうしたの?」
「仕事の都合上、こいつのほうが便利なのさ。
これ。悪路でも走れるフルタイムの4WD(4輪駆動)よ」
「農業でもはじめたの?」
「行けばわかる。
これからまた携帯の圏外まで帰るけど、覚悟はいいね」
「覚悟?。いったいなんの覚悟だ」
「3日や4日じゃ帰れない。
はやくて1年。ひょっとすると3~4年は帰れないかもね」
「ちょっと待て。聞いてないぞそんな話!。初耳だ」
「あら。義父から何も聞かされていないの?。
おかしいな。長くいられる奴を送り込むと言っていたのに。
候補がいるのと聞いたら、うってつけの奴が居ると自信たっぷりだった」
「それが僕だというのか?。
大学はどうすんだ。あと1年で卒業だ」
「卒業したあと、どうするつもりだったの。あんたは」
「決まっているだろう。デザイン関係の仕事へ着く」
「あんたを採用する就職先があるの?」
「あるさ。おれは商品デザイナーになるんだ」
「あんた。単位足りてないでしょ。
卒業できるかどうかもわからない落ちこぼれのくせに、よく言うわ」
「な・・・何で知ってる。おれの成績まで!」
「テキヤの情報力を甘くみないで」
「大学にスパイでも居るのか?」
「調べればわかることだわ」
「適当に言うな。大学が個人情報をもらすはずがない」
「大学の情報管理は完璧です。
正攻法ではだめでも、なかにはもろい人もいるわ」
「誰かしゃべった奴がいるのか?」
「あんたの通っているゼミの大学教授。
還暦ジジィのくせに、若い娘にめっぽう目がないでしょう。
色仕掛けで誘ったら尻尾をふってついてきたわ」
「君が誘惑したのか?」
「チョロいものよ。大学の教授なんて。
わたしが本気で色気を見せれば、それだけでイチコロさ」
「どうやって落とした?」
「ホテルの入り口のところで写真を盗撮させた。
これを奥さんに見せれば、あんたもおしまいだねと脅迫した」
「美人局(つつもたせ)で脅かしたのか」
「効果はてきめんだった。
あんたのこと、あらいざらい全部しゃべったわ。
才能ないんだって。あんた。
デザイナーとしての未来に赤信号がともっているそうよ」
「あ・・・赤信号が!。ホントかよ」
(22)へつづく
それから1時間後。チャコが軽トラックに乗ってやってきた。
軽トラック?。
「軽トラ?。いままで乗っていたワンボックスはどうしたの?」
「仕事の都合上、こいつのほうが便利なのさ。
これ。悪路でも走れるフルタイムの4WD(4輪駆動)よ」
「農業でもはじめたの?」
「行けばわかる。
これからまた携帯の圏外まで帰るけど、覚悟はいいね」
「覚悟?。いったいなんの覚悟だ」
「3日や4日じゃ帰れない。
はやくて1年。ひょっとすると3~4年は帰れないかもね」
「ちょっと待て。聞いてないぞそんな話!。初耳だ」
「あら。義父から何も聞かされていないの?。
おかしいな。長くいられる奴を送り込むと言っていたのに。
候補がいるのと聞いたら、うってつけの奴が居ると自信たっぷりだった」
「それが僕だというのか?。
大学はどうすんだ。あと1年で卒業だ」
「卒業したあと、どうするつもりだったの。あんたは」
「決まっているだろう。デザイン関係の仕事へ着く」
「あんたを採用する就職先があるの?」
「あるさ。おれは商品デザイナーになるんだ」
「あんた。単位足りてないでしょ。
卒業できるかどうかもわからない落ちこぼれのくせに、よく言うわ」
「な・・・何で知ってる。おれの成績まで!」
「テキヤの情報力を甘くみないで」
「大学にスパイでも居るのか?」
「調べればわかることだわ」
「適当に言うな。大学が個人情報をもらすはずがない」
「大学の情報管理は完璧です。
正攻法ではだめでも、なかにはもろい人もいるわ」
「誰かしゃべった奴がいるのか?」
「あんたの通っているゼミの大学教授。
還暦ジジィのくせに、若い娘にめっぽう目がないでしょう。
色仕掛けで誘ったら尻尾をふってついてきたわ」
「君が誘惑したのか?」
「チョロいものよ。大学の教授なんて。
わたしが本気で色気を見せれば、それだけでイチコロさ」
「どうやって落とした?」
「ホテルの入り口のところで写真を盗撮させた。
これを奥さんに見せれば、あんたもおしまいだねと脅迫した」
「美人局(つつもたせ)で脅かしたのか」
「効果はてきめんだった。
あんたのこと、あらいざらい全部しゃべったわ。
才能ないんだって。あんた。
デザイナーとしての未来に赤信号がともっているそうよ」
「あ・・・赤信号が!。ホントかよ」
(22)へつづく